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おかしな特殊能力 前

予定では三部作になる予定です。

まことに変な、今まで発現したことのない、神々すら知らない能力を持つがゆえに死んだ男。

この話は、そこから始まる。


新しい物語を書こうと思う。

これは、特殊な力が故に世に疎まれ、それでも生き方を曲げなかった男の物語である。


俺は……

いや、この世での名前は、もう不要だ。

俺は人間社会に受け入れられなかった。

そのため、どの会社に入っても半年と保たなかった。


俺には生まれつき不思議な力……力と言うか才能と言うか何と言って良いのか分からない……がある。

自分の所属する会社やサークル、趣味の集まりのような会でも良いが、その小さな社会の終わりが見えるのである。

どう始まって、どう成長して、どう衰退して、どう解散(あるいは破産、倒産でもよいが)するか、見えてしまう。

こんな力、要らないと思うが、どうやってもこの力は消えてくれない。


想像に難くないと思うが、こんな力を持つ者が社会人なんて勤まるわけない。

頭は悪くなかったため、どんな会社でも雇ってもらえた。

しかし、半年も経たずに退職を余儀なくされる。

当たり前だろう、会社の最後が見えてる状態でモチベーションが維持できると思うか?


俺は転職10回目で諦めた。

それからは生活保護やらアルバイトやらで、しばらく食いつなげたが、それも限界。


もう二週間、水だけの食生活。

もう随分前から眠ることも苦痛になってきた。

体には力が入らず、それでも人間の生きようって本能は凄いもんだ。

しかし、それももうすぐ終わる……

意識を保つことすら難しい……

あ、今、俺は、し……


「はい、あなたは少し前に、この世とおさらばしましたよ。気が付きましたか?」


若い男が俺に話しかけてる。

え?

俺、今死んだんじゃなかったの?


「意識もしっかりしてるな……俺は死んだはずなんだが……」


俺がつぶやくと若い男は再確認のように、


「もしもーし!聞いてますか?あなたは少し前に、この世とおさらばしたんですよ。つまり、死んじゃったんです。自覚しましたか?」


若い男が声を大きくしてくる。

うるさいな。


「分かってますよ、俺は確かに死んだはず……なんだけど、ここ、どこ?なんで俺は喋れるの?それよりなによりさ、俺って生き返ったの?!」


俺の疑問に、まぁまぁと手を使って押さえながら、若い男は言う。


「まず、あなたは生き返ってません、きちんと死んでます。次、ここは、この世とあの世の境目。分かるかな?天国でも地獄でも現世でもない一種の亜空間のようなもの。普通、死んじゃった人は輪廻転生コースか、あるいは重犯罪者ですと地獄へ直行コース、ごくまれに天国ご招待って方もいますが、あなたの場合、どのパターンにも入りません」


ん?

こいつ今、何と言った?

輪廻転生も地獄直行も天国行きでもない特殊な例?


「あのー……ただの人間が生き死にに関することで文句言える立場じゃないってのは、賞罰とは縁のない生き方してきた俺にも分かってます。分かった上で聞くんですが……俺、どうなるんです?」


若い男は、俺に向かい、何というか考えているようだったが……


「あなたの場合、立場が特殊すぎてですね。輪廻転生とか地獄とか天国とか行っても、あなたの力が生かせないんですよ、どんな形でも」


あ、こいつ俺の特殊能力を知ってるな。

俺は瞬時に理解する。


「で?俺の力、大きなものだろうが小さなものだろうが、自分が入った社会やサークル、ムラや学校でも、その組織の最後が見えるって能力のことですね」


そうなんですよ!

若い男は少し笑顔になり、


「神々の間でも、この能力が話題になりまして。古今東西、こんな力と言うかスキルと言うか能力と言うか、その「自分の属する組織の最後が見える」ってのが発現した記録が全く無いんですよね。それこそ宇宙を創ったブラフマー神すら予想だにしない力だったようで」


「この力のせいで俺の一生はメチャクチャだったんだけど。どの神のいたずらで、こんな力を授けられたのかな?」


「いやだから、話聞いてます?どの神々でも、こんな力が有るなんて知らなかったんですよ!」


え?

全くの宇宙の偶然?

いやいや。


「神はサイコロ振らないって聞いたこと有るんだけど。神々が知らないってのは実は悪魔の力だったり?」


そう聞く俺に若い男は残念そうに、


「悪魔って古い神なんですよ。だから神々には悪魔も魔神も全て含まれます」


悪魔も魔神も神……

そう言われると納得しそうになるが……


「それじゃ、全くの偶然で俺はこんな力を得たと?そんなバカな!生まれつきだろうとなんだろうとスキルや能力は神の領域でしょうが!偶然に、こんなバカみたいな能力が備わるわけないでしょうが!」


「うーん……原則として、そうなんですよね。しかし神も悪魔も太古の魔神すら知らない特殊能力というのは……」


そこまで聞いて俺に閃くものが。


「もしかして神でも悪魔でも魔神でもない存在が創った特殊能力ということは?」


俺の発言を聞いて、その推測を聞こうとする若い男。


「ふんふん、それで?能力持ってる人物の意見は貴重ですから、参考までに」


俺は続ける。


「だから、神々が関係してないのなら、これは人為的に造られた能力では?ということです。造られたと言うより、どちらかと言うと呪いに近いかも知れないですけど」


若い男の目が輝く。


「凄い!人間って進化してるんですねー、すごい推測ですよ。さっそく、神々の会議に、その意見を発表する機会を設けますので」


「え?もしかして俺が神々の会議に参加するってこと?人間が参加しても良いものなのかな?とっても重要な機密が話されてそうな気がするんだけど?」


俺の疑問に答える若い男。


「まーねー、この件については神々の誰にも分からない案件ですから。本人の意見というのは貴重なんです。事件の当事者でもあるわけですし」


事件の当事者って、どういうことだ?

と、若い男に何考えてるのか詰め寄ろうと思ったが、まあ、死んだ身でもあるから神々の関係者であろう若い男に食って掛かるのは止めておく。


「ところで一つ聞きたいんだけど?」


俺は質問する。


「何でしょうか?私で分かることならお答えしますよ」


若い男の返事が来たので俺は質問することに。


「じゃあ、前提として呪いとか、まじない、呪術の神様っているんでしょうかね?その神様なら俺のこの特殊な能力、というか呪いのような力も分かるんじゃないかと思うんですけど」


若い男は残念そうに首を振る。


「数百年前なら、そのへんの担当をしてる呪術の神も存在してたんですけど……今はもう、いないんですよ」


え?


「神がいない?数百年前はいた?神様って永遠不滅じゃなかったっけ?」


若い男は少し顔色を暗くして、


「いいえ、神という存在は永遠不滅じゃないですよ。神には信者が不可欠なんです。太古から呪術や呪いというのは人間界に不可欠だったので呪術の神は偉大な神とされ、強力な神力を使えました……しかし、近世になり人々は科学の力の方を信じるようになりまして……呪術の神への信仰は廃れてしまい、信者が最低数以下になってしまったため消滅したと……神にも弱点や欠点はあるんです」


そうか……

神の世界というのも大変なんだな。

信仰が無くなって信者が最低数以下になると神そのものが存在を抹消されることになるとは、残酷と言うか、神の世界も栄枯盛衰があるんだと感心するというか。

俺は、ある意味、納得づくで神様たちの会議に参加する。


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