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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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貴祥16歳 桔月-2

 中等部の樫木を高等部に呼びつけても大変来づらいだろうし、食堂も中等部と高等部では違う。仕方ないこちらが頼む側だ、行ってやるか。


 先に教室に向かうとすでに生徒会の方に行ったとのことなので、中等部の生徒会室に行く。


 ドアをノックし出てきた者に「樫木はいるか?」と尋ねると「いますが……」と誰だ?と思っているのが丸わかりの顔でこちらをじっと見る。


先日交流会をしたが俺を覚えていないとはただの手伝いで交流会に呼ばれていない奴だろう。


「呼んでもらえないか。北条が来たと言ってもらえばわかる」


「北条様!」


 伝えた男はそう言ったっきり固まってしまう。


 呼び出しさえも出来ないなんて手伝いとはいえ使えない男だ。使えない男など退けて自分で呼ぶかと思い男に手を掛けようとしたら、彼の背後から樫木がやって来て彼を押しのけた。


「北条様どうされました。わざわざこちらにいらっしゃらなくても呼ばれれば伺いましたのに」


「高等部の方に呼び出しても樫木は来にくいと思って来てみた。少し構わないだろうか」


「えっと、はい大丈夫です。狭い所ですがこちらでよろしければどうぞ」


 樫木は生徒会室に招き入れ、長椅子を勧めてくれたので腰を下ろす。


 樫木は俺の正面に腰掛け小さくなっている。


 先ほど立ち尽くした男や中にいたその他の生徒会の人間が俺たちに注目しているが気にせず話す。

 晄が玲に聞いてみたが、玲はにこっと笑うだけではっきりとは言ってくれなかったらしい。


違うとも言わなかったので、綾の対であるのなら早めに樫木が綾の傍に居ることを知らしめておくほうがいい。


「先日家庭教師の話が出ていただろう。それで正式に綾の家庭教師をしてもらうことにした。詳しくは今度の土の日の16時に北条家に来てから話す。受けてもらえるか?」


「あ、あの時の社交辞令ではなかったのですか?てっきり社交辞令だと思っていたので、まったく考えていませんでした。……できればお受けしたいのですが、今度お伺いするときに正式にお答えするのでも構いませんか」


「問題ない。では土の日に」


 樫木がそこまで考えてそう言ったかは分からないが、返事は待遇面をきちんと聞いてから答えるべきなので問題ない。


 俺が立ち上がろうとしたら、室内にいた男どもがこちらに寄って来ていた。


「北条様樫木が綾様の家庭教師をするのですか?それでしたら私の方が成績もよいですし生徒会長もさせて頂いていますので適任かと思います」


 断られるだなんてこれっぽっちも思っていない自信満々の様子で話しかける。


「断る。お前は武家の者だろう。武家の者を家に招き入れるわけないだろう」


「学院内でするのではないのですか?」


「なぜ家庭教師を学院でしてもらわないといけないんだ。家で落ち着いて勉強するに決まっている」


「綾様は中等部となられています。年が近い男性を家庭教師とするのはいいとは言えません」


 断られたのが悔しかったのか俺に詰め寄ってくる。


「そんなことお前に言われなくても分かっている。もういいか、家庭教師は樫木に頼むのであってお前に頼んではいない。樫木待っているぞ」


「畏まりました」


 樫木はおどおどしながらも断るつもりがないようだ。


 俺が部屋を出るとすぐに「お前どういうつもりだ」とか「替わってくれ」とか声が聞こえるが後は樫木が対応するだろう。


 俺はそのまま帰宅して綾の部屋を訪ねる。


「綾今少しいいか?」


「あら、お兄様どうされたのですか?」


 綾は部屋でちゃんと勉強をしていたようで、俺が来て勉強を放り出せて嬉しそうだ。


「綾はこの前樫木が来ていた時に家庭教師をお願いしたいと言っていただろう」


「えぇ、樫木さんはいつも上位にいらっしゃるって聞いたから教えてもらえたら嬉しいと思って。来年は葵が中等部になるでしょう。


葵にはとても勝てないと思うけど、差があり過ぎても恥ずかしいから」


 葵が1つ違いで居てくれて助かったかもしれない。同い年ならどうせ無理だと一生懸命にならなかったかもしれないし、年が離れていたらここまで頑張ろうとしなかっただろう。


「そうだな。もう少し順位が上がる方がいいだろう。それで今日樫木に家庭教師の話をしておいた。授業時間や給与面で納得してもらえば家庭教師を受けてもらえるはずだ」


「まぁ、本当ですか!?樫木さん優しそうだから、優しく丁寧に教えてもらえると思うから嬉しいわ」


「俺も綾が勉強する気になって嬉しいよ。今度の土の日に樫木が来るから、綾がどんなところが分からないかなど話し合っておくといい。


問題集などはこちらで用意するので、分からないところを樫木に聞く感じになると思う」


「どう進めていくかは樫木さんと話し合って決めますね」


「分かった。綾に任せよう。16時に来て話し合ってからになるからそのつもりで待っていてくれ」


「分かりました。ありがとうございますお兄様」


 俺は綾の頭をくしゃくしゃっと撫でる。


「もうお兄様。撫でてもらって喜ぶほど幼子ではありませんよ」


 綾はぷんと怒って髪をすぐに直す。


「ごめんごめん。綾は僕にとっていつまでも可愛い妹だからね」


「いつかお兄様に淑女になったと言わせてみせますから」


「楽しみにしている」


 綾の部屋を後にして執務室に行く。


「どうでした?」


「喜んでいた」


「では対の可能性が高いですね」


「凛様や穂高様が帰宅したらお伝えしておこう」


 凛様達はいま地方に行っているので知らせるのは帰ってからになる。


晄が纏めた資料と共に報告するが、早々に対が見つかったかもしれないことに喜ばれるかは分からない。


「凛様が急かさないように玲がそっとしておくように言っていたことも一緒にお伝えした方がいいです」


「分かった一緒に伝えよう」


 凛様は予想外のことをすることがあるので、綾のために大人しくていてもらおう。


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