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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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晄16歳 桃月

 初めての外出を急に決め、それも玲にすれば遠出となるので皆でかなりひやひやとしながら玲の帰宅を待っていた。それぞれの仕事も手につかず、落ち着かない時間はなかなかと進まず貴祥様もまだかまだかと待っていた。


 無事に帰宅した時は貴祥様と共に出迎えたほどだ。貴臣様達も迎えたがったが、玲が疲れているだろうし、そっとしておいた方が良いだろうと我慢された。


 玲が帰宅したのに父は帰宅せずどうしたんだろうと思ったが、玲が無事に帰宅しているので各自普通に仕事に戻ったりしていた。


 僕も貴祥様と勉強していたところに父がやって来た。


「貴祥様報告したいことがございます。貴臣様のお部屋までお願いできますでしょうか?」


 父が貴祥様に報告することなど葵様か玲のことしかない。今日なら玲のことしかないだろう。それなら僕も聞きたい。初めて外出して玲に何かあったんだ。


「僕も一緒に聞きます」


 一緒に行くことを父に禁止されなければ一緒に行けたのに。


 僕が行くのなら貴祥様も行きたいと言われたが、急なことで警備の都合がつかなかったので貴祥様と残ることになってしまった。


 父は少し考えたが「かまわない」と認めてくれた。


 貴臣様の執務室に移動すると、そこには久我も居た。


 皆が座ったのを確認した貴臣様が口火を切った。


「南条報告とは?玲に何があった?」


 無事に帰ってきていたので、どんな問題が起きたのかちっとも想像ができなかった。


「はい。玲は孤児院で会った男性を傍に置いておきたいと望みましたのでその場で許可しました」


「どういうことだ!」


 貴臣様が烈火のごとく怒った。父は顔色一つ変えず詳細を話し始めた。


「今日出かけたのも彼と出会うために出かけたようです。彼と会い傍に居てくれることをお願いすると素直に帰宅しました」


「なぜ許可を出したんだ。玲に約束してしまったのならもう手の打ちようがないじゃないか!玲のことを一任されたのは貴祥だぞ。なぜいったん帰宅して貴祥の許可がいると玲に言わなかった!」


「父親として我儘を言わない玲の希望を叶えてやりたかったのです。一旦帰宅し許可を頂くことも考えましたが、多少条件がついたとしても、結局は許可が下りるだろうと考えました。


玲は許可を出さなければ帰宅しない様子でしたし、初めての外出と彼と出会ったことで感情が大きく動いているのは容易に想像できました。ここでもめるよりも少しでも早く玲を帰らせたかったのでその場で許可いたしました」


 父の判断は間違っていないと思った。玲がお願いしたのなら結局は許可が下りただろう。それならば早く帰宅させたかったと思って当然だ。でも、そう聞いてでも納得できないことがある。


「お父様、玲は幼い女の子です。それなのにどこの誰だか分からない男を傍に置くだなんてありえません!」


「そうだ南条。男性が苦手な様子の玲に東条も西条もまだ会えたと言えないのに、傍に訳の分からぬ男性を置くだなんてどういうことだ!?」


 貴臣様が怒っているのに、父はにやっと笑った。


「彼は私たちの間で話に上がった人間ですよ。中等部入学時に特待生となれた彼です。念のためその時の資料を読み返しましたが問題ありません。玲を帰した後彼から特待生になれたと聞いて思い出しました。


資料を見て貴臣様にもお見せしたはずです。両親が亡くなったことで孤児院に居たようです。親族と財産を含めもめていますが、すでに手は打っております」


「あぁ、確かに見たな。家柄はいまいちだが、なかなか優秀な者だった」


「久我も覚えているだろう。このまま特待生で卒業するのなら自分の部下に欲しいとまで言っていたじゃないか」


「覚えています」


 少し不機嫌そうに答える久我は、反対の様子で頷いていたのに急に賛成できないで困っているだけのようだった。


 父たちは分かっているようだが、自分にはさっぱり分からない。


「お父様どういうことですか?中等部入学時に特待生とかありえますか?」


「それは僕も見せてもらったがかなり優秀だな。僕と比べても遜色ないだろう」


 貴祥様はその時に資料を見せてもらえたのだろう。貴祥様がそうおっしゃるのならかなりだ。父は僕に資料を渡してくた。


「だから話題になったんだ。成績も優秀でお前よりもいいぞ。その上実技も抜群のようだ。今度から玲の傍に居るぞ、お前も頑張るように」


 資料を確かめると確かに僕よりもよく実技も良いとある。僕は特待生になる必要がないので受けないので不確かだが、もしかしたら特待生となれるのなら実技も僕よりもいいかもしれない。南条家次期当主としてよくやっていると褒めてもらっていただけに、その言葉は悔しかった。


「そうだとしても、男性嫌いの玲が傍に居させたがったなんてありえません」


「その答えは簡単だ。彼は絶世の美少女だ」


「お父様は何を言っているんですか?彼が絶世の美少女って」


 貴臣様も貴祥様も傍で不思議そうに首をかしげている。


「そのままだ。最初女性だと思った。それは声を聞いても動きを見てもだ。それなのに自分のような訳の分からない男を傍に置いてもいいと許可を出してもいいのかと尋ねられてやっと彼だと知ったんだ。玲が容姿だけで判断したとはもちろん思わないが、あの容姿だから傍に居て欲しいと願ったのは間違いない」


「そんなことあり得ません」


 それを聞いた父は大笑いした。


「お前も見ればわかる」


 気に入らない僕はふんと他所を見た。


 父は僕のことを気にもせず続けた。


「彼は玲のことを今もまだ神子だと知らず、父親も誰なのか知りもしないうちから玲に傍に居ると約束していました。そして彼の持っているもので最高のものを差し出したとしても傍に居たいと言いました。その覚悟を俺は買います」


「南条がそこまで言うのなら、会ってから再度話し合うことにしよう。今家柄も成績も分かっていても人柄までは資料だけで分からないこともあるだろう。南条が認めているが会うまではどんな条件を付けるのか保留にしたい」


 貴祥様が認めてしまえば許可が出たことになる。全然納得できないが諦めるしかない。精々条件を沢山付けられればいいが。


「ありがとうございます貴祥様」


 深々と頭を下げ貴祥様にお礼を述べる父を見ながらどうすればいいか考えた。


 貴祥様と部屋に戻り、玲が彼のことを何と言っていたのか知りたいと佳那を呼び出した。


「玲は彼のこと何と言っていた?」


「宮比神様が彼に会うように言い、那智が彼の元へと案内したそうです。彼は宮比神様が言うには容姿も心も最高で、玲様の傍に居て守り人として最高の方だそうです」


 僕は心底がっかりした。宮比神様が会わせた人間で、守り人として最高とまで言われる人間に条件など付けられるはずがない。


読んで頂きありがとうございます。



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