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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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馨12歳 杷月-1

 体調の悪さをどうすることもできず、ふらふらと北条家の庭を歩く。


 本当にこれであっているのかさえ分からないが、これ以外方法が分からないので駄目もとで来てみると確かにそこにその木はあった。


 安堵と体調の悪さから木に手を付きずるずるとその場にしゃがみこんでしまう。


 少しでも楽になるのをそのままの体勢で待っていると本当に楽になってきた。


 それならと木に凭れるとするすると少しずつだが吐き気やだるさ楽になっていく。


「はぁ~」


 僕は大きくため息をついて全身の力を抜いて目をつむって身を任せる。


 どれぐらいそうしていたか分からないが、男性が話しかけてきたことで僕は目を開けた。


「お前そこで何をしている?」


 不審者が入り込んでいると思ったのだろう。かなり警戒しながら僕に近づいてきた。


 立ち上がって説明できればいいが、もうしばらくこうして居たほうがいい気がする。


「すみません。怪しい者ではないんですが、もう少しこうして居たいんです」


 これでは怪しい人間だと言っているようだ。先ほどまで体調が悪かったのと眠っていたのを無理やり起こされたような感じでぼんやりしていたのが良くなかった。


「お前……不審者にしては木に凭れて動かないし、一目見たら忘れない美人だし服もいいものを着ているようだし。……お前もしかして玲様がお願いして来た男の子、か?」


「その男の子だと思います。橘馨といいます。すみませんもう少しこのまま居させてください」


「……それはいいが。ちょっと待っていろ。いや待っていてください」


 敬語は必要ないと言いたかったのに、彼はさっさと立ち去ってしまった。しばらくすると何やら荷物を抱えて帰ってきた。


 彼は大きな布を僕の隣に広げ僕をひょいと持ち上げその上に座らせ、毛布を広げ僕に掛けてくれた。


「どういう理由か聞きませんが、こんな場所で地面に座り込んだら冷えます。用が終わったらあそこの小屋にいますから声を掛けてください。体が冷えてしまっているでしょうからお茶でも入れます」


「はい」


 とりあえず聞きたいこともあるが聞かないでおいてくれるようでホッとした。


 許されることではないと分かっているのでとても人に説明できるとは思えない。


 でもいつかは渚様達に話さなければいけないことだとは思っている。ただ今すぐには出来ないだけ。


 男性と話してからもうしばらく凭れているとこれ以上は意味がないと分かったのでゆっくりと立ち上がる。


 ここに来るまでの体調不良はすっかり治りふらついたりもしない。大丈夫なことを確認してから、地面に直接座ってしまったので洋服の汚れを叩き、掛けてもらった毛布を畳んでいると先ほどの男性がやって来た。


「そんなもの放っておいて下さったらよかったのに。さぁ冷えたでしょう。俺が入れたお茶で申し訳ないが飲んで温まってください」


 男性は急いで毛布や敷物を畳み抱えて小屋へと戻ってく。


 小屋は庭仕事の道具が綺麗に片付けてあり、その片隅に机と椅子があり休憩にも使っているようだった。


「こんなところで申し訳ないが座ってください」


 僕は腰掛けながら「敬語は止めてください。僕は大人の人に敬語を使われるような人間ではありませんから」とお茶を入れている男性に言った。


「本当ならいけないんだろうけど、そう言うのなら許してもらおう。敬語は慣れなくて、ただえさえ会話が苦手なのに余計に話せない。俺は梅本(うめもと)(たくみ)、北条家の庭師をしている」


 梅本さんは僕にお茶を出し、向かいの席に腰を下ろした。


「庭師さんでしたか。もしかして仕事の邪魔をしてしまっていたんでしょうか?」


 出してくれたお茶を飲むと温まり、随分冷えていたことに気づかされた。


「いや大丈夫だ。今日しなければいけないことではないから」


 やはり今日しようとしていた仕事が出来なかったみたいだ。


「邪魔してしまってすみません」


「気にしなくてもいいから。それよりも木の下で座っていたのは今日限りのことか?それともまたしそうなことなのか?」


「多分、いえ絶対にまたします。頻度はどれぐらいになるかまだ分かりませんが、度々座っていることになると思います」


「立って凭れているのではいけないのか?」


「座っている方が楽です。もう少し分かってくれば立っていても大丈夫かもしれませんが当分は座っていると思います。なにぶん今日初めてのことで分からないことだらけなので」


「分かった。今日は急ごしらえで用意できなかったが、菜緒に言って敷物も毛布ももっといいものを用意してもらおう。この小屋に置いておくので必要な時はいつでも持っていけばいい。ここの鍵は仕事終わりでないと閉めないからいつでも開いている」


 梅本さんから菜緒さんの名が出て驚く。


「菜緒さんを知っているんですか?」


「えっ?あぁ、菜緒は嫁だ」


 ちょっと恥ずかしそうに梅本さんは教えてくれた。


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