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落語【声劇台本書き起こし】

落語声劇「金明竹」

作者: 霧夜シオン


落語声劇「金明竹きんめいちく


台本化:霧夜きりやシオン@吟醸亭喃咄ぎんじょうていなんとつ


所要時間:約30分


必要演者数:最低3名

      (0:0:3)

      (3:0:0)

      (2:1:0)

      (1:2:0)

      (0:3:0)


※当台本は落語を声劇台本として書き起こしたものです。

よって性別は全て不問とさせていただきます。

(創作落語や合作などの落語声劇台本はその限りではありません。)


※当台本は元となった落語を声劇として成立させるために大筋は元の作品

 に沿っていますが、セリフの追加及び改変が随所にあります。

 それでも良い方は演じてみていただければ幸いです。



●登場人物


叔父おじ:道具の鑑定の仕事で生計を立てている。

   何らかの事情でおいっ子である松公まつこうあずかっているが、

   松公まつこうがあまりにも仕事ができない為、日々苦労しているが憎んで

   いるわけではない。


松公まつこう:このはなしにおける与太郎役よたろうやく与太郎よたろうとは落語の世界で愚か者の役回り

   を持つ。各師匠の口演こうえんを聞いた限り、自閉症のように見受けられる

   。与太郎枠よたろうわくではあるが、かさの話を猫の話と入れ替える事ができると

   こから見ても、頭そのものが悪いわけではない。


女房にょうぼう叔父おじ女房にょうぼう叔父おじと同じく、松公まつこうに手を焼いている。

   しかし、憎んでいるわけではない。


男:通りすがりの人。

  雨に降られて叔父おじの店先で雨宿りしていたら、松公まつこうかさを貸してくれ

  たおかげで、あとはれずに出先でさきへ出かけれた。

  雨すぐやんだけど。


大宮おおみや:お向かいの家の人。

   ネズミを退治したくて猫を借りに松公まつこうの所へ来るが、松公まつこうかさ

   断り文句を猫の断り文句とすりえて話した為、猫をき付けに

   使っているもんだと勘違いして帰ってしまう。


相模屋さがみや:隣町から来た人。演者によっては番頭ばんとうさんになる事も。

    叔父おじの店に仕事の話を持って来るが、松公まつこうがあべこべな断り文句

    を言って返してしまう。


使い:中橋なかばし加賀屋佐吉かがやさきちからの使いらしいが、上方かみがたなまりがきついせいで

   松公まつこう女房にょうぼうまったく理解を得られず、4回も話す羽目はめになる、ある意

   味かわいそうな役どころ。

   というか加賀屋かがやさんよ、人は選んだ方がいい。

   …まあそれをやるとこのはなしは壊れてしまうわけですが。




●配役例


松公:

叔父:

男・大宮・相模屋・使い:



※枕は誰かが適宜てきぎねてください。



枕:落語の世界には与太郎よたろうてのがよく登場します。

  このはなしにも与太郎枠よたろうわくが存在してますが、ちょっと頭の回転が遅かった

  り、おろかしかったりする言動げんどうでお聞きになられている皆様を笑わせよ

  うていう役どころなわけです。

  笑わせ方の一つに言葉の聞き方を曲解きょっかいするてのがありますが、

  落語だのお笑いだのに関係なくとも、昔は今ほど交通の便が発達して

  おりませんでしたから、ご当地の方言のなまりがきつくて、ちょっと何

  を言ってるか分からない現象がよく発生していたものです。

  これにかかると、与太郎枠よたろうわくの役柄でない者であっても理解が追い付か

  ず疑問符ぎもんふの山に埋もれてしまうことにもなりかねないわけでございま

  して。


叔父:松公まつこう松公まつこう松公まつこう、おい松公まつこう

   何してんだお前。

   そんなとこで猫のヒゲを抜くんじゃないよ。

   ネズミをらなくなっちゃうだろ。


松公:おじさんがいつも言ってるじゃないか。

   綺麗事きれいごとにしろって。


叔父:綺麗事きれいごとにしろって、お前な…。

   お前はヒゲ伸ばそうがつめ伸ばそうがかまわないけどもな、

   猫のヒゲを抜いちゃダメだってんだよ。

   猫はそれでネズミをるんだからな。


松公:え、猫ってヒゲでネズミをってんの?


叔父:そうだよお前。ヒゲ抜いちまう奴があるか。

   それと、猫の爪も切っちゃダメだぞ。

   このごろ見ろ、その猫が屋根の上をすべって歩いてるんだぞ。


松公:だってさ、おじさんが爪を伸ばしちゃいけねえって言ってたじゃな

   いか。


叔父:お前の爪を伸ばしちゃいけないってんだよ。

   まぁ、お前の事なんかホントはどうでもいいんだけどな。

   けれどおいっ子だと思うから、口酸くちすっぱく言うんだ。

   ほら、ぼーっとしてねえでおもて掃除そうじをしろってんだよ。


松公:へぇい。


叔父:おいおい、いきなりほうきを持ってきてパッパパッパきだすんじゃな

   い!

   土埃つちぼこりが立つじゃないか。

   先に水をくんだよ。

   そうすりゃご近所に迷惑が掛からないんだ。

   そのぐらいの事は分からなくちゃいけないよ。


松公:へぇい。


叔父:そうそう、おけに水をんで、ひしゃくでもって水をいてーー

   っておいおい!それじゃただ水をこぼしてるだけじゃないか。

   目の前でじゃーってやって…ちゃんと首を振るんだよ。


松公:え、首?

   ……おじさんやりにくいよ、これ。


叔父:あのな、お前の首を振るんじゃないんだ。

   ひしゃくの首を振るんだよ、勢いよく!


松公:へえ、こうかいおじさん?


叔父:あ、ちょっおまっ、そんなに勢いよくやったらああっ、すみません!

   おし物は大丈夫ですか!?

   濡れてない?良かった…。

   あいすいませんでございます。よく気を付けさせますから。


   ……お前はおもての空気に当たるような人じゃないよ。

   もういいから、中へ入れ。


松公:え、もういいんですか?

   へぇい。


叔父:…本当に困った奴だな。

   おもてにいるってえと人様ひとさまに迷惑がかかる。

   それじゃマズいんだよ…。

   あ、そうだ、二階だ。二階の掃除そうじでもしてなさい!


   おおい、あいつに少し小言こごとを言ってくれなきゃ困るよ!

   どうしてあたしにばっかり押しつけるんだ。


女房:【遠くから】

   しょうがないじゃないか、あたしだって家の事色々やってるんだか

   らさ。


叔父:あいつがうちに来てからこっち、朝から晩まで仕事が手に付きゃしな

   いよ!

   なんだってあたしがあいつの目付めつけーーあれ?

   なんだこれ?天井から水がれてきたぞ。


   おおい、二階で花瓶かびんでもひっくり返したんじゃないのか!?


松公:いま掃除そうじする前だから、水撒みずまいてーー


叔父:【↑の語尾に喰い気味に】

   ッバカ野郎!降りてこいッ!

   何してんだ、座敷ざしきに水をく奴があるか!


   おおいおっかあ!二階が水浸みずびたしになったぞ!


女房:え、水浸みすびたしって、一体何があったんだい?


叔父:松公まつこうだよ!

   掃除そうじするってんで水撒みずまきやがった!

   すまないけど、あといといてくれ!


女房:はいはい、ほんとにしょうがないね、仕事増やして…。


叔父:こっち来い松公まつこう

   もういいやお前、もう何もしないでいい。

   だからここ、おもての空気とうちの中の空気がぶつかってよどんだとこ、

   ここでボーっと座ってろ。


松公:え、ここ、番台ばんだいだよ。

   …店番みせばんかな?


叔父:店番みせばん?お前に店番みせばんなんかつとまるわけないだろ。

   ここ座ってて、誰か来たらすぐあたしに知らせるんだ。

   わかったな?


松公:うんうん、わかったよ。

   …うるさいねぇあの叔父おじさん。

   朝から晩まで小言こごとばっかりだよ。

   小言こごとなんてのはさ、時々なんか言われるからそうかなと思うんだよ

   ね…。

   いま言われた小言こごとなんだっけなと思って考えて、思い出さないうち

   にまた次の小言こごとが飛んでくるから、それまたなんだっけなと思って

   るうちに、ごちゃごちゃになってわかんなくなっちゃうんだよ。

   ぅ~~~…。

   あ。

   雨降って来たよ。

   だからわざわざ水なんかくことないんだよ。

   待ってりゃ自然に空がいてくれるんだからさ。

   あ~、急な雨だからみんな駆け出してくよ。

   はは、困ってやがら。おもしれえなこれ。

   駆け出したってずっと向こうまで降ってんだからさ。

   そういうことがわからないんだなあ。

   このへん歩いてる人もあんまり利口りこうじゃないな…。

   うわあ、ずいぶん振って来ちゃったな…あれ?

   誰かそんなとこにいらあ。

   誰だい?何してんの?


男:あ、すいません。

  急に雨が降って来たもんですから、ちょっと軒先のきさきをお借りしたいと

  思いまして。


松公:軒先のきさきをお借りする?

   ダメだよ。そんなとこはずして持ってっちゃ。


男:いやいや、はずして持って行ったりはしませんよ。

  ちょっと雨宿あまやどりをさせていただきたいと思いまして。


松公:ああ、雨宿あまやどりかあ。

   かさァ貸してやろうか?


男:あ、お貸しいただけるんですか?ありがとうございます。

  実はちょいと急ぐ用がありますんで。

  お借りできたらありがたいです。


松公:んじゃこっちおいでよ。

   そこにあんだろ。そこにあるの持ってっていいよ。


男:えっ、こんなよろしいかさ、いいんでございますか?

  ありがとうございます。

  明日の朝早く、お返しにあがりますから。


松公:あ、ダメ、それダメ。

   ダメだよそんなの。

   明日の朝早くになんて返しに来られたら、早く起きて待ってなくち

   ゃいけないじゃないか。そういうの嫌いなんだ。

   いいよ、それ貸しっぱなしにする。

   もう借りっぱなしでいいから。


男:ぁ、そうですか…じゃあ、まあ、どうもありがとうございます。


松公:どういたしましてー。


   【二拍】


叔父:おい松公まつこう、いま誰か来たか?


松公:ああ叔父おじさん。

   いやね、おもてを通りがかった人がいてね、軒先のきさきを貸してくれって言う

   んだ。

   そんなもんはずされて持ってかれちゃ困ると思ってさ。


叔父:軒先のきさきはずして持ってけるわけないじゃないか。

   ただの雨宿あまやどりだろ。


松公:でね、かさ貸してくれって言ったんだ。


叔父:かさ?店に貸しがさ出してたっけか?


松公:ううん、出してないよ。


叔父:じゃあどのかさを貸したんだ?


松公:あすこに立てかけてあったじゃかさ


叔父:ハァ!?おいおいおい、ありゃあたしの差料さしりょうだぞ!?

   こないだやっとのことで思い切って買ったんだぞ!

   安くなかったんだぞ!

   気に入ってたんだぞ!

   しかもまだ一度も差してないんだぞ!

   それで、どちらのかたに貸したんだい?


松公:うん、あちらのかた


叔父:いやそうじゃないよ。どんなかただって聞いてるんだ。


松公:どんなかただって、あれだよ。

   着物を着てね、おびめてねーー


叔父:当たり前だよ。

   着物を着てりゃ、誰だっておびめるんだ。

   知ってる人か?


松公:ううん、知らない人。


叔父:知らなきゃダメだろ。

   知らない人にうっかり貸しちまったら、返しに来やしないだろ。


松公:ううん、明日の朝早く返しに来るって言ってた。

   けどそんなことされると早く起きなくちゃいけなくなって面倒だか

   ら、貸しっぱなしにする、借りっぱなしになっちゃってもいいよ、

   ってさわやかに言ったんだ。

   そしたら礼儀正しい人だね。一言ありがとうなんて言い残して、

   さらっと行っちゃったよ。


叔父:バカ、お前そりゃ絶対返しに来ないだろ!

   なんでわざわざくれてやるようなこと言うんだ。

   しかもお前のいち了見りょうけんであたしの物を勝手に取り扱って

   るんじゃないよ。   

   いいか、かさはちゃんとかさの断りようがあるんだよ。


松公:ふ~ん…、かーさなーいよっ、て?


叔父:【ぐっとこらえて】

   …うちにも貸しがさが何本かございましたが、この間からの長雨ながあめ

   骨は骨、紙は紙でバラバラになりまして使い物になりません。

   き付けにでもしようと思って、たばねて物置ものおきへ放り込んであります

   。

   て、これがかさの断りようだよ。


松公:じゃあ今度来たらちゃんと言うから。


叔父:ちゃんと言うじゃないよ。何でもいいからすぐあたしに言うんだ。

   お前は何の役にも立たないんだから。


松公:わかったよ…。


   うるさいねえ、どうしてああいうふうにガミガミーって何か言うのか

   ね…?


大宮:こんちわーっちゃん。はは、驚いたねぇさっきの雨。

   けどあがったねえ。

   あのさ、ちょいと頼みごとがあって来たんだけどね。


松公:なんだい?


大宮:あのさ、うちの押し入れでもってネズミをゴトゴトゴトゴト追い込

   んでね、逃げ出さないようにしてんだ。

   だけどさ、だれも怖がって手を突っ込んだりなんかできねえんだ。

   それでほら、っちゃんのとこに猫いただろ。

   あれちょっと貸してくんねえか?


松公:あ、猫か…。

   うちにも貸し猫が何匹かいました。


大宮:え?貸し猫ぉ??


松公:この間からの長雨ながあめでね、骨は骨……、

   骨は骨、皮は皮、バラバラになっちゃったんだ。

   き付けにしようと思って物置ものおきにほうり込んである。


大宮:え…っちゃんとこは何かい?猫をき付けに使うのかい?

   ずいぶんおっかないな…。

   ま、まあいいや、他へ行って聞いてみるよ。


松公:あそう、それじゃ~。


叔父:おい、誰か来たらすぐあたしに言えって、そう言っただろ!

   誰が来たんだ?


松公:あ、ああ今のあれね。

   お向かいの大宮おおみや


叔父:呼び捨てにする奴があるか。

   大宮おおみやさんだろ。


松公:あ、あぁうん。大宮おおみやさん。

   押し入れの奥にネズミを追い込んだから、猫貸してって。


叔父:ああ、お前がさっきいじめてた猫いただろ。


松公:そんなことしないもの。

   うん、それでだからね、ちゃんと断ったから。


叔父:なんて言って断ったんだ?


松公:うちにも貸し猫が何匹かおりました。


叔父:貸し猫ォ!?

   なんだその貸し猫ってのは?


松公:こないだっからの長雨ながあめで、骨は骨、紙は紙って言おうかなと思っ

   たんだ。

   だけどさ、そこはほら、猫だからって頭をくるくるって働かして、

   皮は皮、バラバラになっちゃった。

   き付けにしようと思って物置にほうり込んである、って。


叔父:それはかさの断りようだよ!

   猫なら猫で、ちゃんと他に断り方ってのがあるんだよ!

   「うちにも猫が一匹おりましたが、こないだからすっかりさかりが

   付きまして、とんとうちへ寄り付きません。

   先日久しぶりにうちに帰ってきたと思ったら、どっかで海老えびの尻尾で

   も食べたんでしょう。すっかりお腹をくだしておりまして、

   座敷へ粗相そそうをするといけませんから、納屋なやでまたたびをめさして

   寝かしてあります。」

   これが猫の断りようじゃないか。

   そのぐらいの事、頭を働かせるんだよ!


松公:ぅわかったよ…今度ちゃんと言うから。


叔父:ちゃんと言うからじゃないんだよ!

   誰でもいいからすぐあたしに言えって、そう言ってるじゃないか!


松公:っわかったよぅ…。

   猫の断りからなんてのは初めて聞いたよ…。


   【二拍】


相模屋:ごめんくださいましー。

    あたくし、隣町の相模町さがみちょうから参った者でございますが…。


松公:はぁん?なにぃ?


相模屋:実は、手前てまえどもの主人にはちょっと目の届きかねる所がございま

    して、こちらの旦那だんな様の顔をちょっとお借りしたいとうかがった

    んでございます。


松公:うちの叔父おじさんの?顔を?

   …アレ取り外しくのかな…?

   まぁいいや、断っちゃえ。


   あ~、うちにも旦那だんなさんが一匹おりました。


相模屋:…はい?


松公:こないだからすっかりさかりが付きまして、とんとうちへ寄り付かない

   。

   久し振りで帰って来たと思ったら、どっかでえびの尻尾でも食べた

   んですかね、すっかりお腹くだしちゃってね。

   座敷へ粗相そそうするといけませんから、またたびめさして、

   納屋なやに寝かしてあります。


相模屋:【だいぶ驚いている】

    ェェェええ……!?

    それはちっとも存じませんで…。

    帰りまして、主人ともども改めてお見舞いにうかがいますので、

    よろしくお伝えをお願い致します。

    では…。


松公:ぁいよ~~。


叔父:おいッ!

   誰か来たらすぐあたし言えって、そういってるじゃないか!!

   で、今度は誰が来たんだ?


松公:え?ぁ、ぁ~と、あのね、その、隣町だからね、

   相模屋さがみや………さん。


叔父:…変なとこへ「さん」付けたな。

   それで、どうしたんだ?


松公:あのね、なんかね、目が届かねえていう事があるんだってさ。

   目が届かねえって言うくらいだからさ、よっぽど遠い所なのかな?

   それで、叔父おじさんの顔貸してくれって言うんだ。

   叔父おじさんの顔をはずされて持ってかれちゃいけないと思ったからさ、

   ちゃんと断っといたよ。


叔父:っバカ野郎、そりゃ道具の目利めききかなんかであたしの目を貸してくれっ

   てことだろ!

   そんな商売向きの話を勝手に断る奴があるか!

   …ちなみになんて断った?


松公:ぇ~、うちにも………、旦那だんなが一匹おります。


叔父:…なんだとこの野郎。

   まさか…非常に嫌~な予感がするんだが…。


松公:近ごろさかりが付きましてーー


叔父:【↑の語尾に喰い気味に】

   よせよおい、言うにこといて何てこと言うんだ!


松公:【気にせずに】

   どっかで海老えびの尻尾でも食べてきたみたいで、すっかりお腹を下し

   ちゃって座敷へ粗相そそうすると困るから、またたびめさして

   奥に寝かしてあります。


叔父:おまっ、それ、みんなやっちゃったのか!?

   冗談じゃないよおい…!


   おぉい、ちょっと!羽織はおり出してくれ!


女房:え、お前さん、一体どうしたんだい?そんなに慌てて。


叔父:ちょいと相模屋さがみやさんに行ってくるから。


女房:あらそう、わかった。

   気をつけてね。


叔父:あぁそれから!こいつ一人に店番みせばんさせといちゃダメだからな!

   何の役にも立たないんだから。


   おい松公まつこう、誰か来たらすぐに叔母おばさんを呼ぶんだ。

   いいな、お前のいち了見りょうけんで断ったり何かしたりしちゃいけない。

   分かったか?


松公:わかったよ、うるさいなぁ…。


   …行っちゃったよ。

   あ~よかった。帰ってこなくていいよ。

   朝から晩まで小言こごとばっかりだよ。

   爪切れ爪切れって言うから猫の爪切って、やすりまでかけといた。

   何でも掃除そうじしろよって言うから、お庭の石灯籠いしどうろうみがいて綺麗きれいにしとい

   たら、せっかくこけがついたのにとか言うんだ。

   …こけだかゴミだか知らねえよこっちは…。

   

   …。

   ……あ。

   【半笑いで】

   誰か来ちゃった…。

   ……なんだい?


使い:ごめんやす。

   【ごめんください】


松公:…え?


使い:ごめんやす。

   【ごめんください】


松公:ぅん…?

   なんか悪いことでもしたんかな?

   ごめんごめんってあやまってら。

   …なんだい?


使い:だんはん、いだりまっか?

   【旦那さんはいますか?】


松公:……え?


使い:だんはん、おられまっか?

   【旦那さんはおられますか?】


松公:【奥へ向かって】

   ……炭団屋たどんやさんだよー。


使い:わて炭団屋たどんやさんおまへん。

   【わたしは炭団屋さんじゃありません】


松公:あそう…じゃ、なんだい?


使い:わては中橋なかばし加賀屋佐吉方かがやさきちかたから使いに参じまして、

   先度せんど仲買なかがい弥市やいちが取り次ぎました道具七品どうぐななしなでございますが、

   佑乗ゆうじょ光乗こうじょ宗乗そうじょ三作さんさく三所物みところもん備前長船びぜんおさふね住則光じゅうのりみつ

   横谷宗珉よこやそうみん四分一拵しぶいちこしら小柄付こつかづきの脇差わきざし脇差わきざし柄前つかまえ鉄刀木たがやさん

   言うとりましたが、埋もれやそうでィがちごておりましたさかい、

   ちゃんとお断り申し上げま。

   次材じざいは「黄檗山おうばくさん金明竹きんめいちく寸胴切ずんどうぎり花活はないけ」には遠州宗甫えんしゅうそうほめいがござい

   ます。「織部おりべ香合こうごう」「のんこの茶碗ちゃわん」、「古池ふるいけかわず飛び込む水の

   音」言います風羅坊芭蕉ふうらぼうばしょう正筆しょうひつ掛物かけもの沢庵たくあん木庵もくあん隠元禅師いんげんぜんじ

   張りぜの小屏風こびょうぶ、この屏風びょうぶが、わての旦那だんな檀那寺だんなでら兵庫ひょうご

   おましてなぁ、兵庫ひょうごぼんさんえろう好みます屏風びょうぶによって兵庫ひょうごへや

   って、兵庫ひょうご坊主ぼうず屏風びょうぶにいたしますると、

   こないお言付ことづけ願いとうおます。


松公:……うふっ。こっちが何にも言わねえのに一人でべらべらべらべら

   しゃべってて面白おもしれえや。

   よう、三銭さんせんやるからもういっぺんしゃべれ。


使い:わて物乞ものごいとちゃいまっせ。

   よう聞いとくんなはれや。よろしいでっか?


   わては中橋なかばし加賀屋佐吉方かがやさきちかたから使いに参じまして、

   先度せんど仲買なかがい弥市やいちが取り次ぎました道具七品どうぐななしなでございますが、

   佑乗ゆうじょ光乗こうじょ宗乗そうじょ三作さんさく三所物みところもん備前長船びぜんおさふね住則光じゅうのりみつ

   横谷宗珉よこやそうみん四分一拵しぶいちこしら小柄付こつかづきの脇差わきざし脇差わきざし柄前つかまえ鉄刀木たがやさん

   言うとりましたが、埋もれやそうでィがちごておりましたさかい、

   ちゃんとお断り申し上げま。

   次材じざいは「黄檗山おうばくさん金明竹きんめいちく寸胴切ずんどうぎり花活はないけ」には遠州宗甫えんしゅうそうほめいがござい

   ます。「織部おりべ香合こうごう」「のんこの茶碗ちゃわん」、「古池ふるいけかわず飛び込む水の

   音」言います風羅坊芭蕉ふうらぼうばしょう正筆しょうひつ掛物かけもの沢庵たくあん木庵もくあん隠元禅師いんげんぜんじ

   張りぜの小屏風こびょうぶ、この屏風びょうぶが、わての旦那だんな檀那寺だんなでら兵庫ひょうご

   おましてなぁ、兵庫ひょうごぼんさんえろう好みます屏風びょうぶによって兵庫ひょうごへや

   って、兵庫ひょうご坊主ぼうず屏風びょうぶにいたしますると、

   こないお言付ことづけをなぁ。


松公:おかみさぁーーーん!

   おかみさぁーーーーーーん!!

   おもて兵庫ひょうご標語ひょうごの…変な人が来たぁ!


女房:お前の方が変じゃないか!

   

   あ、いらっしゃいませ!

   どちら様でしょう?


使い:あ、あの、おいえはんでっか?


女房:……はい?


使い:おいえはんでっしゃろ?


女房:………お湯屋ゆやさんですか?

   お湯屋ゆやさんはもう二丁にちょうばかり手前てまえでございますよ。


使い:いやあの、おかみはんでんな?


女房:ぁ、ああはい、家内かないでございます。


使い:あ~さよかぁ。さっきまでえろう難儀しとりました。

   わてなぁ中橋なかばし加賀屋佐吉方かがやさきちかたから使いに参じまして、

   先度せんど仲買なかがい弥市やいちが取り次ぎました道具七品どうぐななしなでございますが、

   佑乗ゆうじょ光乗こうじょ宗乗そうじょ三作さんさく三所物みところもん備前長船びぜんおさふね住則光じゅうのりみつ

   横谷宗珉よこやそうみん四分一拵しぶいちこしら小柄付こつかづきの脇差わきざし脇差わきざし柄前つかまえ鉄刀木たがやさん

   言うとりましたが、埋もれやそうでィがちごておりましたさかい、

   ちゃんとお断り申し上げま。

   次材じざいは「黄檗山おうばくさん金明竹きんめいちく寸胴切ずんどうぎり花活はないけ」には遠州宗甫えんしゅうそうほめいがござい

   ます。「織部おりべ香合こうごう」「のんこの茶碗ちゃわん」、「古池ふるいけかわず飛び込む水の

   音」言います風羅坊芭蕉ふうらぼうばしょう正筆しょうひつ掛物かけもの沢庵たくあん木庵もくあん隠元禅師いんげんぜんじ

   張りぜの小屏風こびょうぶ、この屏風びょうぶが、わての旦那だんな檀那寺だんなでら兵庫ひょうご

   おましてなぁ、兵庫ひょうごぼんさんえろう好みます屏風びょうぶによって兵庫ひょうごへや

   って、兵庫ひょうご坊主ぼうず屏風びょうぶにいたしますると、

   こないにお言付ことづけを願いたいんでんねん。


女房:【まくしたてられてポカーン】

   …。

   ……ちょっと。

   ………ちょっと、松公まつこう

   お茶持ってらっしゃい。


松公:うひひひ、ははははっ……!


女房:お茶を、持ってらっしゃいっての!

   お客様の顔を指さしてゲラゲラ笑うんじゃないの。


松公:うふふへへへ、へぇい。


女房:早く持ってらっしゃいーーってどうして猫を蹴飛けとばすの!


   …あいすみません…今ちょっとこれに小言こごとを言っていて、聞きそこ

   なったところがございまして。

   恐れ入ります、もう一度お願いいたします。


使い:またでっか…!?無茶むちゃ言いなはんなぁ。

   今な、この丁稚でっちはんに二度やってまんねんでわて。

   なんやもうあごがガクガクしてな。


松公:へへ、俺なんか耳がガンガンしてる。


女房:【声を落として】

   バカッ、余計なこと言うんじゃないよ…!


   あの、お願いしますから。


使い:もうこれっきりだっせ?よう聞いとくなはれや!

   よろしか!?

   わてなぁ、中橋なかばし加賀屋佐吉かがやさきち、ご存知ぞんじでっしゃろ?

   加賀屋佐吉方かがやさきちかたから、使いに参じまして、

   先度せんど仲買なかがい弥市やいちが取り次ぎました道具七品どうぐななしなでございますが、

   佑乗ゆうじょ光乗こうじょ宗乗そうじょ三作さんさく三所物みところもん備前長船びぜんおさふね住則光じゅうのりみつ

   横谷宗珉よこやそうみん四分一拵しぶいちこしら小柄付こつかづきの脇差わきざし脇差わきざし柄前つかまえ鉄刀木たがやさん

   言うとりましたが、埋もれやそうでィがちごておりましたさかい、

   ちゃんとお断り申し上げま。

   次材じざいは「黄檗山おうばくさん金明竹きんめいちく寸胴切ずんどうぎり花活はないけ」には遠州宗甫えんしゅうそうほめいがござい

   ます。「織部おりべ香合こうごう」「のんこの茶碗ちゃわん」、「古池ふるいけかわず飛び込む水の

   音」言います風羅坊正筆ふうらぼうしょうひつ掛物かけもの沢庵たくあん木庵もくあん隠元禅師いんげんぜんじ張りぜの

   小屏風こびょうぶ、この屏風びょうぶが、わての旦那だんな檀那寺だんなでら兵庫ひょうご

   おましてなぁ、兵庫ひょうごぼんさんえろう好みます屏風びょうぶによって兵庫ひょうごへや

   って、兵庫ひょうご坊主ぼうず屏風びょうぶにいたしますると、

   こないにお言付ことづけを願います!

   ほなきますさかい、ごめんやす!!


女房:あ!ちょっともしあなた!お待ちになって!

   あらぁ~~~……!


   お茶持ってらっしゃいって言ってるじゃないか!

   お茶持ってくれば、あといっぺんぐらいやってもらえたかもしれな

   いんだよ?

   あんまり上方かみがたなまりが強く、なに言ってたかさっぱり分からなかっ

   たよ。

   お前はもう何度も聞いてんだから、ちゃんと覚えてるだろ?

   初めのほうとか覚えてるかい?初めのほうは。


松公:ぇ~、初めのほうなんかねぇ、なんかもやもやっとしちゃってる。


女房:じゃ真ん中は!


松公:ぼーーーっとしてる。


女房:おしまいは!?


松公:…正午しょうご省吾しょうごのーー


女房:【↑の語尾に喰い気味に】

   まるっきり分かってないんじゃないか!

   どうすんの、あの人が帰ってきたらなんて言うつもりだい!


松公:【反省してない】

   知らないよォ。

   おばさん言ってたんだからね、あたいなんか知らないよぅ。

   【ふざけて】

   しょうごのォ、しょうごのォ。


女房:っな、なに言ってんだい!ったく…あ。


   おかえんなさい。


叔父:おかえんなさいじゃないよ。大きな声で女が店先で小言こごとを言ってたん

   じゃお前、その横町よこちょう曲がったとたんに丸聞まるぎこえだよ?

   どうしたんだ?


女房:あ、あの、今ね、ちょっとアレなのよ。

   あの、お客さんがお見えになったもんだからさ。


叔父:ああ、お客さんか。

   で、どちらからお見えになったんだい?


女房:どちら……あちらからいらっしゃいました。


叔父:そうじゃない、どんなかたなんだい?


女房:どんなかた…って…、あの、着物を着てまして…、

   帯をめて…。


叔父:…お前、バカがうつったんじゃないか…?

   どちらから?あちらから。

   どんなかた?こんなかた

   ってそんな話があるかよ!

   どっからどういう御用ごようの方が見えたんだ?


女房:どういう御用ごよう…ってアレなんですえぇっと…。

   …。

   【ぶつぶつ言うように】

   ……なか…なかばしの、かがやさきちさんの…


叔父:え?中橋なかばし加賀谷佐吉かがやさきちっつぁんがわざわざ見えたのかい?


女房:ぁ、いえ…そこのお使いのかたがね…。

   お使いのかたが……


   風車かざぐるまの、弥七やしちさん…。


叔父:えええ!?

   会いたかったなァ!それは会いたかったよ!?

   って、いったい何しに来たんだ?


女房:いや違う、違うの。

   ……仲買なかがい弥市やいちさんっていうーー


叔父:ぁあなんだ、弥市やいちか。

   「や」しか合ってないじゃないか。

   なァんだ、弥市やいちか。

   弥市やいちならしょっちゅううちに来てんだ。

   お前だって知ってるだろ?


女房:っそ、そうですね…。

   ですから、あのかたはね、弥市やいちさんじゃないかたなんです。

   なんですか、この、弥市やいちさんてかたがですね……

   気が違っちゃったんですって。


叔父:おいおいおい、とんでもない事を平気で言うもんじゃないよ。

   五、六日前に会った時は元気だったよ?

   気が違ったって、それは穏やかじゃないよ。

   詳しく聞かせておくれ。


女房:その、弥市さん?…遊女ゆうじょを買ったんですって。


叔父:…いきなりの話だねそれは。

   遊女ゆうじょを買ったと。

   で、どうしたんだ?


女房:~…そしたら…これが、孝女こうじょだったんだって。

   で、掃除そうじが好きなんだって。


叔父:ふぅ~~んん……まあ、女だから掃除そうじが好きな遊女ゆうじょもあっても

   いいかもしれないな。

   それがどうしたんだ?


女房:それで、一緒に先祖やまんぞって遊んでたらしいんだけど、

   何かにカチンと来たのか、その遊女ゆうじょをね、


   寸胴斬ずんどうぎりにしちゃったんですって。


叔父:真っ二つかい!?

   ずいぶん乱暴な事をしたもんだね…!

   それで?


女房:~……お腹が空いたんでしょうね…たくあんと、いんげん豆で、

   お茶漬ちゃづけが食べたいって。


叔父:??妙なもんでお茶漬ちゃづけが食べたいんだな…。


女房:食べ合わせ悪かったのかしら。

   いくら食べても、のんこのしゃ~なのね。


叔父:汚いなおい!

   しかしだらしないな。


女房:えらい事をしたと思ったんでしょうね。

   自分なりに高跳たかとびしようと思ったのか、御座船ござぶねに乗って、備前びぜん行こ

   うと思ったんですって。

   そしたらお前さん、兵庫ひょうごに行っちゃったんですって。

   兵庫ひょうごにお寺がありましてね、お坊さんがいるんですって。


叔父:寺に坊さんがいたってちっとも不思議ふしぎじゃないだろ。

   それで、どうしたんだ?


女房:そのお坊さんと…なんですか、屏風びょうぶ立て回して、その陰で一緒に

   寝てみたいと。


叔父:色気違いろきちがいじゃないか…!それは大変な事だよ…!


女房:そしたらそのむこうにまたお坊さんがいるんですよ。

   向こうにまた屏風びょうぶがありましてね、その向こうにまた坊さんがいて

   屏風びょうぶがあって坊さんがいて、屏風びょうぶがあって坊さんがいて、

   屏風びょうぶがあって坊さんがいて、屛風びょうぶがあって坊さんがいて、

   屏風びょうぶがあって………なんでしょう?


叔父:お前は何を言ってるんだよ…!

   あのね、話てものはたいがい五つ聞くてえと、後の五つは察すると

   いうことがあるよ?

   お前の話は察しようがないじゃないか。そうだろ?

   弥市やいち遊女ゆうじょ買ったら孝女こうじょ掃除そうじが好きで、たくあんといんげん豆

   でお茶漬ちゃづけが食べたい、いくら食べてものんこのしゃ~、

   御座船ござぶねに乗って備前びぜんに行こうと思ったら兵庫ひょうご行って、

   坊さんと屏風びょうぶの陰で寝てみたい、

   坊さんがいて屏風びょうぶがあって、坊さんがいて屏風びょうぶがあって、

   坊さんがいて屏風びょうぶがあって、坊さんがいて屏風びょうぶがあって、

   これなあに?ーーってなんなんだい!?

   ちっとも話が分からないじゃないか。

   少しははっきりしてる所は無いのかい!


女房:はっきりしてるとこ……あっ…!

   思い出しました。

   古池ふるいけへ飛び込んだんです。


叔父:何ィ!?

   弥市やいち古池ふるいけへ飛び込んだ!?

   そうか、あいつには道具七品どうぐななしなを買うように手金てきんが打ってあったん

   だがそれを買ってかい?


女房:いいえぇ、買わず(かわず)。




終劇




参考にした落語口演の噺家演者様等(敬称略)


柳家小三治(十代目)

三遊亭圓生(六代目)

三遊亭小遊三

柳家喬太郎



※用語解説


差料さしりょう

本来は武士が自分の腰に差す為の刀、特に打刀や脇差を指す言葉なの

だが、なぜか小三治師匠は傘に使った。

小生が勉強不足なのか、それとも小三治師匠がうっかり間違ったのか

、はたまたこの蛇の目傘は柄に刃が仕込んである仕込み杖だったのか

は不明。


き付け

① 主となる燃料に火をつけるために燃えやすい物(落ち葉、小枝、新聞

紙、着火剤など)

② 人の感情を刺激して特定の行動を促すこと

という2つの意味があるが、今回は①で正解。


相模町さがみちょう

埼玉県越谷市にある町名。

江戸の町の中にあったという記録はないそうである。


炭団屋たどんや

炭団は、木炭の粉末に布海苔などの結着剤を混ぜて球状に固めて乾燥させ

た伝統的な燃料で、火鉢や囲炉裏で使われていた。


中橋なかばし

日本橋と京橋との中間にあった堀割に架かっていた橋。


先度せんど

さきごろ。せんだって。先日。


仲買なかがい

問屋と小売商との、または生産者・荷主と問屋との間に立って、売買の

仲立ちをして営利をはかること。それを業とする人。ブローカー。


佑乗ゆうじょ

後藤祐乗ごとうゆうじょうのこと。

装剣金工の後藤四郎兵衛家の祖。

美濃国の生まれ。

金や赤銅の地金に龍・獅子などの文様を絵師狩野元信の下絵により

高肉彫で表したものが多い。


光乗こうじょ

後藤光乗ごとうこうじょうのこと。

後藤四郎兵衛家の四代目。


宗乗そうじょ

後藤宗乗ごとうそうじょうのこと。

後藤四郎兵衛家の二代目。


三作さんさく

上の三人の事を指している。


三所物(みところもん)

刀剣の付属品である目貫(めぬき)(こうがい)小柄(こづか)の総称。

江戸時代においては同じ意匠の揃いが尊重され、後藤家彫は有名。


備前長船びぜんおさふね

岡山県南東部にあった町。中世は名刀の産地で知られ、備前の政治・経済

の中心地であった。


住則光じゅうのりみつ

おそらく上の備前長船と合わせて、

「備前長船に住んでいた則光」という表現でいいのではと。

鎌倉後期に初代刀匠が登場。以降則光は、天正「則光」まで9代を数える

。室町末期の大洪水の為、後継が絶たれている。


横谷宗珉よこやそうみん

江戸中期の装剣金工家。晩年に遯庵(とんあん)と号し、後藤家の下職から転じて

町彫りを創始する。

片切り彫りの彫法を大成し、絵画風の自由な意匠を表現した人物。


四分一拵しぶいちこしら

銅3、銀1の割合で作った日本固有の合金。

装飾用で、朧銀(おぼろぎん)とも呼ぶ。


小柄付こつかづ

小柄とは日本刀の鞘に付属する細工用の小刀のこと。

本来は木を削ったり紙を切ったりする実用品だったが、江戸時代には

装飾性が重視され、芸術性の高い美術工芸品となる。


脇差わきざし

刃渡り1尺(30センチ)以上2尺(60センチ)未満の日本刀で、

江戸時代には武士が打刀と合わせて「大小二本差し」として腰に差すのが

一般的だった。

脇差は打刀の故障時などの予備武器としての役割も持ち、武士階級以外の

帯刀も認められたことから、町民、特に侠客が鍔なし白木の柄と鞘でもっ

て携帯した。

その際は「ドス」と呼ばれている。


柄前つかまえ

日本刀の「柄」の装飾や、柄を巻く「柄巻」の、その装飾の技法を指す

言葉。


鉄刀木たがやさん

マメ科の高木。高さ約15メートル。葉は羽状複葉。

花は黄色で材は黒色で堅く、板目の模様が美しい。

インド・東南アジアに分布しており、細工用材として用いられる。


・埋もれ

地層中に埋まった樹木が年月をかけて炭化し、化石のようになったもの。

亜炭の一種で木目が残っており、質は緻密。

仙台地方に多く産出し、細工物の材料として用いられる。


次材じざい

次にくる素材、または主な素材(主材)の次の素材を指す言葉で、

特定の分野で使われる用語ではないが、材料が主、副と序列を持つ場合に

副材や補助材とほぼ同義で使われることがある。


黄檗山おうばくさん

中国、万福寺の山号。

また、その住持の隠元が来日の際、宇治市に建立した万福寺の山号でもあ

る。


金明竹きんめいちく

マダケの栽培品種。

全体に黄金色で、葉は初め黄色だが後に白く変わる縦線がある。

主に観賞用として用いられる。


寸胴切ずんどうぎり

寸切り、髄切り、または直切りの音変化とも言われる。

茶入れ・花器で頭部を真横に切った形のものを指す。


遠州宗甫えんしゅうそうほ

江戸時代初期の大名で茶人、作事奉行であった小堀遠州の別号。

遠州流茶道の祖として知られ、茶の湯に「綺麗さび」の美意識を取り入れ

たことや、桂離宮、二条城などの建築・造園にも携わったことで有名。


織部おりべ

この言葉に来るまでに著名人の名が出まくっているので、

恐らく戦国時代から江戸初期にかけての茶人・芸術家・武将であった

古田織部(重然)の事だと思われる。


香合こうごう

香を収納する蓋付きの小さな容器。

茶道具の一種であり、また仏具の一種でもある。

香蓋とも書かれるが当て字。また合子ともいう。


・のんこの茶碗ちゃわん

のんこうの茶碗。

京都の楽焼本家三代目道入(どうにゅう)が焼いた楽焼。

また、道入の俗称ともされた。


風羅坊芭蕉ふうらぼうばしょう

風羅坊芭蕉は松尾芭蕉の雅号のひとつである。


正筆しょうひつ

その人が本当に書いた筆跡。


掛物かけもの

掛け軸のこと。


沢庵たくあん

沢庵宗彭。

江戸初期の臨済宗の僧で但馬出身。

一凍紹滴の法を継ぎ、大徳寺の住持となる。

後に紫衣事件で出羽に流罪となるものちに赦免され、徳川家光建立の

東海寺の開山となる。


木庵もくあん

木庵性トウ(トウの字は変換できませんでした)

中国、明の黄檗宗の僧で泉州出身。

師の隠元に続いて来日し、宇治の黄檗山万福寺の二世を継いだ。

多くの寺を創建し、勅号は慧明国師。

黄檗三筆の一人に数えられる。


隠元禅師いんげんぜんじ

隠元隆琦。

江戸前期に明から渡来した僧。福建省出身。

日本の黄檗宗の開祖で宇治に黄檗山万福寺を開創。

書もよくし、黄檗三筆の一人に数えられる。


・張り

いろいろな書画などを取り交ぜて貼ること。


小屏風こびょうぶ

小型の屏風。


檀那寺だんなでら

その寺院の檀家となり、日頃から御布施などにより経済的に支えている

寺院を指す。


孝女こうじょ

孝行な娘。


・のんこのしゃ~

呑気でしゃあしゃあしていること。

平気で図々しいことや人。


御座船ござぶね

天皇・公家・将軍・大名などの貴人が乗るための豪華な船のこと。


備前びぜん

現在の岡山県東南部、香川県小豆郡・直島諸島、兵庫県赤穂市の一部

を指す。


手金てきんを打つ

報酬を支払う事。





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