流れ星
会社帰り、夜空を見上げてため息をついた。
帰りたくない。
会社では出世コースから外れてしまい、家に帰れば稼ぎが少ないと妻になじられ、同居の母には妻とのトラブルを聞かされる。
子どもたちは部屋に閉じ籠ったまま、最近は顔も見ない。
なんのための家なのか? なんのために働いているのか……。
「ああ、くそ! 帰りたくない! 帰りたくない! 帰りたくない!」
頭を抱えて呻くように叫ぶ。すると、夜空に光輝く流星が見えた。
「あ、流れ星だ」
流れ星を見るなんて、子どもの頃以来だ。懐かしくなり、スッと心に余裕が出来た気がした。
この広い宇宙から見たら私の悩みなんて、なんてちっぽけなものだろう。
そうだ。明日もある。明後日もくる。
みんなみんな毎日を何かしら抱えて生きているんだ。
私はそのまま空に向けて大きく伸びをして、顔を下げる。
「よし! 明日も頑張るz」
しかしそこには、広大な砂漠が広がっていた。
帰れない……。
いや、流れ星。ここは願いを叶えなくていいんだよ……。