ディボラ様の選択
ウィルター卿のもたらした情報は中々に驚くものだった。
私達がケーノ大平原に到着した頃には王様の耳に入っていたらしい。
そして、今後の王様の考えと、ディボラ様にはずっと王家の影が付いていたことを教えられた。
「ぜんっぜん分からなかった…」
サマナが少し凹んでいる。
サマナが気付いてないんだから他の子達もきっと気付いてないだろう…私も全くわからなかった。
「不在の間に何かあってはいかんと主だった王族とその配偶者や婚約者に王様は影を付けていかれてたんだ。用心深い面がある方だからな。つまり今回の騒動も筒抜けなんだよ。それを伝えておこうと思ってな」
王様直々なら腕のたつ人が選ばれているだろうしサマナが気付けないのも当然だと私は思う。
「王太子様もご存知なんですか?」
王様が知っているなら王太子様も知っているかもとは思ったけど、あの真面目な方が存じていて放置していたとは正直思いたくない。
「いや、あの方は最近知った。知った結果セドム王子が国境の街に来ている」
「「ええ!?」」
知らなかった事の驚きなど吹っ飛ぶ事態だ!
それは想像していなかった。
「王太子様の命令でね。自主的に来たんじゃないですよ。まぁ公務はめちゃくちゃのボロボロなんですがね」
「あぁ…むしろ本当は自主的に来なきゃいけないような状態だったんですね…」
それは簡単に想像がつく。
なんせ、なんでもディボラ様任せだったのだから。
「でね、アリア嬢はどうしたいですか?」
「どうしたい…とは?」
悲しいかな選択肢が浮かばない。
「敢えてセドム王子に居場所を漏らして迎えに来させ恩を売るか、このまま隠れて王の迎えが来るまで今の生活を続けるか、他なにか案があるならそれを実行するか、などですかね」
なるほど、恩を売るという選択肢もあるのか。
でもそれなら私の答えは一つだ。
「ディボラ様の希望通りにしたいです。私が考えるより今知った事をディボラ様に伝えたいです」
サマナも頷いて同意を示す。
私たちとしては当たり前の事を言っただけなのにウィルター卿は笑顔で「100点だ」と褒めてくれた。
「その当たり前が出来ない側仕えも増えてきたのだよ…」
一緒に小屋に向かったが、先頭を歩く事で場所を把握している事をウィルター卿は示す。
サマナだけでなく付いている影からも場所は報告が来ていたらしい。
小屋の見た目には若干驚いていたが…まぁボロ小屋って聞いてたにしてもコレは酷いよね。
「おかえり、早かったのね」
ウィルター卿が一緒にいるのにあまり驚かないディボラ様。
ラナとレリアーナなんてビックリしすぎて声も出ないって感じなのに平然としていてこちらが驚いてしまった。
「どうして驚かないのかって…どうせ私には影が付けられていたのでしょう?」
「お気付きだったのですか!?」
これにはウィルター卿も驚いたがコロコロと笑いながら簡単だという。
「私は王子妃になるべく国王夫妻とも交流があったもの。存じていたのは影の存在でなく国王様の性格よ。サマナとアリア二人で行くとサマナが申し出てきた時点で影からサマナに接触があったのだと思ったのよ」
正確にはサマナからも連絡を取っていたのだけど、そこにはお気付きなのか知らないのか…まぁどちらにせよ結果は同じなのだろうけども。
そうしてウィルター卿は私達に伝えたのと同じ事をディボラ様に伝えた。
「そう…。まぁ…お馬鹿な方なんですけど情くらいはあるし…んー、王太子様に叱られて心を入れ替えたか相変わらずか、最後にチャンスくらい差し上げましょうか。そのくらい王様もお許しになるでしょう」
私達は首を傾げた。
ウィルター卿は「王都に戻られますか?」と笑顔だ。
案の定「まさか」と笑いながら村で一番いい宿を手配するようサマナと私に指示を出される。
「ウィルター卿、協力を仰ぐ事は出来るのかしら?」
「はい、勿論です」
そしてセドム王子と会う為の布石は打たれた。




