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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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玲8歳 桂月-5

 しんみりとしてしまった空気を換えるように馨が私に振る。


「僕はもう終わったから今度は玲だね。嵯峨野さんお願いします」


「かしこまりました。玲様のはこちらになりますね」


 嵯峨野さんは今度は色とりどりの洋服を広げる。あまりにもいろいろあるので目がちかちかしそうなほどだ。


 一度には見られないので馨が買ったシャツに近いブラウスを見ることにした。


 自分に何が似合うのか分からないので、馨に選んだものに近いものにした。


 両方とも淡くて、ローズピンクは可愛い小花の刺繍が胸元に入った物と、ベイビーブルーで襟にレースの縁取りがあるものを選んだ。


「馨これ似合うと思う?」


 馨は時間が掛かるものだと横で本を読んでいて、私が選ぶのをちっとも見ていなかった。


「玲は何を着ても似合うけど、より可愛くなると思うよ。でもこれは外出着じゃないの?」


 馨に言われるまで普段シャツを着ないことを思い出さなかった。佳那も止めたりしなかったので気にせず選んでしまった。


私の普段着は何かの時にそのまま寝ても苦しくないものを選ぶので、飾りのない肌触りがいいワンピースや浴衣が多い。


ブラウスは自動的に外出着だ。着る機会がないなら買えないかもかもしれない。


「そうですね可愛いですから、貴祥様と会うときやお散歩の時に着ましょう」


 佳那が着て聞く機会を言ってくれてよかった。せっかく選んだのに買えないなんて寂しい。


 お散歩のとき着られるなら馨と一緒に着たい。


「じゃあ、今度今日買ったものを着て散歩してくれる?」


「同じ時にピンクを着ないって約束してくれるならいいよ」


 ちょっとしたいと思っていたのに先を越されてしまった。


「……それでもいいから散歩してくれる?」


「絶対に一緒に着ないからね。玲が着ていたら着替えるから。それならお天気がいい日にお散歩しようか」


 なぜか一緒になったねで誤魔化そうとしたけど駄目だった。


「どうしてもだめ?」


「どうしてもだめ。玲と一緒に着たら余計に女性に見られて、きっと貴祥さん達に笑われるから駄目」


 それなら一度笑われるか、貴祥様に笑わないでってお願いしたらいけそう。


「いろいろ考えているみたいだけど、絶対に一緒に着たりしないから」


「玲様諦めましょう。何度か着て慣れればいけるかもしれませんが、今はまだ難しいと思います」


「佳那さん聞こえていますよ。あんまり言うならもう買わない!」


「馨様そう言わず買ってください。玲様もほどほどでお願いします」


 ここまで頑固に嫌がるならもう難しい気がしてきた。


「じゃあほんとに一緒に着たりしないから、馨がピンクの時は私は水色にするからお散歩して」


「……それならいいよ」


 馨がなんとか怒りを収めてくれたので、今はこれ以上はお願いしないことにする。


「じゃあお天気の日はお散歩で決まりね」


「はぁ、早く鍛えてこんな色が似合わないぐらいになるといいんだけど」


「えっ、馨鍛えるの?お父様やお兄様みたいに?そんなの嫌!絶対に鍛えて欲しくない!」


 お父様もお兄様も警備の人のようには筋肉が付いていないけど、馨より体が大きい。


 それなのにお兄様はもう少し筋肉が付けたいって言っていた。


 細身の馨があんな感じになるだなんて嫌だ。


「玲。鍛えないと玲を守れないし、体調が悪い時運べないよ」


「鍛えなくていいもの!私自分で歩くから。馨鍛えないで!」


「馨様、晄様や貴祥様のようになりたいと思う気持ちは男としてよく分かりますが似合いませんよ」


「馨さんそれは駄目よ、駄目。そんなの馨さんじゃないわ」


「ほら、皆もそう言っているから鍛えちゃ駄目!」


「えぇ~只でさえ筋肉が付きにくいみたいなのに鍛えないと全然つかないよ。玲も成長するし運べないと困る」


「じゃあ、それだけなら大丈夫。それだけにして」


「……晄さんと相談してから決める。なにかいい方法を知っているかもしれないから」


「私からお兄様にお願いしとくわ。馨を鍛えないでって。私から言えばお兄様は絶対叶えてくれるもの」


「酷い玲!そんなこと言ったら絶対鍛えてもらえない!」


「まぁまぁここで言い合っても答えは出ませんから、晄様に相談されてから決めましょう。晄様ならいい案を思い付くかもしれませんから。


私いいものをお持ちしたんです。それでお2人とも機嫌を直してください」


 嵯峨野さんは2人を止めて、鞄から箱を出してきた。


「どうぞ開けてみてください」


 嵯峨野さんに言われ箱を開けてみると、円形の焼き菓子が入っていた。


「なんですかこれは?」


「アップルパイといいます。中に砂糖で甘く似たりんごを入れて焼いたものです。


タルトのようですがパイと言って、何重にも層になった生地で挟んであるのでサクサクして美味しいですよ」


 それはおいしそう。


「佳那切って。佳那も食べましょう」


 私がそう言うと佳那は喜んだけど、残念そうに言った。


「私が食べていいものではないです」


「なら僕と半分にしましょう。甘いならそんなに食べられないかもしれないから、半分佳那さんが食べてください」


「佳那さんもどうぞ」


「そうですか。そこまでおっしゃるなら」


 今度は佳那はすごく嬉しそうにして切り始めた。


 私の分は食べきれるように普通のタルトより小さめで、馨と佳那が私より少し小さい大きさで切られ出してくれる。


「美味しい!サクサクでりんごはじゅわっとしておいしい!」


「本当においしいですね!玲様・馨さん分けてくださってありがとうございます」


「美味しいですね。でも甘さが強いので僕にはこれくらいの量で充分です」


「玲様気に入られたのならもう少し食べられますか?」


「食べたいけど夕食が食べられなくなるから……」


「明日も食べられると思いますよ」


 嵯峨野さんがいいことを教えてくれたのでもう少し貰うことにした。


「なら明日同じぐらいまたみんなと食べて、それでも残る分は綾や皋様にあげたら喜ばれるかしら?あっお母様やお兄様も食べたいかも」


「皆様に分けられたら喜ばれると思います。そうですね樹様達までは厳しいかもしれません」


「大丈夫です。先ほど綾様や皋様にも同じものを食べて頂けるよう渡しております。今は凛様もいらっしゃるので皆様で食べてくださると思いまして」


「ならお母様にあげて」


「畏まりました」


「玲様温めると美味しいそうです。明日は温めてもらってはどうでしょう。もしあるのならバニラアイスを乗せるといいそうです」


 なんだろうその悪魔のささやきは。


「佳那!」


「分かっております。ぜひ温めてもらってアイスを添えましょう!」


 馨には若干引かれてしまった気がしたけど、美味しいものの前ではそんなことは小さいことだ。明日アツアツのアップルパイを食べるのが楽しみで仕方ない。


 おかげで馨に鍛えて欲しくないと言っていたことをすっかり忘れていた。


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