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ひねくれゴーレム運転士  作者: 零たろ
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1話 出発

 この度は読んでいただきありがとうございます。まだ拙い文ですが、もし面白いと思ったら、高評価をして頂けると嬉しいです。

 それでは、どうぞお楽しみ下さい。

 黄金を敷き詰めたように広がる小麦畑。木と石を組み合わせた、独特の家屋。大陸の多くの詩人が唄うほどに、ハールハル高原は美しかった。


 しかし、この場所にも、長く居られるわけではない。


 出発の前に、私はここの小麦を買えるだけ買った。買った小麦を北へ行って売れば、値段が倍になるのだ。増えた金でしばらくの間は贅沢に生活できる。含み笑いをしながら、麻袋をひとつずつ荷台に積んでいった。


「行けるか、クレイ」


『ウォォォ、ウオォ』大きな土の人形は、言葉にならない声で返事をする。


 ザイト社製運搬型ゴーレム、通称クレイ。よく言えば長年の相棒で、悪く言えば商売道具だ。同業者のなかには名前を付けて可愛がる奴もいるらしいが、私はずっとクレイと呼び続けている。


 クレイの背中に乗り、手綱を引いて「歩け」の合図を出す。まだ息の白い朝、私は北の町、チュルディラの方角へと進み始めた。


 魔道具であるゴーレムは手を離していても歩き続けるため、身体を動かさない私は、この地域ではとにかく寒い思いをする。さらに私はすることがないので、いつも退屈と絶景を7:3ほどの割合で味わうことになる。


 そこで私は、もふもふの毛皮を羽織り、高原の町で買った新聞を読むことにした。


 目立つところに、目立つ書体で書かれた文字に目を落とす。首都圏の魔法学校で、教科書のページを間違えた一人の生徒が爆破魔法を唱え、四人が重傷だそうだ。


 可哀想に。


 私には関係ないのでページをめくる。次は王国政府の賄賂、その次は防具売りのストライキ。役に立たない情報ばかりだ。やはり地方紙を買うべきだったかと、少し後悔している。


 鞄から取り出した高原産の硬めのパンを齧りながら、片手で新聞を読んでいると、二重枠で囲まれたリストに目が留まる。またこれか。


 記されていたのは、先週の冒険者の死亡者名簿だった。魔物や魔王、あるいはその手下と勇敢に戦い、名誉ある死を遂げたとされているが、私はそれが、どうも気に食わない。


 魔王と災いの因果関係はないという説が主流となっているこの期に及んで、おとぎ話に感化され、魔王討伐だの、魔物淘汰だのと騒ぐ馬鹿な連中が勝手にくたばっただけの、どこが名誉だというのか。更にそれを美化して背中を押す社会もどうかしているのではないか。


 愚人名簿を睨みつけ、私はパンをガリッと食いちぎった。そして、朝から苛立ってはいけないと、気を紛らわすために林道の遠くを眺めた。


 針葉樹と広葉樹が入り混じる、空気の澄んだ林。チュルディラに着くまで、いくつか村があるといいが。


「お姉さん、おね〜さ〜ん、おーい」と、後ろの方から声がした。

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