おかしな特殊能力 中
ようやく、二話目を書けました。
ラスト一話、どうなることやら?
俺は若い男に促されるまま、この男の後についていく。
ここ、相当に広い場所のようで、
「少し歩きますね。まあ、そうは言えど一時間もかかりませんから安心してください」
え?
徒歩で一時間近く?
俺の体力が保つだろうか?
なにしろ、俺は栄養失調で亡くなったようなものなんだから……
あれ?
それにしちゃ結構長いこと歩いてるが、疲れとか足の痛みとか感じないけど。
「あ、言い忘れてました。あなたは生き返っていませんけど完全に死んでる状況でもありませんので、体力保たないとか疲労や筋肉痛とは現在のところ無縁です。まあ、何処かの世界で生まれ変わったり召喚されたりしたら別ですけど」
え?
死んでも生きてもいない中途半端な状態?
でも疲れや筋肉痛とは無縁ね。
それは結構なことで。
そう言えば目覚めてからけっこう時間が経ってるけど、腹も空かない。
これが生きてもいないけど死んでもいないってことか。
「疲れもしなきゃ筋肉痛もない状態は嬉しいけど、これ、まだまだ歩くのかな?俺、亡くなる前の体じゃ、あまり運動なんかしなかったんだが」
あんまりどころか亡くなる数週間、どこにも行かなかった。
「神の空間のようなものなので、ここでは飲食は、そこまで必要じゃないです。不要ではないので少しは飲み食いできるような施設や店はありますが」
神の世界でも飲食店があるのか!
これには驚いた。
そうすると、アンブロシア食べてネクタル飲んで……
「神専用の飲食じゃありませんよ、ちなみに。美味いのは保証しますが、飲食物は、あくまで下界、あなたの住んでた世界のものと同じです。まあ、多元世界の料理や飲み物もありますので見たことも味わったこともないものもあるんでしょうけど」
「へぇ……そりゃ、会議後の飲食が楽しみだな。なにしろ、亡くなる前には食い物も飲み物も無かったんで……」
「会議後の飲食会は、そりゃ賑やかですよ。なにしろ、異界の神々すら参加してるんですから。まあ、今回の会議は、それだけ特別ってことですね」
「へー、そりゃ凄いだろうね。その中心の議題が俺の特殊な力と言うか能力と言うか呪いと言うか……だっけ」
「そうです。普通の会議なんて、その世界の神々すら参加せずに、下々の世界を管理する役人である天使たちまでの会議で終わることがほとんどなんです。いかに、今の状況が異常で大変なことなのか、ご理解いただけると嬉しいんですが」
そう言いつつ、若い男は苦虫を噛み潰したような表情になる。
そうか、俺の力、そこまで大問題なのか……
そこからは、軽い雑談くらいで、歩いている時間を保たせる(無言で数十分は、互いに苦痛だ)
ついに、会議室(というか、これ、会議室という名称で良いのか?堂々たるホールだぞ)へ着く。
会議中の不審者防止に、剣が宙に浮きつつ、回ってる。
その剣が向かって左側にあり、右には堂々たる天使(だろうな、羽が生えてる人間なんて見たこと無い)が立ってる。
天使が誰何し、それに若い男が答え、そして、会議室の扉が開かれる(でっかい、重い扉なのに、音もなく開くという。やっぱ、ここは現世の世界じゃない)
俺達が入っていくと、いくつもの視線が突き刺さるように、俺達を見てくる。
「ようやく、目が覚めたか。お前の能力の件で、こんな大騒ぎしておるので、当事者から何か言いたいことがあるなら、発言も許すぞ」
議長らしき神(なんだろうな、人間に対し偉そうにするという傲慢さも神の資質だ)が、こちらに向かって言う。
若い男が答え、
「そうだろうと判断し、当人をお連れしました。どうやら、人間ならではの視点というものがあるようですので、この方の意見はひじょうに参考になるかと思われます」
そう答えた若い男は一歩下がって踵を返し、扉から出ていこうとする。
止めようかと思ったが、ここは神々の会議場だと思い直し、やめる。
人間で、ここで発言を許される方が稀なことなんだろうな。
俺は腹を括る。
「神様ですね、お初にお目にかかります。私に与えられた能力やスキルなのか、それとも呪いなのか、自分でも分かりませんが、それでも、この特殊な力については自分自身が一番良く分っていると思われます」
俺の言葉を聞いた眼の前の神は、
「面白きやつ。発言は自由にして良いので、ここでお主の考えを表明してくれ。なにしろ、前例もなければ似た能力も過去になかったので、ほとほと困っておるのだ」
神のボヤキ、初めて聞いた。




