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犯罪シリーズ

私たちはただの友達…

作者: Sakusaku
掲載日:2026/09/24

 ◆◇◆


「こんにちはおばさん……篠(しろ)はもう起きましたか?」


 私は家の中の人を呼ぶために、チャイムを押した……


「あら……アーちゃん、篠亜(しのあ)を起こしに来てくれない?もう何度呼んでも起きなくて……」


 昔からの顔なじみのおばさんが、私を温かく迎えてくれた……


 私は靴を脱いで、幼馴染の寝室に上がった……


 そして、足で枕を蹴り飛ばしてベッドから落とした……


「いい加減起きろ、このバカ犬!!!」


「うわっ!!! 勘弁してくれよパンダ! お前、頭おかしいんじゃないか!?」


「おばさんが何回起こしに来たと思ってるの……だから足で起こしてるんでしょ……」


 私はもう一度足を振り上げた……篠亜(しのあ)は慌てて着替え始めた……


 これが、私がいつも経験している日常だ……


 こんにちは、皆さん……意外に思うかもしれないけど、私とこいつは幼馴染だ……私たちはずっと真逆の存在だった……性格も、趣味も、話し方も、ましてや名前だって……


 私は女なのに……よりによって赤城(あかぎ)明(あきら)なんて名前で……


 こいつは男なのに……よりによって篠原(しのはら)篠亜(しのあ)なんて名前で……


 変な組み合わせだけど……私たち二人は、驚くほど気が合ってしまう……


 だから時々……


「ねえねえ……あの二人、可愛いよね……しかも男の子の方、すごくかっこいい……」


「だよね……付き合ってるのかな……」


 篠亜(しのあ)は、結構なイケメンだ。長髪で、いかにもスポーツ万能な美男子といった見た目で、いつも女の子たちに囲まれている……そしてこいつの髪が白いせいで、私は彼のことを「篠(しろ)」と呼んでいる(子供の頃、家で飼っていた犬の名前だ)……


「でも、あの女の子の方はちょっと怖いよね……」


「そうそう……髪も赤いし、まるでヤンキー女子みたいな格好してるし……」


 でも一方で……私は、暗い文学少女で、口が悪くて、体つきも細くて……運動も社交も全然だめだ……つまり、篠(しろ)の完全な正反対というわけだ……


 肩まで届く赤く染めた髪だけが、私を少し目立たせてくれる唯一のもの。小学生の頃、一度徹夜しすぎて目の下にクマができたとき、篠(しろ)はそれ以来ずっと私のことを「パンダ」と呼んでいる……


 まったく……


 ジロッ……私は駅前でこそこそ噂話をしていた女子生徒たちをにらんだ……彼女たちは私に気づくと、すぐさま逃げていった……


 本当にうっとうしい連中……陰でこそこそ言うくらいなら、面と向かって言えばいいのに……


「ほれ……」


 篠(しろ)が冷たい缶ミルクを投げてよこした……


「私がミルク飲んでないって、なんで分かったの?」


「さあ……勘かな?」


 私たちは、まだ目も開いていないうちから一緒にいる仲だ……お互いの両親がとても親しくて、私たちも人一倍長く一緒に過ごしてきた……


「あの!……」


 すぐに、声をかけられた……


「何?」


 もちろん、女の子だった……見るからに真面目で可愛らしい子だった……


 彼女は少し怖がるような様子で私を見た……私も見つめ返した……


「あの……おはようございます!!」


「ああ……うん、おはよう……確か……あなた、A組の鏡(かがみ)さんだよね?」


「あっ……覚えててくれたんですか?」


「よくグラウンドの辺りをうろうろしてるの見かけるから……」


「そ、そうなんですか?……あの……実は私……」


 彼女は一瞬私の顔をちらりと見ると、すぐに退散しようとした……


「……あの……ちょっと飲み物買いに行きますね……また後で……」


「ちょっと待って!」


 篠(しろ)が引き止めようとしたけれど……彼女はそのまま行ってしまった……


「なんか仲良さそうだったね……」


「知り合ったばかりだけど……分かんないけど、いい子っぽいよな……」


「彼女にしたら?」


 篠(しろ)はすぐに顔を赤くした……


「バカ言うな!?……女子とまともに話せたことなんてないっての……」


「まだまだだね……その顔でも活かしなよ」


 私は指で彼の頬をつついた……彼はそれを振り払った……


「……ふん」


 ◆◇◆


 電車に乗って……私たちの学校はかなり遠いので、しばらくすると会社員の人たちの多くが降りていき、車両には私たち生徒だけが残ることになる……


 車両はほとんど空っぽになっていた……


「ねえねえ……さっき見た?」


「見た見た……鏡(かがみ)さん、赤城(あかぎ)さんに睨まれてたよね」


 またか?


「まあ気持ちは分かるけどね……あんなかっこいい彼氏がいたら、独占欲も出るよね……」


 もう耐えられない……


「あら?パンダ、どこ行くの?」


「急用」


 私はつかつかと、その女子生徒たちの方へ歩いて行った


「何かお困りですか?」


 私は「笑顔」を浮かべて、彼女たちに声をかけた


「べ……別に何もないです!」


「本当に何でもないんです……」


「そう、それならよかった……」


 私は戻ってきた……二人はかなり震えているようだった。きっと私に目をつけられるのが怖かったのだろう……


 なんでみんな、こんな反応をするんだろう……私と篠(しろ)が付き合ってるって、勝手に思い込んで……


 こいつはただの友達だ……そして、それ以上には絶対にならない……


 異性の友達がいるって、そんなに悪いことなのかな……


「用事、早かったね……」


「麻薬売ってきた」


 私が冗談を言うと、篠(しろ)は私のボケに苦笑いを浮かべた……


「じゃあお前が捕まったら、ソウル・グッドマンにでも電話してやろうか?困ったらソウルに相談だろ……」


 私たちは少し笑い合った……


 私たち二人はいつもこんな感じだ……いつだって、とことん気が合う……


 ◆◇◆


 放課後……


 私と篠(しろ)はクラスが違うので、放課後よくこいつのいるグラウンドまで歩いていく。一緒に帰りたいから、それだけだ。それに、彼が一緒だと安心する気がして、それで一緒に帰りたくなる……


 篠(しろ)は女子たちに大人気の陸上部のエースだ……グラウンドの外で応援する人がいても、別に不思議ではない……


 私はいつもの場所に座って……本を取り出して読みながら……こいつが部活を終えるのを待っていた……


 男子を呼ぶ黄色い歓声は、もはや私にとってのBGMのようなものだ……


「もう、やだ……恥ずかしいって……」


 私が座っている場所の近くに、女子生徒が二、三人立って話していた……


「今行かなかったら、いつ行くのよ?」


「うーん……頑張ってみる……」


 私はちらりとその子たちを見た……そして見覚えのある顔を見つけた……


 鏡(かがみ)さんだ……


 声をかけようかな……いや、やめとこう。変に怖がられるだけだし……本を読み続けよう……


 しばらくすると、部員たちが休憩に入った……女子たちは急いで写真を撮ったり、名前を呼んだり……


 陸上部にはかっこいい人がたくさんいるけど……一番人気なのは、他でもない……


 休憩に入った篠(しろ)が私を見つけて手を振ってきた……女子たちはそれを自分たちに向けたものだと勘違いして、大歓声を上げた……


 それを見た私は、小さく手を振り返した……


 そして、思いがけないことが起こった……


「あれ誰?」


「え?……篠亜(しのあ)くんに飲み物渡してる……しかも受け取ってる!」


 なんだか、面倒なことになりそうな予感……


「うわ、まずいな……」


 見たところ、鏡(かがみ)さんは篠(しろ)に飲み物を買ってあげたようだ……うん……お似合いだな……


 二人はとても長く話し込んでいた……周りの女子たちは、それぞれ嫉妬に燃えているようだった……


 もう、帰ろう……


 私は急いでその場を離れた……このままいたら、また気分が悪くなりそうだったから……そして、校舎裏のベンチで篠(しろ)を待つことにした……


「はあ……」


 さっき、危うく間に合わなくなるところだった……


「でもさっきの鏡(かがみ)さん……」


 彼女はずいぶん長く篠(しろ)と話していた……しかもこいつ、なんだか妙に照れていたような……


 もしかしたら……彼女、告白したのかもしれない……


「あっ……ちょっと待って……」


 なんで……こんな風に、胸がおかしいくらいドキドキしてるんだろう……


 なんで、私……


「パンダ……」


 そして篠(しろ)が私の隣に立った……でも今日はいつもと違った……鏡(かがみ)さんも一緒に、腕を組んで立っていたのだ……


「あら?……練習終わるの早かったね……」


「今日は早めに終わったんだ……帰ろうか……」


 私は立ち上がった……そして、あることに気づいた……


 二人は手をつないでいて……しかも、とても親しげに話していた……


「私、何か見逃したかな?……」


 二人は顔を見合わせて……そして微笑み合った……


「あのね……私たち……」


「付き合うことになったんだ……」


 私は二人の顔を見ながら、軽く頷いた……


「そうなんだ……すごいね鏡(かがみ)さん、そしてやっと、私と篠(しろ)がただの友達だって分かってくれる人が一人増えたわけだ……」


 鏡(かがみ)さんが私の横に並んで歩いてきた……


「えへへ……ごめんなさい……でも赤城(あかぎ)さんって、本当にいい友達なんですね……ずっと誤解しててごめんなさい……」


「大丈夫だよ」


 私たち二人は微笑み合った……そしていつも通り、一緒に帰り道を歩いた……


 でも、いつもとは少し違っていた……


 私は篠(しろ)に別れを告げた……でも今日は、篠(しろ)は一人で帰るわけじゃなかった……


 私はその光景を、もう一度見つめた……


 あれ?……雨、降ってるのかな……


 空を見上げても、雨は降っていない……


 じゃあ……この水は、どこから来たんだろう……


 手を空に伸ばしてみても……何も落ちてこない……


 あ……


 あ……………


 私……


 なんで……こんなに胸が痛いんだろう……さっきベンチに座っていたときと同じように……


 どうやっても……この痛みは消えない……


 あ……………


 分かった……


 この落ちてくる水は……雨じゃない……


 私自身の涙なんだ……


「違う……篠(しろ)はただの友達だから……」


 ただの友達……


 彼は、私のただの友達……


 それ以上には、絶対になれない……


 あ…………


「私、本当にバカだな……」

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