表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
82/461

関川栞 柾月-1

「なにを言っているのお父さん」


 私は思わず父に聞き返したが、父の真剣な顔を見て本当だと分かった。


「でもなんで末家の娘がリル語を習う必要があるの?」


「さっぱり分からない。でも北条貴祥様からの頼みなのでできれば受けたい。うちは五条様筋なので北条家とはつながりが薄い。


なぜ末家の娘のことを北条家が頼んでくるのか分からないが、栞が受けてくれれば細くとも繋がりが出来き仕事に広がりが出るかもしれない」


「なぜ習うのか分からないけどやるわ。給料もいいみたいだし。もちろん家計に入れるけど少しは私のものにしてもいいんでしょう?」


「まぁ、(しおり)がきちんと教えるようになったら考えよう。俺の方でも藤波家のことを調べておくから、栞の方でも家に行った時分かったことがあれば教えてくれ」


「分かったわ。もし私が少しでも嫌だと思ったら止めてもいいでしょう?」


「すぐには難しいと思うが、荷が勝ちすぎると言ってお断りしよう。北条様も無理やり行けとはおっしゃらないだろう」


 断っても良いのなら安心だ。真家は末家だとしても庶民としては恐ろしい存在だ。


真家は頼れる存在で、本家の方々が目を光らせているので末家だとしても庶民に酷いことはなさらない。


それでも怒らせれば取引を止められるし、それを周りが知れば手を引かれてしまう。


 私が藤波家の方を怒らせるようなことをすれば、父の仕事がどうなってしまうのか分からない。とりあえず様子を見ながらやっていくしかないだろう。




 緊張しながら藤波家に伺うと、女性が出て来て対応してくれた。


「初めまして関川(せきかわ)栞と申します。本日はお嬢様のリル語の先生として伺うよう北条家から言われてまいりました」


「お待ちしておりました。葵様はお部屋でお待ちです」


 女性はすぐに部屋に向かおうとするので慌てて止める。


「申し訳ありません。葵様のお父様に挨拶をしなくても大丈夫でしょうか?」


 女性はきょとんとした後、にこっと笑った。


「こちらには葵様のお父様はいらっしゃいませんし、お母様は体調が悪く寝込んでおいりますので挨拶する必要はありません」


 お父様がいらっしゃらないって。母親が再婚していても挨拶は必要になると思う。


 私が不思議そうにしたのが分かったのだろう、女性は「詳しくはお部屋でお話しします」と


 2階へと上がっていってしまうので、急いで後について行った。


「葵様先生がいらっしゃいました」

 部屋には肩ぐらいの髪でとても可愛らしい女の子がいらっしゃった。


「初めまして関川栞です。北条家からリル語の先生をするよう言われてまいりました」


 まだ初等部に通っているだろう女の子にここまで丁寧に言う必要があるか分からないが、彼女の性格が分からない限り丁寧にしておいて損はない。


「初めまして東条葵です。リル語は全く分からないので、先生のご迷惑をお掛けするかもしれませんがよろしくお願いします」


 彼女はそう言って庶民の私にも頭を下げた。


 ちょっと待って。彼女藤波ではなく東条って言った?


「あの、藤波様ではなくて東条様ですか?」


 不敬になるかもしれないが確認しておかなければ対応が全然違う。


「はい。東条です。お母様が彰吾さん、東条彰吾さんの妹で私は姪になりますが、事情があって東条の子となりました」


「葵様は北条貴祥様の許嫁です。ご結婚された後リテリア国の方との会話にも不自由しないよう今から勉強することになりました。日常会話以上の会話もできるようにしたいと思っていますのでよろしくお願いします」


「千佳、来たばかりの先生に許嫁だって言わなくても。言いふらしているみたいで恥ずかしいわ」


 先ほどから教えられることが凄すぎてどうしたらいいのか分からない。事情があって東条家の娘となっていて、この年で北条貴祥様の許嫁って。


私がリル語を教えるので本当にいいの?本家の方なら他にいい先生がいただろうに。


 私が混乱している間も2人の話は続いている。


「申し訳ありません。貴祥様より許嫁だと言うことも成人するまでには日常会話以上出来るように伝えて欲しいと言われていたものですから」


「貴祥様に言われていたの?……あの先生。栞先生と呼んでもいいですか?」


 急に私に振られて慌てる。


「あっ、はい。栞と呼んでください」


「まだ先のことなので、私が貴祥様の許嫁だと言うことをここだけの話にしてくれると嬉しいのです」


「仕事の都合もあると思いますので家族にだけ伝えても構いませんか?」


 葵様は千佳と呼ばれた女性を見た。


「まずありえないですが念のため家族だけにしてください。家族にも言いふらさないようにお願いしてください」


「分かりました」


「では栞先生よろしくお願いします。そうだ、彼女は千佳と言って私の侍女です。侍女と言っても母のようでも姉のようでもある大切な人なんですよ」


 末家の女の子に専属の侍女って普通なのかしら?上席ならいそうだけど、藤波は末席だったはず。


「私の主人は葵様ですが、北条家から遣わされているものです。葵様の勉強の進捗状況も北条家に報告させて頂きますのでよろしくお願いします」


 末家の娘に侍女を1人つけるだなんて、父に調べてもらう必要があるが本当に許嫁なのだろう。進捗状況が報告されるなら私のことも報告されると思ったほうがいい。


「どこまで教えられるか分かりませんが、精一杯やらせて頂きます」


 受けたほうが本当によかったのか父と相談する必要があるが、今はそう言うしかない。


 それに無理を言いそうにないお嬢様だし、給料も良いので自分に出来る限りしてあげたいと思う。


「栞先生よろしくお願いします」


 恐る恐る始めた授業だったが、素直にこちらが教えることを聞き真剣に取り組む姿を見て、いやいやではなく頑張ろうとしているのが分かり好感を覚えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ