玲8歳 桂月-3
一週間たち体調も落ち着いた頃私に荷物が届いた。
贈り物は馨や佳那がくれたことがあるけれど、私に荷物が届くだなんて初めてなので嬉しい。
送ってくれたのは嵯峨野さんだった。佳那が開けようとしたのをお願いして自分で開けさせてもらった。
中には手紙とラブロの焼き菓子の詰合せが入っていた。
手紙は難しい漢字が多くて佳那に読んでもらった。
「お詫びの品って、嵯峨野さんに謝ってもらうようなことないと思うけど」
「馨さんを北美にと言われた時、玲様が泣いてしまったのでそのお詫びですよ」
「もしかして後で馨に怒られたのかしら。馨怒ると怖いから。貴臣様にも怒れるのってお父様か馨ぐらいじゃないかしら」
「そうですね。貴臣様を怒れる馨さんは凄いと思います」
馨は決して怒鳴ったりしないのに、ものすごく静かに淡々と言うけど恐ろしいのだ。
「帰ったら馨に聞いてみないと。嵯峨野さんが嫌がって見せてくれなくなると困るもの」
「そんなことは無いと思いますよ。嵯峨野は商人ですから」
「そう?でも馨に聞くわ。焼き菓子の詰合せも見せて一緒に食べたいから」
「分かりました。帰宅に合わせてお茶の用意をしておきますね」
「早く帰って来てくれるといいけど」
「こればっかりは学院が終わらないと帰れませんから」
「そうよね」
すぐに食べられないのは残念だけど、馨と一緒に食べたほうがおいしいに決まっている。
見ていたら食べたくなるから、佳那に仕舞っておいてもらって私は自分の勉強をすることにした。
早く帰って来て欲しいという願いは叶わず、いつも通りの帰宅になった馨を捕まえてお茶にする。
「馨見て!嵯峨野さんがラブロの焼き菓子を送ってくれたの!一緒に食べましょう」
「どうして嵯峨野さんが送って来たの?」
「お詫びの品ですって。馨後で嵯峨野さんに怒ったでしょ。きっとそのせいで送って来たのよ」
「確かに少し言ったけれど怒ってはないよ。あれは僕も悪かったと思ったから。
たぶん嵯峨野さんは玲が泣いてしまったことで、貴祥さんに叱られ担当を外されるか、最悪首になると思ったんじゃないかな。
でも玲が嵯峨野さんにまたと言ったのもあって怒られただけですんだんだよ」
「馨は何も悪くないわ!それに冗談が分からなかった私が悪いの。佳那も怒らなかったぐらいのものだったんでしょう?」
馨は体を私の方に向け私の手を取り見つめ、先ほどまでの和やかな雰囲気ではなく真剣に話し始める。
「そうだね。僕が行かないと分かったうえで言ったことだし、僕もすぐに断って終わりになったと思う。
だから僕が悪かったんだ。僕が玲にずっと傍に居ると約束したのに、少しのことで不安になるぐらい伝えていなかったんだから。
だから覚えていて。僕はこれからも決して玲の傍を離れたりはしない。誰に何を言われようともそれは変わらないし、変えることはないから。
そして玲も少しずつ覚えていって。今まで玲をよく知る人たちばかりと話していたけれど、これからは初めて玲に会う人も少しずつ増えていく。
僕たちは玲を閉じ込めておくつもりはない。部屋の中から家の中に出て行けたように、外の世界にも人を通じて慣れていく必要が玲にはあると思う。
玲や僕を始め皆で玲が外に出て行って戸惑い迷うことに慣れていかなければいけないんだ。玲が外出できるように一緒に慣れていこう」
もちろんいつかは外出したいと思う。その為なら、馨が一緒にいてくれるならできると思う。
「馨が一緒にならできると思うわ。ずっと私の傍に居てくれるのでしょう」
「あぁ、ずっと傍に居る。さぁ、話が長くなってお茶が冷めちゃう。クッキー僕も食べていいの?」
馨は真剣に答えてから、笑って私の頭を撫でた後急に話をクッキーに戻した。
「いっぱいはダメよ。お茶冷めたのなら佳那に入れなおしてもらう?」
「勉強していると冷めきったのも飲むし、佳那さんは夕食の準備で忙しい時だから大丈夫。玲はどれを食べるの?」
そうだった。馨の帰宅を待ったのでお茶の時間にしては遅かった。
「夕食が食べられないと佳那が心配するからクッキーを2枚だけにしとくわ」
パウンドケーキやマドレーヌも入っていて食べたいけど、今食べると夕食が少ししか入りそうもない。
「そうだね。今日は体調もよさそうだし夕食は食堂で食べる?」
私が食堂で食べられるときは、綾や貴祥様も一緒にとったりするので女中たちには片付けが一度に済むと喜ばれているらしい。
たまにだけれど貴臣様達まで来られるので賑やかな食卓になる。できるだけ食堂で食べるけれど、月に数度しか食べられない。
「今日は食堂で食べるわ」
「じゃあ伝えておく」
馨は部屋の外にいる家僕か侍女に声を掛けに出る。
佳那や汐田さんは2人の夕食の準備中で台所にいるだろうから他の人に伝言を頼む。
やはり外に誰か居たようで、馨はすぐに部屋に戻って来た。
話が戻ってしまうけど、心配だったので馨に聞く。
「嵯峨野さんまた来てくれるでしょう?」
「来るよ。嵯峨野さんは優秀な外商だからね。玲が気になってもそっとしておいてくれたりするのは流石だし。
あれぐらいのことで変えていたら優秀な人をすべて失ってしまうよ」
「ならいいの」
それから夕食まで今度嵯峨野さんが来たら見せて欲しい物の話をして過ごした。




