私は13年前まで確固たるアルコール依存症者でした。
月曜日の朝、仕事に行かなくてはいけないのに、目の前にあるアルコールを口に運んでしまう。
『すみませんが体調が思わしくなくて今日は休ませてください。」と職場に電話連絡すれば今日も1日中飲みっぱなし。連続飲酒はこうやって始まるのです。
誰かが呑ませているのではない。自分の手でグラスを口に運んでいる。しかし、そのあとやってくるのは逃げようのない不安、社会からの抹殺、家族崩壊、金銭の枯渇。
どこで辞めるか? いつ辞めるか? どうやったら辞められるのか?
収入のないあなたがどうしてアルコールを購入できているのでしょうか?
1985年、イギリス人の会計士であったアレン・カーが書いた『禁煙セラピー』という本が発売され、世界各国で売れに売れた。彼は1日に100本はタバコを吸う、いわゆるヘビー・スモーカーであり、彼自身の実体験から執筆されたものであった。
その後、2匹目のドジョウを狙ったのか『禁酒セラピー』を執筆しましたが、そこにドジョウはいませんでした。この違いは経験した事を体験談として語れているかどうかの違いでしょう。
私自身、1日20本はタバコを吸うスモーカーです。禁煙にチャレンジしようとして『禁煙セラピー』を2冊所持していました。1冊は職場に置きっぱなし。もう1冊は自宅用でしたが、今に至るまで禁煙できていません。
ただし、タバコを吸わない = 禁煙 という事ならば何度も禁煙に成功しています。長い期間で1年間、全く吸わずに済んだ事だってあります。 禁煙の継続に終止符を打ったのは場末の飲み屋のカウンターでした。
アルコールを飲むと、無性にタバコが吸いたくなってしまい400日近く続いていた禁煙を捨ててしまったのです。この時、吸った1本が現在までの累計金額で600万円以上でしょう。
アレン・カーが『禁煙セラピー』で書いた「次の1本は600万円」とはこういう意味なのです。
この考え方を応用したものが『禁酒セラピー』です。
現在、私は61歳です。断酒歴13年くらいだと思いますが禁煙しようとは思っていません。もちろん現役で働いていますし、職業はクリニック勤務の放射線技師です。
朝起きて一服、お昼休みに一服、仕事中にも関わらず、他人の目をくらませて外出して一服。
禁煙しようと思いと鬱っぽくなってしまうのがわかっているので禁煙はしません。
我が人生にタバコは不可欠である!が現時点での解答です。
では酒は? あれほど毎日飲んでいた酒はなんでキッパリと辞められたのでしょうか?
実はキッパリと辞めた訳ではありません。2007年12月に三鷹駅にある井の頭病院に2ヶ月半入院。
この時、「あなたは正真正銘のアルコール依存症ですよ!」と病名がついてから合計で7回の入退院を繰り返すことになります。
「今日で酒飲むの辞めた!」と決めて断酒できたら、その人はアルコール依存症者ではなく単なる大酒飲みだっただけです。アルコールを買う金がもったいない。二日酔いが嫌だった。酒飲みの大声喋りが嫌い、などなど、非常に単純な理由でアルコールを絶ててしまえた人はアルコール依存症者ではありません。




