貴祥17歳 椿月
南条から大事な話があると言われ部屋に招き入れた。
南条はすぐに報告せず、俺が座るのを待って話し始めた。
「貴祥様落ち着いて聞いて下さい。葵様が最上に入学することになりました」
「なぜ葵が最上に通うんだ!今からでもなんとかなるだろう!」
南条の報告に納得がいかず、思わず立ち上がり怒鳴りつけてしまった。
「はい、なんとでもしようと思えばできますが、玲が葵様が最上で親友ができるからこのままでいいと。
『私も早く親友に会いたい』とまで言いまして、こうして貴祥様にご報告に上がった次第です」
「玲が葵は最上に通ったほうがいいと言ったのか?」
玲がいいと言ったと聞いた途端、怒りがどこかへ行ってしまった。
玲がそう言うのなら心配だが最上に通ったほうがいいのだろう。
そうなると玲がその親友に早く会いたいと思っていることの方が問題だ。
落ち着くためにも一旦腰掛け考える。
「はい、葵様が最上に通っている間に親友になるから、そのまま卒業まで最上でいいと」
「では、葵の方は葵と親友の情報を取りつつこのままで。親友のことは綾からも聞き出してもらうか。
そのほうが会わせても問題ないとなった時に、綾のお茶会に招待しやすいだろう」
「畏まりました」
「なぁ南条。もう葵を北条で引き取れないものなのか?」
以前からずっと思っていた。信用ならない藤波や、道具として見ているだろう彰吾さんに葵を任せるのは嫌だった。
部屋ならあるのだから、葵を家に引き取りたい。綾も玲もいて楽しいとも思う。
「貴祥様もご存じだと思いますが東条の名が葵様を守りますが、結婚となると障害となります。東条の名でも姪なので結婚できるのだと周囲に知ってもらう必要があります」
そんなこと改めて南条に言われなくても分かっている。本家同士では血が濃くなることを避けるために結婚はできない。
実際彰吾さんの姪なので結婚できるが、実娘であればどんなに対だと言っても、まず結婚できないだろう。
「なら、もう周知できただろうから、引き取ることはできるだろう」
「残念ながら貴祥様が年頃になります。お互いの名誉のために同じ家に住むことはよろしくありません。
正式に婚約し、嫁ぎ先に行儀見習いとして週末に来てもらうようにすることが精一杯かと思います。……貴祥様血が出ております」
どうやっても今すぐ引き取れないことが悔しくて唇を嚙みしめていたようだ。南条が差し出したハンカチで血を拭いながらできることを探す。
「問題ない。では、高等部入学するときに寮に入るようにしよう。そして週末は行儀見習いとして北条家に来させて、東条家には年に1~2度伺えばいいように」
「ではそのように手配します」
「東条家への根回しもできるか?」
「なんとかなりましょう」
南条がなんとかなると言ったのなら何とでもするだろう。
これで高等部に入学すれば寮に入れるし、正式に婚約するので今よりずっとましになるだろう。
「葵との婚約は俺から父に話しておく」
「かしこまりました。葵様のことすぐに対応いたします」
南条がお辞儀をして出て行くのを感じながら、急ぎ書類を確認し始めた。早く終わらせて葵のためにほかに何をするべきかを考え対策を取らなければいけない。
焦る気持ちを抑え、机に向かった。




