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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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葵11歳 梅月

 東条家に来ている間にもリル語の勉強をしようと、貰った辞書や栞先生に覚えておいた方がいい単語を書き出してくれたものをもとに綴りを覚えていく。


綾が言っていたように本当に難しい。


「葵お茶にしない?」


 千桜さんがわざわざ私の部屋まで来てお茶に誘ってくれる。


「はい」


 千桜さんが私の机の上の物を見て驚く。


「葵リル語を勉強しているの?」


「はい……貴祥様が勉強した方がいいと言われたので……」


 あれ?貴祥様は彰吾さんと相談して家庭教師をつけてくださると言ったのに千桜さんは知らないのだろうか。


 千桜さんは難しい顔をしてリル語の本を見ている。


「千桜さん?」


「あっ、お茶に誘ったんだったわね。食堂でお茶にしましょう」


 千桜さんは笑ってくれたけど表情が硬い。


「先に座っていて。お茶の用意をしてくるから」


 いつもなら侍女にお任せしてしまうのにそう言ってどこかへ行ってしまう。


 侍女がお茶を持って来てくれてもまだ千桜さんは戻って来ず、先に1人でお茶をするわけにもいかず目の前のお茶が冷えていく。


 やっと戻ってきたと思ったら彰吾さんと一緒だった。


 侍女はお茶を入れなおしに行き、彰吾さんは私の隣に、千桜さんは彰吾さんの向かいに座る。


「千桜から聞いたけど、葵リル語を勉強しているの?」


 なぜ彰吾さんが知らないのだろう。


「貴祥様が勉強した方がいいと言われて、家庭教師の費用が掛かるから彰吾さんと相談して決めますと返事をしたら、貴祥様が彰吾さんと相談すると言ってくださったんです。


すぐに家庭教師の栞先生がいらっしゃったから彰吾さんとお話が出来たと思っていました」


 彰吾さんは眉間にしわを寄せる。


「そうだったかな。忙しくしていた時に聞いたから忘れていたよ。


それに僕は葵がリル語を勉強するより東条家にいる時間が少ないのだから僕や千桜とお話したりして欲しいと思っているんだ。


まだ初等部なのにそんなに頑張らなくてもいいと思うよ」


 貴祥様も千佳も無理はしてはいけないと言うけれど、勉強しなくてもいいとは言わない。


 貴祥様のお話で今から勉強し始めることにしたのに、彰吾さんにそう言われるとしてはいけない気がしてくる。


「でも……」


「貴祥様はまだ葵が初等部なのをすぐに忘れてしまっていけない。葵が無理をして倒れたらどうするんだ」


「私が決めたことですから」


 彰吾さんに貴祥様を悪く言われるのはなんだか嫌だ。


「どうしたの?なにか問題でも起きたの?」


 彰吾さんと私が深刻そうに話していたので、おばあ様が声を掛けてきた。


「母上何も問題はないですよ。葵がリル語を今から勉強しているのでそんなに頑張る必要はないと言っているだけです」


 彰吾さんは何を話していたのかを説明しただけなのに、急におばあ様の顔色が変わってしまう。


「なによ今更!あれほど好き勝手して結婚までして。子供も自分育てられず押し付けて、自分はのうのうと生きて。


自分は何もせずに私に迷惑を掛けておいて、今度は優秀な子を見せつけるようにこちらに来させてリル語の勉強までして。


なぜ彰吾の子じゃなかったの?なぜあの子の子が彰啓よりも優秀なの。どれだけあの子は私に恥をかかせればいいの」


 おばあ様は私をキッと睨みつけ手を挙げた。叩かれる!と思い目をつむる。


「母上止めてください」


 彰吾さんがおばあ様の手を取り止める。


 動きは彰吾さんに止められても口までは止められない。


「こんな子東条家に来させないで!藤波に居ればいいじゃない!」


「母上それは出来ません。綾様の友人で神子様と仲良くしている可能性のある子を手放せないことは母上もご存じでしょう!千桜部屋に連れて行って」


 千桜さんは私を見ることもなくおばあ様を自室へと連れて行った。


 彰吾さんは苦笑いをしながら私の隣に座り直した。


「ごめんね。織江は母上にいろいろ迷惑を掛けたから、その分が葵に向かってしまった。


もう言わないように言っておくから。僕たちは葵のこと本当の子のように思っているから東条家に今までのようにおいで」


 彰吾さんは私の頭をなでなでした後、仕事があるからとさっさと執務室へ戻っていった。


 ぽつんと一人残され、仕方なく自室に戻る。


 あれほど怒るだなんて、お母様はおばあ様に何をしたのだろう。


最初に会った時から距離を取られている気がしていたけど、今日のことで理由が分かった気がした。お母様が好きじゃないから私のことも好きじゃないのだろう。


 千桜さんがリル語を習っていることをわざわざ彰吾さんに伝えたのも、おばあ様が言われるように私が彰啓より優秀なのが気に入らなくて、その上リル語を勉強し始めたのが気に入らないからなのだろう。


「千佳。私リル語を勉強しないほうがいいのかしら?」


 東条家でお世話になっているのだから、東条家の方に逆らわない方がいいのかもしれない。


 リル語の家庭教師も彰吾さんに話しても反対してお金を出さないと分かっていたから、相談さえしていなかったのだろう。


「いえ、せっかくですから続けましょう。ただ東条家でリル語を勉強するのは止めておいた方がいいと思います」


 貴祥様から言われたし、私がすると決めたのだから続けたい。


「そうします。間でリル語を勉強したら気分が変わって勉強が進むかもと思ってしているだけだから、学院での授業の勉強だけにしておくわ」


「はい。おばあ様のことは葵様は気になさらないでください。織江様とおばあ様の間のことで葵様には出来ることはありませんから。


親しくするのは難しいので、近づき過ぎず普通にしていてください」


 おばあ様とは今までも親しくできていなかったのでこのまま変わらずいればいいだろう。


 先ほど飲めなかったので千佳が入れなおしてくれたお茶を飲み、今度はリル語ではなく勉強を再開した。


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