馨13歳 梶月-1
貴祥様に呼び出しを受けて数か月したころ晄さんに呼ばれた。
「来たか馨」
「僕に用があると聞いたのですが」
「そうだ。これからは馨に家僕を付けることになった、汐田だ。何度か付けたから知っているだろう」
「汐田さんは貴祥様にお仕えするために選んだのではなかったのですか?」
汐田さんはこの数か月貴祥様付きの家僕を決めたいから感想を聞かせて欲しいと僕に付けられていた家僕の一人だ。
中には親族を思い出させる家僕もいて、僕はそれを正直に晄さんに伝えてしまった。貴祥様をそんな目で見ないだろうけど、貴祥様付の家僕にするのには問題があると思ったからだ。
「貴祥様付の家僕は貴祥様自身が選ばれるよ。相性もあるからね。馨に貴祥様付にするからと言ったのは、そう言わないと馨は正直に言わないと思ったからだよ。
ちなみに馨が親族を思い出させると言った家僕には辞めてもらった。これから仕える者をそんな目で見るような家僕は本家に入らない。
心配しなくてもちゃんと紹介状は持たせた。ただ正直に書いたから妻や娘がいる家には難しいだろうね」
それはほぼ無理って言うんじゃないのだろうか。娘は居なくても妻はいるだろう。それとも一時でも本家に勤められた人間にはあるのだろうか。
晄さんに聞いても教えてくれないだろうから後で巧さんにでも聞いてみよう。
それよりも僕に家僕を付けるだなんて断らないと。
「晄さん僕に家僕は必要ありません。着替えも身支度も今まで自分でしていましたし……」
「本家のものとなるものがそれでは困る。今から慣れておいてもらわないと」
「僕は本家の者にあたりません。特待生で見てもらっているだけです」
「この先本家の者となるんだ。馨は玲の体調管理ができるのだろう。当主同士で話し合っていたが、馨を玲の許嫁とすることに決まった」
「僕を玲の許嫁ですか!?ほかの分家の方とかの方がいいのでは?」
玲と出会ってすぐは玲の傍に居るためには結婚が一番だと思ったし今もそれは変わらないが、玲との結婚が難しいことはすぐに理解した。
ではどうすれば玲の傍に居られるのかは分からないが、玲が結婚できる年齢までにはまだ時間があるのでそれまでに思い付けばいいと思っていた。
「玲を南条家から出す気はない。今でも住居は北条家だが、玲は南条家の子だ。神子様となる玲を分家に嫁がせたりはしない」
「なら本家のどなたか……」
「貴祥様はもう対がいらっしゃる。西条も東条も年が違いすぎるし、本家同士の結婚は認められていない」
「そうは言っても神子様とご結婚したいと本家の方は望まれますよね。例外として望まれれば断りにくいのでは」
「あぁ望むだろう。だから今すでに玲の傍に居ることができ体調管理まで行ない、南条家から出すことなく結婚でき、特待生となれるほどの馨が許嫁に最適だとされたのだ」
「それだけで本家からの結婚を断れますか?」
「十分なほど断れる。玲がどうも大人の男性が苦手なようで、今でも東条も西条も当主でさえほぼ玲と会えていない。
親族以外で馨ほど傍に居られる者が他に居ない。貴祥様でさえ調子が良い時でなければ会えないのにだ」
これ以上何を言っても変わらないだろう。
「分かりました。玲がそれを望むなら僕は受け入れます」
「すでに玲は望んだも同然だと思うよ。最初に会った時にずっと傍に居て欲しいと言われたのだろう。馨もそれを望んだと聞いたがまぁいい、家僕に話を戻そう。
そういう理由から家僕を付けるのは分かったな。早く慣れるように。許嫁として覚えてもらわなければならないことはたくさんある。困ったときは汐田に聞きくように」
「分かりました。汐田さんよろしくお願いします」
「私に敬称も丁寧語も必要ありません。汐田と呼んでください」
「それは難しいと思います。佳那さんも呼べたことがありませんから」
「お互いよく話し合って良い関係を築けるなら敬称はどちらでもいいよ」
お互いに譲らなそうな雰囲気を感じ取った晄さんが止めに入った。
忙しいからと晄さんに追い出されてしまった僕と汐田さんは僕の部屋へと移動した。
それから汐田さんにどうしていけばいいのかいろいろ聞いた。しなければいけないことだらけで、これから北条家に来る前以上に忙しくなりそうなことは間違いなかった。
まず洋服がいけないらしい。
「馨様は顔立ちが整っているおかげで何を着られても似合われますが、玲様の許嫁となりますともう少し良い品を着て頂きたいです。
所作も綺麗ですが、もう少し早く食べられても、話しながら食べられても同じように出来なければいけません」
所作は皆が綺麗に食べられるので恥ずかしくて気を付けるようにしていたので助かった。
洋服のことは家僕たちと一緒に北条家に来た店から買っていたがそれではいけないらしい。




