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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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貴祥16歳 桔月

 相談したいこととついでに聞いてみたいこともあったので晄と一緒に父の執務室へと向かった。


晄を伴ったのはもし父と喧嘩になりそうなとき止めてもらうためだ。


 執務室では父が1人で仕事をしていた。


富澤がいたが知っているだろうが聞かれたくないので部屋から出て行ってもらった。


「急にどうした。仕事が残っているんじゃないのか?」


「相談したいことがあったので、今日は仕事が立て込んでいないと聞いたんです。単刀直入に伺いますが、久我はお父様の対ですか?」


 少々聞きにくいのでいきなり単刀直入に聞いてしまう。


「なぜそう思う」


 一瞬仕事の手が止まったように見えたが、気にする様子もなく仕事の手を止めなかった。


「お母様より距離が近いのは仕事のせいかとも思ったのですが、久我の仕事の範囲が広すぎることが気になっていました。


僕のことなど将来的には関係がありますが、まだ高等部に入学したばかりでは秘書の久我の仕事の範囲ではありません。


決定的だったのは執務棟に久我が住む別棟があることです。別棟は基本同性の対を住まわせる場所なのでしょう」


 馨が使っているのもあってあまり深く考えなかったが、別棟は南条家にもあり、疑問に思い晄に聞くと基本的には当主夫妻の同性の対を住まわせる場所だと教えてもらった。


僕にももう少しすれば教えてもらえたのかもしれないが、南条家は今同性の対を住まわせていないので早めに南条から教えてもらえたらしい。


「そうだとしたらお前はどうするつもりだ」


 父は仕事の手を止め僕の顔を正面から見つめ聞いてきた。


「対であるのなら何も言いません。対の大切さは分かっているつもりです。お母様も本宅の方にいらっしゃるようですし、お互い合意の上なのだと判断しました」


「ならなぜわざわざ問うたのだ」


 本当に不思議そうに尋ねた。


「気になっていたので聞いてみたいと思っていたのもありますが、もし久我が対でないのならどうして久我を選んだのかを聞きたかったので。


僕もそろそろ秘書を決めなければいけないと思うのですが、どう決めればいいのか参考になればと。


ちなみに久我とはどこで知り合ったのですか?南条がお父様に勧めたのですか?」


 父と久我とでは3歳久我が年下となる。


真家の人間なら存在を知っていても、真路でも挨拶程度ならするかもしれないが、何かきっかけが無ければ親しくならない。


なら南条が秘書にどうかと勧めたのではないかと思ったのだ。


「貴臣様とは生徒会同士の交流会で、です貴祥様」


「久我いたのか」


 先ほどまで部屋に居なかったのに急に声がして驚いた。


 話に気を取られ久我が戻ったのに気が付かなかった。


「えぇ、資料を探して戻ったら貴祥様とのお話が聞こえたものですから。貴祥様の秘書は五条の次男では?」


「なぜ奏人だと思った?」


「貴祥様がよく仕事を頼んでいると聞きました。まれに参考になることを言うらしいですね。同じ年の京一は綾様の対でなかったとしても仕事をそこまで頼まないでしょう?」


「そうだな。京一は調整役は上手いがそれだけだ。僕と反対意見を言うことをしないのでつまらない。


奏人は調整役も上手いし、そのままでは使えないがいい案を言ったりするので面白い。


でもそれで決めてしまっていいのか悩んでしまって。晄に聞いたら能力と相性で決めたとしか教えてもらえなかったし」


「それなら五条の次男でよいのではないですか。晄様のおっしゃることは間違っていませんよ。

 能力がなければ対象外ですし、相性が悪ければどちらも辛い思いをしますから」


「そうか。晄も奏人を押しているから、奏人に確認してみようか」


 横で晄も頷いているのでいいのかもしれない。


「晄様はなぜ推薦されているのですか?」


「奏人は兄と能力では大差ないが、父親が長男が継ぐべきだと奏人を当てにしていないので、秘書にすれば兄と同等程度に話せるので喜んで務めるだろうと勧めていますよ」


「なるほど。兄が継いで兄の補佐になれば対等にはまず話せないが、北条家当主の秘書ならば対等に兄と話せる。

 自分を粗末に扱う者に見返してやれるですか。そんな背景もあるのなら是非五条を勧めますね」


「2人がいいと言うのならそうしよう。久我ついでに聞いてもいいか。長く父といるのなら母と父との出会いも知っていたりするのか?」


 せっかく出会いを聞いたのならこの際だからいろいろ聞いておきたい。


同性の対がいる者同士どう知り合ったのだろう。父と母は5歳差があり、こちらも親しくなる場所が想像しにくい。


 父に聞くのはなんだか気恥ずかしいので、久我ならまだ聞きやすい。父は傍で聞いているだろうが止めないのでよいのだろう。


「皐は私の幼馴染ですから、皋が産まれた時から知っていますよ。


お互い上席でご近所に住んでいまして、皋の兄と2人とも相性が悪かったので皐には兄のように慕ってくれたんです。


貴臣様とは貴祥様が奏人たちと交流会で会ったように出会い、対だと気が付きそのうち皐とも話す機会があり結婚に至りました」


 久我が母を急に呼び捨てにして驚いたが、幼馴染で産まれたころから知っているなら当然か。親しさを表すのなら手っ取り早く分かる方法だ。


 父上と母上が親しくなった経緯がさっぱり分からないが、もしかしたら周囲を誤魔化すために母上の対と共に出かけたりしたのかもしれない。


この国では真家に同性の対がいるので同性同士でいてもなにも言われないが、対は真家にしか現れないので表立って堂々と出かけられるかと言えば、そうでもないところがある。


「母が実家に帰りたがらないのはもしかしてそのせい?」


「そうですね。いまだに兄とは関係改善は出来ていません。もう一生無理だと思います」


「なぜそんなに相性が悪いんだ。俺も綾と喧嘩をしてもそこまで嫌うことは無いし。久我も相性が悪いのだろう?」


「皐の兄は同性の対がありえないと思っていて、受け入れられないからだ」


 仕事を再開していた父が理由を教えてくれた。それなら絶縁になるのも理解はできる。


久我とも相性が悪く、お互い分かるものがあるのだろう、慕うのも分かる気がする。


「本家では対だと言えば抵抗なく同性同士も受け入れますが、本家から離れるほど同性同士は受け入れにくくなります。


皐の兄は上席(じょうせき)では珍しいほど受け入れられなかったんです。


私が近くに居て割と早く同性が対象だと知られてしまったので、お前に対象に見られたくないと嫌われました。


いくらお前など対象にしないと言っても聞き入れず、皋が対と出会うとそれは皋にまで及び、同性などありえないと大騒ぎしまして。


2人の両親も私の弟もしょうがないと受け入れてもらえましたが、皋の兄だけはいまだにです」


「上席なら珍しいのか?」


「珍しいですね。本家にも近いですし、ちらほら身近で聞いたりしますので。


他人事で済んでいるのか、身内に居るのかでは受け入れ方が違うとは思いますが、あいつはより頑なになったんです。


私が北条家当主の秘書となり、皋が妻となったことで、下に見ていた人間が上に立つと余計に腹を立てて。


私はあいつに成績が劣ったことは無いんですけど、皐の方が家柄が上だったので下に見られていたので。だから五条のことはなんとなく分かります。良い仕事をすると思います」


「久我さんそれは同性が好きだと言っているのに女性にモテていて、その上成績もかなわないことに僻まれただけでは。


それを本人に当たりたいのに、久我さんのことですから飄々として受け流すので、持ち上げた拳を下ろせなくて皋様へと向かったのでは」


 それなら分かる気がする。


父は貫録のある男だが、久我はお洒落で信玄ほど男前ではないが、同じような華やかさがある。


女性への対応も紳士的で、話題豊富なので話をしても楽しかったに違いない。


「そうかもしれませんね」


 久我はさらっと流してしまったが、間違いなくそうだったのだろう。わずかに外した視線がそう言っている。


「なぁ母上の対が誰か知っているのか?本宅の方に住まわせているのは知っているが、俺は本宅の方にあまり行かないから」


「葵様の舞の先生、華杜の朱羽先生ですよ」


「晄は知っていたのか?」


「晄様いろいろ他にもご存じのようですが、過去のことなら多少目をつぶりますが、私的なことをこれ以上話してほしくはないですね。


晄様のことを貴祥様に話してもよいのですか」


「それはお断りします。いろいろ知っていても話しませんよ。貴祥さんも綾様に話さないでください。


まだ興味がないのか気が付いていないようですから」


 晄が何を知っていて何を隠しているのかとても気になるが、この2人が話さないと決めたら教えてもらえないだろう。


それに父と久我の関係をこれ以上聞きたいとは思わない。


「綾には最初から話すつもりはないよ。綾は舞のことで頭がいっぱいで他に考えられないから、知らないならわざわざ教えたりしない。


それにどちらかというと気になるのは凛様と穂高様の出会いとかだろ」


 でもそれは気になれば自分で凛様から聞くだろう。


「一通り聞きたいことは聞けたと思いますから戻りましょう。仕事が溜まっていますよ」


「分かっている」


 当主となるため今から仕事の流れを少しずつ覚えていかなければいけない。


 書類の確認として見て、何がどう動いているのか、どこからどれほど金が入り、どう出て行っているのか見て覚えていかなければいけない。


まだまだ慣れず疲れやすいがしなければいけないこと。僕はしぶしぶ腰を上げた。


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