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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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葵5歳 梅月-1

 見たこともないほどのたくさんの色の着物が広げられている部屋に私は驚きなにも声が出なくなった。


「葵、さぁこっちに来て顔に合わせてみて。どんな色が似合うのかしら?」


 千桜ちはるさんは「どれがいいかしら」と言いながら着物を広げていく。


 私は恐る恐る部屋に入り、キョロキョロとしたけれど、どうしたらいいのか分からず固まってしまった。


「葵ったらこっちよ」


 千桜さんが鏡の前に私を連れて行き、持っていた着物を私に羽織らせる。


 淡い珊瑚色の着物は私に似合っていなかった。


「これは違うわね。こっちは?」


 私はただ立っているだけで、千桜さんに言われ傍に居た女性があれやこれと合わせて行く。


 間で後ろをちょっと見てみると、違うと言った着物を畳んで片付けている女の人もいた。


 なんだか忙しそうで、「もうこれでいいです」と言いたくなったころやっと千桜さんが決めた。その着物は明るい赤色で鞠や季節の花が沢山書かれた綺麗な着物だった。


「よし、これでお茶会に来ていく着物が決まったわ。帯や小物は後で合わせておくわ。やっぱり女の子は楽しいわ。あれこれ着せられるもの」


 千桜さんはうきうきと楽しそうだけど、私はどっと疲れてしまった。


 こんなことで明日のお茶会?大丈夫かしら?


 彰吾さんがお茶会と言っても、綾と言う女の子と楽しくお話すれば大丈夫と言ったけれど本当にそれだけでいいのかしら?


 千桜さんから解放されて、私の部屋だと言って連れて来られた場所に戻る。


 部屋に戻ると千佳がいてホッとした。


「葵様お疲れさまでした」


「千佳すごく沢山着物があったの。お母様より沢山持っているのかも」


「そうですね。東条家では代々着物も継いでいかれるそうですから、葵様からだとおばあ様やそのお母様の物もあるのではないでしょうか」


 今朝起きた時にはこんなことになるとは思わなかったから、いろいろありすぎてふらふらしてきた。


「今日はいろんなことがありましたからね。夕食までお昼寝しましょう。夕食の時綾様のこと彰吾様や千桜様に聞かれるといいですよ」


「そうします」


 私は布団に寝ころんだらあまりのふかふかに感動して、しばらくコロコロしながら一日を思い出した。




 今日は朝食後に彰吾さんが来てから本当に嵐のようだった。


 珍しく来客があったので千佳が玄関へと出たが、すぐに部屋に戻ってきた。


「葵様にお客様ですよ」


「私に?」


 私にお客様が来るなんておかしい。私は外に知っている人がいないもの。

「はい、織江おりえ様のお兄様です」


「お母様のお兄様?お母様に用があるのじゃなくて私なの?」


 お兄様がいたことも知らないし、なんで私に用があるのかしら?


「はい、葵様にお願いがあるそうです。とりあえずお話を聞いてみられると分かると思いますよ」


「そう……聞いてみます」


 千佳と一緒に玄関に向かうと、そこにはお父様より背が高く若そうな男の人が居た。


「こんにちは葵。僕のこと覚えている?」


「ごめんなさい。分かりません」


 会ったことがあると言われても本当に知らない。


「そうだよね。会ったの小さい頃だもの。思ったより小さいかも。葵は普通ぐらい?それとも小さいの?」


 男の人は私の傍にしゃがみこんで私に聞いてきたけれど、比べたことが無いから分からない。


「えっと……」

 

 答えに困っていると千佳が変わって答えてくれた。


「葵様は同じ年の子供より小さく細いと思います。もう少し食べさせてあげられるといいのですが」


「今渡している分で足りてないのか?藤波にも会社からの給料が出ているから十分足りていると思っていたが、今度から増やすからちゃんと食べさせて」


「かしこまりました。藤波は1はくも家に入れていませんし、これからも入れないと思われます。増額して頂ければきちんと食べさせてあげられますし、もう少し着物も良いものを用意できますのでよろしくお願いします」


「藤波は何をしているんだ。自分が生活する分ぐらい家に入れれば十分だろうに。了解きちんと増額しておく」


「すぐにお茶の用意をしますのでこちらにお掛け下さい。いつまでもお客様に勧めもせず申し訳ありません」


「いいよ。じゃあ葵座って話そうか」


 男の人は私を抱き上げ、椅子まで運んで座らせてくれた。


「まずは自己紹介から。僕は織江の兄で東条彰吾。葵からいうと叔父さんだね。葵は僕にとって姪」


「おじさん?めい?」


「分からなかったら、織江の兄だと覚えていて。彰吾って名前もね」


「お母様のお兄様で彰吾様」


「そう、でも様は他人行儀だな。さんでいいよ」


「彰吾さん」


「うん。今日は葵にお願いがあって来たんだ。僕の知っている人のお嬢様とお話して遊んで欲しいんだけどできる?」


「お嬢様とお話をすればいいのですか?同じぐらいの年の人ですか?私同じぐらいの年の人と話したことが無いんですけど、大丈夫ですか?」


「あれ?忘れちゃったのかな?それならしょうがないな。葵より1つ年上かな。たぶん仲良くできると思うよ。きっとおいしいものも食べられるし、綺麗なものも見せてもらえるかも。お願いできるかな?」


 美味しいものも綺麗なものもいいなぁと思うけど、うまくお話しできるか分からなくて答えられない。


 私が答えずにいると彰吾さんが「葵も綺麗な着物とか着られるよ」と言ったので思わず「行きます!」と答えてしまった。



読んで頂きありがとうございます。


明日からはお休みなのもあり、12:00頃になります。

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