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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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玲8歳 桂月-1

 馨が洋服を新しくしていると聞いて、私も自分で選んでみたくなった。


「佳那私も自分で洋服を見てみたい」


「玲様がご自分で洋服を見るのですか?まぁ、是非見て頂きたいですが貴祥様に許可を頂けないと難しいと思います」


 佳那は嬉しそうにしたが、難しそうに言う。


「なら、貴祥様にお願いするわ」


 私は椅子から降り、部屋を出て行こうとしたら佳那に止められた。


「待ってください。今の時間でしたら貴祥様は学院に行っておりますから、帰宅を家僕から教えてもらえるようにします」


 自分が学院に行かないのですっかり忘れていたが、今は確かにいらっしゃらない。


「帰られたら貴祥様にお願いするから、絶対に教えてね」


 今日は体調が悪くない。今日の内にお願いしておかないと先延ばしになってしまう。


「分かりました。馨様も学院に行ってらっしゃいますので、大人しくしていてくださいね。そうでないと貴祥様にお願いできませんよ」


「分かっているわ。新しい本を読みながらちゃんと大人しくしています」


 貴祥様が出かけられない私の為にと、綾に買った本を葵の後で貸してもらっている。


 綾はほぼ読まないので、今では綾のためという名目で買い、葵と私が読んでいる。


 葵はどんどん難しい本を読んでいるので、私が読む本が溜まる一方だ。


 ちゃんと勉強をしたり、気分転換に新しい本を読んだりしながら貴祥様の帰宅を待つ。


 すっかり本に夢中になっている時、佳那が貴祥様の帰宅を教えてくれた。


 いいところなだけに残念だけど、忙しい貴祥様の時間をわがままで邪魔をしてはいけない。


 佳那に乱れた洋服を直してもらい、貴祥様の元に急ぐ。


 佳那に教えてもらった通りにまずドアをノックする。


 ちゃんと叩いたはずなのに、本当に小さい音しかしなかった。これでは貴祥様は気が付かないと思う。それなのにドアが中から開いた。


 開けてくれたのは男性だったが、すぐにドアから離れ私が部屋に入れるようにしてくれた。

 それでも男性が怖くて入れない。


「玲そんなところで立っていたら風邪をひいてしまう。早く入って。崎守は部屋から出ていろ。佳那がいれば十分だ」


 貴祥様は私を部屋に招きいれ、すぐに男性を部屋から出す。


「ありがとうございます。今日は貴祥様にお願いがあってきました」


「佳那から聞いている。玲まず座って。佳那お茶を」


 佳那がすぐに貴祥様に珈琲を、私に紅茶を出してくれた。


 貴祥様が珈琲に口を付けてから私に促した。


「で、お願いは何?」


「あの、馨が洋服を自分で選んだと聞いたんです。それで私も自分で選んでみたくて、私も自分で選んでもいいですか?」


「玲も女の子だな。南条が喜んでいたぞ、玲が洋服を選びたいというほど元気になったと。


僕も玲が元気になって洋服に興味が沸いたこと嬉しく思うから、是非やるといいと思うが、佳那と馨がいなければ許可は出来ない。佳那は玲の洋服を選ぶのに必要だし、馨は嬉しくて倒れないか見ていてもらわないといけないからな。


馨には玲から頼んでくれよ。女の買い物は長いというから、僕からお願いすると文句を言われてはいけない」


 最初から馨には私が自分でお願いしていてもらうつもりだったから何の問題もない。


「ありがとうございます。馨には私が自分でお願いします。どこに出かければいいですか?」


「玲洋服を選ぶのに出かけないよ。玲は出かけたかったの?流石に外出は許可できない」


「えっ?でも、洋服は家にないですよね?それとも私が知らないだけですか?」


 私は家の中とはいえ、行く場所は限られていて知らない場所も多い。


「いや外商が持ってきてくれるんだ。似合いそうな服を嵯峨野がここに持ってきて見せてくれる。玲は初めて会うから、佳那が買っていた物を参考にしていろいろ持ってくるはずだよ」


「そうなんですね。外出はいつかしたいですけど、それよりも先に洋服が選びたいです。外出しなくてもいいなら、少し体調が良くなくても見られますよね」


「見られませんよ玲様。嬉しくて体調を崩しそうなのに少しでも体調が悪いなら見せられません」


「佳那そんなこと言ったらいつまでたっても見られないわ」


「それは馨に聞いて決めるといい。嵯峨野とは佳那でも連絡が取れるから佳那と馨に予定を決めてもらうといい」


 それもそうだ。私はすぐに大丈夫と言ってしまうから、体調のことは私より馨の方が皆に信用されている。馨が大丈夫だと言えば佳那は反対しないだろう。


「そうします。貴祥様許可して頂いてありがとうございます」


「玲お礼を言われるようなことじゃないよ。そもそも洋服を自分で見ることは年頃になれば自然とし始めることだ。許可すらいらないんだから。

綾なんか随分早くから洋服選びを始めたぞ。馨や佳那の言うことを聞いて楽しむといい」


 綾が衣装のことが好きなのは知っている。綾が夢中になることなのだからきっと楽しいに違いない。


「はい、楽しみにしています。貴祥様時間を取って頂きありがとうございます」


 許可が下りればこれ以上邪魔をしてはいけない。今度は馨にお願いしないといけないし、挨拶をして部屋を後にした。


 佳那が汐田さんから馨は帰宅し、自分の部屋で勉強していると教えてもらった。


 私はノックもせずに馨の部屋に入る。


「馨お願いがあるの!」


 馨は教えてもらった通り机で勉強していた。でも私は気にすることなく馨の元に行きお願いする。


「玲、僕は分かるけど他の方の部屋にノックもせず入ってはいけないよ」


「そんなことしないわ。今日もちゃんと貴祥様の部屋に入る前にノックしたもの。ちょっと小さくて聞こえなかったかもしれないけど、ちゃんと開けてくれたわ」


「ふふ、それは崎守さんが廊下で玲の姿を確認してから部屋に戻り、わずかな音も聞き逃さないように気を付けていたから開けてくれたんだよ。


今度はもう少し強く叩くようにしようね。それでお願いってどんなこと?」


「えぇ今度はちゃんと分かるように叩くわ。馨にお願いわね、馨みたいに私も洋服を選んでみたいの。馨にも一緒に見て欲しいし、馨がいないと見てはダメって貴祥様に言われの。いいでしょお願い」


「嵯峨野さんが来られるので付き合って欲しいそうです。もちろん私もご一緒しますよ。玲様とお洋服を選ぶなんて楽しいこと他の誰にも譲りませんから」


 馨は私の顔を見て頷いた。


「そうだね。今日は力を受け取ったばかりだから体調がいいと思うけど、また悪くなるだろうから。……そうだなぁ次の次の休みの日なら嵯峨野さんに来てもらっても大丈夫だと思うよ。


その後で寝込んじゃうだろうけど、それは先延ばしにしたところで変わらないだろうから」


「次の次の休みね!馨絶対空けておいてね!」


「分かっている。ついでに自分の普段着を見ようかな。すこし窮屈になって来たんだ」


「嵯峨野には馨さんの分も持ってきてもらえるよう伝えておきます」


「玲もう部屋に戻って休まないと嵯峨野さんに来てもらう前に寝込んで先延ばしになるよ」


 せっかく楽しみなのに部屋に戻るのは嫌だけど、馨が言うのなら寝込んでしまうのも嫌だ。


 私は馨の腕の服をつかみお願いする。


「馨も一緒に部屋にいるなら部屋で大人しくしているわ」


「いいよ、先に戻っていて。勉強道具を纏めてから行くから」


「は~い」


 私は馨がいてくれるならそれで構わない。


 こうやってしょっちゅうお願いするので、馨は眠るとき以外の家にいるほとんどの時間を私の部屋で過ごしている。


その為私の部屋には私には必要がない大きさの机がちゃんとあるので、馨が沢山本を広げて勉強できるようになっている。


 私がベッドに入る頃には馨が勉強道具を持ってきたので、本の続きを読みながらゆっくりと過ごす。


こんな時は最初に会った時のように、話もせずページをめくる音や馨が書いている音だけが室内に響く。


2人ともお互いを感じるけど邪魔をすることもなく、たまに休憩とばかりに話をしたりするこの時間が好きだ。だからしょっちゅうお願いしても聞いてくれるのだと思う。


たまにこっそりと勉強中の馨を見る。馨には内緒だ。こうやっていつまでも一緒に居られることが私をより安心させる。


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