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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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玲7歳 桃月

 今日はやっと馨が北条家に来る日だ。


 久しぶりに体調が良く食堂で朝ごはんも食べられたし、身支度もきちんとできた。


「佳那馨もう着た?」


「玲様流石にまだ早いですよ。このままだと来るまでに玲様は寝込んでしまいそうですね。……玲様ベッドに入って本でも読んで待っていてください。大人しくしていないと今日馨様に会えませんよ」


「それは嫌。ずっと待っていたんだもの今日会いたいわ。ちゃんと大人しくしていたら会えるでしょう」


「はい、玲様の体調が悪くない限り会えますよ」


 私は読みかけの本を持ってベッドに入った。佳那は布団を掛けなおしてくれ、背中に痛くないように背もたれ用のクッションを差し込んでくれる。


「お昼前には来られて、お昼ご飯も一緒に食べられるそうですから」


「お昼は私の好きな物?馨は何が好きかしら?」


「ではお昼ご飯は玲様の好きな物にしてもらいますね。馨様の好きな物は会ってお聞きすればいいですよ」


「そうするわ」


 私は読みかけの本を広げ読み始めるが、部屋の外が気になってなかなか読み進められない。


 チラチラとドアの方を見ながら読み進める。


 1階が賑やかだと思っていたら、ドアがノックされお兄様の声が聞こえてきた。


 馨がとうとうやって来たんだ。佳那がドアを開けるとお兄様が見えた。お兄様はいいから馨がいないか気になる。佳那が大きくドアを開けるとやっと馨が見えた。


ずっと会いたかった馨がいる!馨が中を覗き込んで私を見つけるとにこっとして泣きそうな顔をする。だから私は笑って馨を迎えた。




 馨はわざとお兄様と反対側のベッド横に来てくれた。そして私の横のベッドの上に座り、大きく腕を広げて待っていた私を優しく抱きしめてくれた。


「玲別れてからずっと早く会いたかった」


 抱きしめられていることで馨の声が耳元でする。


 私も背中までは手が届かないけれど、抱きしめ返し応えた。


「私もずっと待っていたの」


 そうすると私から女神様の力が溢れて馨の中に少しずつ吸い込まれていった。


 私は止めることもできず、流れるままにした。


 お兄様が横で「馨なにしているんだ!すぐに離れろ!」とか叫んでいるけれど気にしない。


 すぐに佳那がお兄様を連れ出したので、そのまま馨に抱きしめられる。


「玲僕のことを話してもいい?」


「聞かせて欲しい」


 初めて力を受け取っているのだろう馨はぼんやりとしていて、ひどくゆっくりとたまに話すことを止めてしまったけれど、すべてを私に話してくれた。


 馨の両親のこと。仕事のことやどんな人たちだったのか。


 最上に通っていた間のこと。


 私たちが合う数日前に両親を亡くしてしまってあの孤児院にいたこと。


 親族にすべてを取られそうになったこと。自分も売られてしまいそうになっていたところで、私がお父様にお願いしたことで助けられたこと。


 そこでお兄様を追い出し戻って来ていた佳那が慌てて馨を止めた。


「そんなこと玲様には分かりませんし、話す必要がないことです」


 佳那の声にゆっくりと顔を上げて私を見つめて応えた。


「今の玲には分からないことあると思う。もし先で気になれば何度でも僕に尋ねていいよ。ちゃんと分かるまで説明する。玲には僕のすべてを知って欲しい」


 馨の顔は私の顔のすぐ傍にあり、ほんの少し馨の顔が傾けば私の顔に当たってしまうのではないかと思うほど近かった。それほど顔が近くても馨の顔は美しかった。


「分かったわ。気になれば必ず馨に聞く。私のことも知って欲しい。お兄様から後で聞くと思うけど、分からないことがあれば私に聞いて」


「分かった。必ず玲に聞く」


 こうやって話している間も力が馨に吸い込まれ、そしていつの間にか自分へと帰ってきていた。それもそのまま返ってくるのではなく、例えるなら馨の香りがついて返ってきていた。


 そして香り付きの力を私に残っていた力と合わせてまた馨に送っていた。


 お互いにすべてを知ることも含め、それは私たちにとってとても大切な儀式だった。


 話し終わる頃、少し馨に残したままやっとその力の動きが止まった。


 馨もそのことに気が付いたのか、抱きしめていた腕が離れ、そっと私の唇に指先が触れそしてお互いはやっと離れた。


 馨がもう立とうかとしたときお兄様が怒りながらやって来た。


「いつまで僕を待たせるの!?もうお昼ご飯の時間になっているのにまだ呼びに来ないだなんて!いつまで抱き合っていたの!佳那ちゃんと見ていたんだよね!?」


「晄様申し訳ありません。傍では控えさせて頂きましたがとても見ていられませんでした。何もありません。馨様が自分のこれまでのことを話していただけです。そのことで報告させてください」


 佳那はお兄様を部屋の外に連れて行こうとした。お兄様は佳那に部屋から連れ出されそうになりながら「玲体調がいいならお昼ご飯一緒にとろう。用意していて」と声を掛けていく。


「は~い」


 佳那が見ていなかったのなら2人だけの秘密だ。嬉しくて馨を見ると馨も嬉しそうにほほ笑んでいた。


 部屋の外の話が長くなりそうなので、ベッドからゆっくりと降りる。


 馨と会うために外出着を着ていたので着替えたりはしないが髪をとかしたりしたい。


 鏡台の前に立って困っていると馨が助けてくれた。


「どうしたの?……髪を梳かしたいの」


「そうだけど、佳那がいないから」


 今までずっと佳那にしてもらっていたので、自分で髪を梳いたりしたことが無いので困った。


「僕でよかったら梳かすよ。どの櫛ですればいいの?」


 馨は私を椅子に座らせてくれた。馨はいつも梳かす時に佳那が使っている椅子を傍で見つけ、私の後ろに置きながら聞いてきた。


「これでいつもしてもらっているの」


「分かった。痛かったら言ってね」


 私が鏡台にあった櫛を指させば、馨は櫛を取って先ほどの椅子に座り梳き始めてくれた。


 私の髪は癖がありすぐに絡まりやすいので佳那も苦労しているけれど、馨は優しく梳き始めてくれた。部屋の外からぼそぼそと話声は聞こえているのでもう少しかかりそうだ。


馨は縺れている時には、髪を持って痛くないようにしてくれた。


「こんな感じでどう?」


「馨ありがとう。素敵になった」


「そう?よかった」


 微笑んでくれる馨は本当に綺麗だ。


 馨が手を取って立ち上がらせてくれ、部屋の外へと出る。


 まだ話し込んでいたお兄様と佳那が気が付いた。


「玲様。身支度もしないでお部屋を出てはいけません。すぐに整えましょう」


「大丈夫馨が髪を梳いてくれたから」


「まぁ、それは申し訳ありません。馨様もお手数をおかけして申し訳ありません」


「いえ、たいしたことではないですから。佳那さん、様は止めてもらえませんか?様を付けられるような人間ではないので」


「馨!なんで玲の髪を触っているの。ほんと油断ならないな!」


「お兄様私が頼んだの。お兄様馨のこと優しくしてあげて欲しいの」


「玲は馨馨って馨のことばっかり」


 お兄様は分かりやすく拗ねられてしまった。なんだか私失敗したみたい。


「ごめんなさい。お兄様にお願いしたらいつも叶えてくれたから。もう私のことでわがままを言わないから、馨はここに来たばかりだから不安だと思うから優しくしてほしくて。


私もここにきて不安だったから、お兄様が毎日のように来てくれたのが嬉しかったの。だから馨にも優しくしてほしくて」


「違うよ玲。もちろん馨には優しくするけど、僕も馨にばかり頼らないで、玲にもっとわがまま言って欲しいの!」


「えっ?私お兄様に頼ってばかりよ?」


 お父様達に言いにくい分、お兄様にはいつもわがままを沢山言っていると思う。


「そんなことない。いつもわがまま言わないで大人しく部屋にいるじゃないか。僕も玲にできることをしてあげたい」


「部屋に居ることはいつものことだから。お兄様が忙しいのに会いに来てくれるだけで私嬉しいから」


 お兄様は満面の笑みを浮かべ私の手を取った。


「わかった。時間の許す限り玲に会いに行く。玲も僕に頼みたいことがあったら隠さずに言うんだよ」


「ありがとうお兄様。ちゃんと頼みたいことがあったらお兄様に言うわ」


「忘れないでね。じゃあ、遅くなったらいけないからお昼にしようか」


 お兄様は取った手を繋ぎなおして食堂へと向かった。


 馨はちゃんと佳那が「ご一緒にどうぞ」と勧めてくれて一緒にとれることになった。


 昼食後は馨に会ったことで疲れているだろうからと、大丈夫だと言ってもベッドに寝かされてしまった。


 私が休んでいる間馨は、私が神子様なこと、覚えなければいけないことなどお兄様から聞く必要があるらしい。馨には早くても明日でなければ会えないと分かってがっかり。


 馨に会えないならと大人しくベッドにいるうちに寝てしまっていて、朝いちばんに馨が部屋に来てくれたことでいっぺんに元気になった気がした。が、それは気がしただけだった。


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