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続 椰子の風に吹かれて  作者: 佐々木三郎
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マンション経営


                    マンション経営


 清美は翌日退院して塩崎家に住むことになった。今まで度々訪れていたので清美には我が家のような感じがする。両親も真知子の強い勧めでしばらく滞在することになった。女の子の名前は紀和と命名された。常男の思いが押し切ったようだ。新しい命は周りを幸せにする。


 ユキは支店長に呼び出されて公園にゆく。幹部候補の職員が音を上げているというのだ。バギオはほとんど学卒でしょ、根性がないのね。頭もたいしたことないみたいだから鍛えるしかないみたい。日本の生協から講師を招いて研修させようと思っております。付いて来れないのは馘切ります。平のままにしておけばいいの、でも私に話したことは内緒よ。あなたの意見として理事会の承認を得なさい。わかったエルビーナ。わかりました。


 翌日からエルビーナは土地の買収にかかる。塩崎家の裏山3000㎡を手始めにマンション用地を買い占めてゆく。バギオは盆地なので平地が少なく用地取得は半年で終わった。続いて老朽化したマンションの取得にかかるが思うようにゆかない。いいのよ、そのうちに買ってくれといってくるからとユキがエルビーナに話している。



 市街地から3km派離れた山地を10ha買収する。お母さん裏山にマンション建ててもいい。内の庭に建ててもいいのに。ここはこのままにしておきたいの、みんなのふるさとだから。ユキは一ヶ月の滞在を予定しているようだ。近頃は坂本の意向をきくことなくなく事を進めることが多くなった。ディー、山の分譲半分カルロスに頼もうかしら。いいんじゃねーの。ねえ、私の話きいて。俺には関係ない。何怒っているの。 


 ユキはお母さんと真知子に泣きつく。ユキは事態の深刻さを身体で感じていた。坂本はいつもやさしかった。どうして、肩を震わして泣きじゃくる。真知子はユキの背を撫でながらあなたの直向で純粋なところが好きよ。でも許せないことがある。 えっ、とユキが顔を上げて見つめる。教えて、お母さん。真知子は携帯でメールを送る振りをしながら、あなたに分かるかなと冷たく言った。ユキに不安が広がる。坂本は怒ると口を利かなくなる。お母さん、それは悲鳴に近かった。

 人の話を聴かないということは人を無視することなの。これは許せません。今こうして話しているとき私がメールを打ったらあなたはどう思う。日本人にとって話は重要なものなの。これはお喋りではなくて対話なの。精神を集中していなければならないわ。ユキの顔が青くなる。

 愛情の反対は、憎しみではなく、無関心。あれだけの男を失ってもいいの。ユキは子供のように首を振る。今度のマンションの件、清美さんが予約をキャンセルされたことへの腹いせ、仕返しでしょう。坂本さんはあなたの強引なやり方を心配しているのがわからないようね。彼ならキャンセルの事実事情をよく調べてから行動するわ。


 直感で直情的に動くフィリピーナへの痛烈なパンチであった。ユキの心の中までこたえた。謝ってきます。ユキは顔を洗って化粧をしなおす。ユキは坂本に両手をついて頭を下げる。あなた許してください。私ユキは旦那様を蔑ろにしました。キャンセルの事情を説明申し上げます。今宵は気分がすぐれぬ、明日にいたせ。はい、そうします。実に失礼をばいたしました。 


 この話は数年後清美の研究論文、日比文化比較研究、語り明かす、村八分、つんぼ桟敷などと共に取り上げられることになるのだが、この時点では清美自身もはまだ知らなかった。


カルロス分譲住宅

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