晄17歳 椿月-2
なぜ僕じゃないんだ。なぜ俺が玲の体調管理をするのではいけないんだ。これでも兄で次期当主なのに。なぜ馨に頼らなければいけないんだ。
「馨はやはり玲の対でしょうか?」
俺では駄目だった理由が馨が玲の対である場合なら納得できる。どうやっても俺が玲の対になることはできない。
出会ったばかりの母が馨は玲の対だろうと言ったことに父も「おそらく」と言っていたが、僕だけ認めなかった。
対とはそういうものだと分かっていても、会ったばかりの女のような人間を認めたくなかった。
「間違いなくそうだろう。これからは馨を玲の対として扱うことにした」
「貴臣様や貴祥様の許可は得ていますか?」
いくら親だとはいえ、玲のことは貴祥様の許可が必要になる。
「これから貰うつもりだ。決定は貴祥様がパーティーでのことを馨から聞いてからになると思うが、間違いなく許可はでるはずだ」
「馨の家僕となる人間を人選しておきます」
「頼んだぞ」
無言で父と珈琲を飲み、お互いどちらが口を開くか様子を伺っていたが、父からは言いにくいだろうと俺から言うことにした。
「玲の子が南条家当主となるでしょう」
「お前はそれでいいのか?お前がまだ小さい頃に言っていたことは気にしなくてもいいぞ」
父がそう思うのは当然だと思う。宮比神様の力を受け取る玲の子を当主としないはずがない。
「はい。玲が男の子を産んだならぜひ南条家当主に。僕に子供が出来ても女の子しか出来ない気がします」
「玲がそんなことを言っていたのか?」
玲が先見をしたのならもっとはっきりそう言った。何となく自分の子は女の子だけだろうと思うだけだ。
「いえ、そんな気がするだけです」
「そうか。お前がそう思うなら多分そうなるだろう」
南条家当主は恐ろしく勘が良いと言われている。昔北条家当主と南条家当主が一代限り入れ替わったのも、表向きは性格的に表に出るのが苦手だったとしているが、この勘の良さが北条家の方に現れたからだ。南条家ではこの勘をご神託だと言われている。
なぜ南条家がご神託を受けられるのかは、南条家は北条家当主が行う神事の前後で神事を行う。前後を含めてやっとすべての神事となる。
このことは北条家当主にさえ教えることではない。北条家の替わりを南条家が出来ても、南条家の替わりは誰もできない。
「馨が玲の対と決まれば、神事を馨に覚えさせたいと思っているが、お前はどう思う?」
南条家当主の替わりは次期当主以外できる者がいない。この千年当主が早くに亡くなることもなく途切れることなく当主が勤めてきた。
それでももしもの時に備えて初等部に入学すると同時に神事を手伝い覚えることを求められる。まずは形だけを。高等部に入学すれば意味合いを教えてもらえる。
もしそれまでに当主が亡くなれば当主のみが開けられる金庫の中にある書物を読むように言われる。
「馨が玲の対なら教えるのは問題ありません」
せっかくの機会だ、自分のことも話しておく。
「母が幼い頃より『自分の子が持てなくてもいいと言ってくれる子と結婚しなさい』と言っていました。俺もそれで探したほうがいいと思うので、結婚できるのは遅くなると思いますが、必ずしますので心配しないでください」
「その心積りでいよう」
根強く結婚して一人前だと思っている大人ばかりだ。男も成人すれば早く結婚するように言われる。俺もそろそろ周りから言われ始めるだろうが、家族にまで早くしろとうるさく言われたくない。
この日は思ったより深い話が父と出来て良かったが、馨のことはまだこれからだ。
まだ認めたくない気持ち半分認めるべきだと思う気持ち半分で臨んだ馨の呼び出しだ。
父と相談の上、父は怒りをあらわにしていないとおかしく思われるので、俺が気配を消して陰から立ち会うことにした。




