馨15歳 桃月
高等部に入学するので制服を作り直すために嵯峨野さんに来てもらった。
同じ真路なのに中等部と高等部では制服が少し違うので作り直さないといけないのが面倒だ。
真路では親が高収入の者が多いので作り直さないといけなくてもなんともないのだろう。僕の制服は南条家から支払ってもらえるが、末席だった時の癖が抜けずつい考えてしまう。
嵯峨野さんは制服の作り直しなだけなのに多くの荷物を持ってやって来た。
「嵯峨野さんなぜ荷物が?今日は制服のための採寸だけですよね?」
「馨様高等部に入学されたらスーツにも慣れてもらいます」
そう言えば汐田さんが付いて洋服を作った時にそんなことを言われていた。
「でも着て行く場所がないと思いますけど」
汐田さんは慣れろと言うが、そもそも着て行く場所がない。
「馨様は正式に貴祥様の仕事を手伝うことになります。その時に着られたり、外出するときには外出先にもよりますが、なるべくスーツを着て慣れてください」
汐田さんが言うのならそうした方がいいのだろう。分かってはいるが費用のことを考えると眉間にしわが寄る。
「馨様。スーツの費用は南条家から出ますから安心してください」
僕のことはお見通しの汐田さんに先に言われてしまった。
僕は諦めて採寸の後に嵯峨野さんにスーツを見せてもらう。
「お話を伺ってまだ既製品でもよいかと思いましたが、細身で既成では合わないと思います。そこでセミオーダーにしましょう」
「既製品ではそんなにおかしいですか?」
出してくれたとしても費用を抑えられるなら抑えたい。
「一度羽織ってみられたら分かります」
嵯峨野さんは一番体型に合うスーツを着させてくれる。
鏡で見てみると確かに見ごろのあたりが余っている気がする。
「あり得ません。セミオーダーでお願いします」
ここでも汐田さんに決められてしまう。
いろいろ見せてもらった中からアイアンブルー(暗い紫みの青)の無地とアッシュグレーの地模様のようなチェック柄とネイビーブルーのストライプの3着に決めた。
「ちなみにこれらは1着いくらになるんですか?」
「そうですね一式で50000珀~60000珀でしょうか。他にシャツやネクタイ、後は靴などいれていましたら80000珀~100000珀ですね」
「毎日来たりしないでしょうからシャツもネクタイ3つもあればいいと思いますし、靴はどのスーツにも似合うものを1足あれば十分です」
「馨とりあえずはそれでもいいけど、少しずつそろえる必要はあると思うわよ」
「玲」
玲には制服のための採寸だと言って来たのに、戻りが遅いので様子を見に来たようだ。
玲が僕の横に座ると、佳那さんがすぐに玲のための紅茶を出す。
「玲様流石よく分かっていらっしゃる」
嵯峨野さんが嬉しそうに玲に同調する。
「玲そんなに必要ないよ」
駄目もとで言ってみるがやっぱり却下された。
「だってお兄様もお父様もいろいろお持ちだわ。会うたびに違うものを着ている気がするもの」
「それは組み合わせを工夫してそう見えるだけだと思うよ」
「いえ、南条様は年齢も違いますから揃えられた時間が違いますが、晄様は最初に持たれたスーツは3着ですがシャツやネクタイは数を持たれましたし、スーツもすぐに新しく作られましたよ」
「今の話でしょう?」
「いえ高等部の時からですね」
「それは貴祥様と一緒に表に出る機会が多いからですよね。僕が表に出ることはありませんから必要ありません。まぁ少しずつそろえてはいきます」
必要ないと言ったら皆にじっと見られてしまったので、最後にそろえるつもりはあること言って誤魔化す。
「はい、お待ちいたしております。馨様は何を着ても似合われますので、いろいろ着てもらいたいですね」
「えぇ早くクローゼットをいっぱいにして私が『もういい加減にしてくださいと』言うようになってほしいものです」
絶対にそんなことは言わないだろうと汐田さんが思っているのが透けて見える。
「今度買うときは私も一緒に見せてもらってもいい?似合うのがあれば着て欲しいから」
「えぇ是非いらしてください。馨様だけでしたら新しいものを着てもらえそうにありませんから」
「馨絶対誘ってね」
にっこり笑う玲に約束させられ、毎回玲が一緒に見立てることになった。そのおかげでスーツを仕立てる数が増えたのは言うまでもない。
読んで頂きありがとうございます。
次から第二章になります。
やっと棗の登場です。




