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魂の契約

作者: アーテイ

 それは、ある日突然やってきた。

「おまえの願いを三つだけ叶えてやる。ただし三つ叶えたらおまえの魂は私のものだ」

 なにもなかったはずの空間に突然現れたそいつは、悪魔のような微笑を浮かべながら言った。

 そして、私は――


「え? え? ちょっと、いきなりなに? あなた誰ですか? 今どこから現れました? なにしにきたんですか?」

 突然目の前に男が現れた。閉め切った部屋の、なにもなかったはずの空間に、何事も無く現れ、あまつさえ宙に浮いている。

 あまりに唐突な事態に、頭がうまく回ってくれない。疑問ばかりが渦巻いて、ろくになにも考えられなかった。

 そんな様子を見て、男はため息をついた。

「なんだ、ちゃんと説明しただろう。また言わせるつもりか」

「え? 説明ってあの……」

「まったく、人間というものは記憶力が悪い生き物だな。一度聞いたことは魂に刻み込んでおけ」

「はぁ……すいません」

 なんだかまったく解らないが、怒られたっぽいので思わず謝ってしまった。冷静に考えればあたしは悪くない気はするのだが、冷静に考える余裕はなかった。

 そして、男は話を始めた。


「――『魂の契約』?」

「そうだ」

 いきなり目の前に現れた男の話によると、男は悪魔であるらしい。願いを三つ叶えて、三つ目の願いが叶ったら魂を取られるそうだ。おまけに、一度契約を結ぶと途中でやめることはできず、三つ目の願いを叶えるまで悪魔が付きまとうらしい。

「さぁ、それでは願いを言うがいい」

「願いは三つだけ?」

「そうだ」

「三つ叶えると、魂を取られちゃう?」

「そうだ」

「ふーん、そっか……」

 私はいろいろと考えて、二つの願いを言った。


「さぁ、最後の願いを言うがいい」

「げっ、またきた」

 今日も悪魔が現れた。悪魔と会ってから既に一ヶ月ほどが過ぎている。悪魔はその間ずっと、毎日現れている。しかも、一日に何度も現れるのだ。

「言っただろう? 契約が終わるまで私は何度でも現れると」

「とりあえず今は願いとかないから」

「そうか」

 現れたときと同じように、唐突に悪魔の姿は消えた。

「はぁ……もう勘弁してよ」

 一応願いはないって言えば消えてくれるとはいえ、所詮はその場しのぎだ。数時間もすればまた姿を見せるだろう。出てきては追い返してを繰り返す日々。さすがに疲れてきた。

 せめて普通に話し相手になってくれるような相手だったら、もう少しなんとかなったんだろうけど……。残念ながらこの悪魔は話が通じるような相手じゃなかった。まぁそもそも悪魔という時点でおかしな話ではあるんだけど、それを差し引いてもこの相手には話が通じない。訳の解らないことばっかり言ってくるし。

「まったく、どうしてこんなことに……」

「契約したのだから当然だろう」

「うわっ、また出た」

 数時間どころか一分もなかった。再び現れた悪魔に、ため息をつく。

 ――それと同時に、怒りがふつふつと沸き上がってきた。今までずっと貯めていた怒りが、とうとう爆発したんだ。

「だいたいおかしいじゃない。あたし(、、、)がいつ契約したってのよ? しかも願いは三つって言ったのにいきなり最後の願いを聞かれるし! もうおかしいことだらけじゃない!」

「なにもおかしいことなどない。おまえは確かに私と契約し、願いを二つ言った。間違いない」

「あたしそんなの絶対言ってなーい!」

 あたしの魂の叫びを聞いても、悪魔はまったく相手にしてくれなかった。


「――最後の願いはなんだ?」

「ふふ……言わない。だって、言ったら魂を取られてしまうんでしょ?」

「そうだ。それが契約だ」

「解ってる。だから言わない」

「強情な女だ。私と契約をしてから、結局最後まで三つ目の願いを言うことがなかった。……だが、逃げられると思っているのなら無駄だぞ。『魂の契約(、、、、)』からは逃げられない。私は必ずおまえを見つけ出す」

「うん。それも解ってる」

「そうか……残念だが、時間だ。しばしの別れだな。何年後になるかは解らないが、また会おう」

「それじゃさようなら、悪魔さん。それと……私の生まれ変わり(、、、、、、、、)によろしくね」

契約の対象はあくまでも魂

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