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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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馨13年 桂月-1

 急なことになったけれど金森さんに知らせ、玲の体調がほどほどでベッドで寝ているけれど悪化しない時を選んで橘の家に来てみると本当に何もなかった。


 大きな家具も日用品もすべてだ。がらんとした家はあの温かな雰囲気だった家とは違って寒々しかった。


「馨様驚かれたでしょう。本当にすべて持って行ったので」


「こんなことだろうと思いました。僕が持っている形見は事故の時見に付けていた物ばかりで、自宅にあったものはほぼ持ち出せませんでしたから」


「売れそうなものは片っ端から売るか自宅に持ち帰ったんでしょうね。あまり厳しくすると馨様が恨まれてはと渚様が黙認するように言われたんです」


「それであっていたと思います。それに僕が残しておいて欲しいと思ったものは残っているはずですから」


「そうだといいのですが……」


 高城さんは周りを見渡しながら呟く。


 借りたいと言っていた沢渡(さわたり)さんはきょろきょろとしながらついてくる。


中も一度見たそうだが、その時はゆっくりと見られなかったらしく、気になることがあればどんどん聞いてくる。


「馨様そういえば鍵がかかって開かなかった部屋があると聞きましたが、鍵はお持ちですか?なければ壊さないと開かないようなんです」


 がめつい親族も南条家の者がいる前で鍵を壊したりは出来なかったようだ。


「持っていますから壊さないでください。遺品の中にあったので急いで回収しました。その部屋にあるものが僕が欲しかったものなんです」


「それは何ですか?」


 高城さんも興味が沸いたのか聞いて来た。


「両親が仕事で使っていいた資料や書類です。売り先さえ見つかれば高値で買ってもらえたと思いますが、親族は見つけられないと思ったんですが、どうしても残しておいて欲しかったんです」


 父の書斎に向かうと鍵はかかったままで開かない。


 僕は鍵を取り出し回すとカシャリと開いた。


 高城さんも沢渡さんも興味津々で見守っているけど、開けたらがっかりすると思う。


 そぉっと開けるとそこにはあの日出かける前のままだった。


「なんですかこれ?」


「だから父の仕事で使っていたものです。父は自動車の研究をしていて、リル語を解読するための辞書や駆動力に関する資料など会社だけではなく休みの日までしていましたから」


「ほかにどんなお宝があるんですか?」


 高城さんは換金できそうな物がこの部屋に残っていると思っているが、一般的に売れそうなものはない。


「目の前の物がお宝です。父の会社か対抗する会社に持ち込めば買い取ってもらえたかもしれませんが、親族はそんなこと考えもせず燃やしたでしょうね」


 酷くつまらなそうにする2人を部屋の外に置いて僕は部屋の中に入り資料を見る。


 そこには父の癖のある字で細かくあれこれ書いてある。いつも背中を丸め本や資料を楽しそうに見ているのを横で見ているのが好きだった。

大人しく見ているだけなので、追い出されることもなくずっと飽きるまで見ていた。


 本棚にも難しい本がたくさん並び、今見ても難しくてよく分からない物も沢山ある。


 ずっとこうしてみていたいけど時間が沢山あるわけではないので、忘れないようにじっと見て覚える。


「馨様ここの資料はどうされますか?北条家に運びましょうか?」


「全部運んでも問題ないんですか?ちなみに母のもありますけど」


「とりあえず空いている別棟に運んでしまいます。それからゆっくり馨様がみて処分にするか残しておくか決めてもらえばいいそうです。


馨様が全部置いておいて欲しいと望むならそれでもかまいません。別棟に入りきらないほどは流石に困りますが、この状況ではそんなことにはならないでしょう」


「それは、嬉しいです。すぐに処分するものを選べませんからどうしようかと思ったんです。もしかしてできるだけこの状態を別棟に移してほしいという希望も叶ったりしますか?」


「できる限りになりますが」


「それで構いません。僕も手伝いますので」


「それはいけません。できればこちらに来られるのは今日限りにして頂きたいのです」


 高城さんは申し訳なさそうにだが、でもはっきりと言った。


「そうですよね。沢渡さんが借りられたらまず来られませんし、警備の方が一緒でないと無理ならお手を煩わせてしまいますよね」


「いえ、警備は問題ありませんし、沢渡は見たいと言えば入れてくれるでしょう。来て欲しくない理由は親族が接触する可能性を限りなく0にしたいからです。


馨様には申し訳ないですが、あの人たちを本家の方々に近づけたくないと警備は考えています。馨様が嫌がっても親族を私たちは力ずくでも追い出します。


馨様はそんな姿を見たくはないでしょう」


「別にかまいません。両親が亡くなるまでほぼ絶縁状態でしたし、彼らにされたことは忘れていません。近づいて欲しくないぐらいです」


「ならよかったです。実は今も追い返したんです。どこから聞きつけたのか、それとも近所の者に頼んでいたのか見に来まして。


馬車があるのは貸し出すことに決まったので整理に来たのだと教えたら、それなら自分たちに貸してほしかったと、今からでも自分たちが借りられないかとしつこく聞いてきまして」


「それは借りると言って入って、お金がないと払わず住み込むつもりなんでしょう」


 僕があっさりと言ったせいか、高城さんや沢渡さんはなんとも言えない表情をしている。


「沢渡さんご迷惑でなければ、今日動かしてもらう分以外はどのように使って頂いても処分して頂いてもかまいませんので早めに引っ越してきませんか。赤の他人が住めば親族も近づいてこないでしょう」


「あぁ~。たぶん探りに来ると思いますよ。どんな関係かやいくらで借りたかとか、自分たちが借りたいが変わってもらえるか、馨様に連絡がつけられないかとかいくらでも考えられます。


でも全部沢渡にやらせます。こんないい物件に住めるのですからやらせます」


「そんなにいい物件ですか?7~8年ぐらい住んでいますよ?ご迷惑をお掛けしますから家賃安くしましょうか?」


 僕の言葉に沢渡さんは嬉しそうにしたが、すぐに高城さんに止められた。


「家賃設定は金森さんがすでに決めて契約書も作っていますので変更できません。ここは築浅になりますし、広さも立地もいいのです。


見に来たり聞いた者で家を買いたいと思っていたものは狙っていたんです。それを金森さんにいち早く声を掛けた沢渡に権利があるので皆金が折り合えなければいいと思っていますよ。


沢渡が駄目でもすぐに見つかりますから値下げする必要はありません。まだ持っていなければ私が欲しいぐらいです」


 やっかみもあって高城さんは沢渡さんに厳しいようだ。


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