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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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馨12歳 椿月-2

 玲の姿が見えなくなってやっと衝動を抑えられたので男性に聞いた。


「僕が言うのもおかしいと思いますが、孤児院に居るわけも分からない男を玲の傍に居させるだなんて約束してもかったのですか?」


 男性は目を見開いて僕を見た後笑った。


「……僕?訳も分からない男?驚いたな君は男なのか?……くっははは。確かに君が言うのはおかしいな。男か、それでも玲があんなのこと言うことが無いので叶えてやりたい。


それに玲が言うのなら問題ない理由はあるが、今君に言えることではない。君のことはもちろん調べさせてもらう。同時に引き取る準備も始めるので、確認が取れ次第家に来てもらうのでそのつもりでいなさい」


「分かりました」


「君は僕が誰かも聞かないのか?それこそどこのだれか分からない男だぞ。賢い君ならたとえ男だとしても最悪どのような扱いを受けるかもしれないと分かっていて、今日みんなと一緒に居なかったのだろう」


 王家関係者や真家でもまれにそのような趣味の人間がいることは知っている。そしてそういうことを商売としている店があることもだ。


「そうですね。今は彼女の父親だと言うことしか分かりません。でも、彼女の傍に居られるのでしたら、あなたがどのような方でもかまいません。それに彼女の父親でしたらそうひどい扱いは受けないと思えましたので」


「そうか。玲の傍に居ることが先か。……私は南条(なぎさ)だ。君は?」


「ひぅ、っ」


 思わず息を呑んでしまった。本家の当主じゃないか。なぜ本家当主がこんなところに?


 疑問に思っても、先に答えなければ。


「失礼しました。橘馨と申します。お調べになる手助けとなりますよう、少し自分のことを話してもよろしいでしょうか」


「よい」


「ありがとうございます。では説明させて頂きます」


 きっとすべて調べ上げられると分かっているので、少しでも評価が下がらないよう自分ですべてを告げることにした。


 警備の者が運んだのか、ここにはない普通の大きさの椅子が持ち込まれており、そこに南条様が座られるのを待って話し始めた。


 自分は末家の末席の家の者であること。


 両親は数日前に乗合馬車の事故により一度に亡くしてしまったこと。


 父親はリテリア国の駆動力を調べ開発の仕事をしていたこと、母親は腕の良い調香師で重宝されていたらしいこと。


 おかげで末家の末席でも女中を雇い家事を助けてもらえるほどだったこと。


 だが、そのせいで両親ともの親族と疎遠になっていたこと、そして今は両親が残した財産をめぐってもめている為、自分が孤児院に居ることを話した。


「なぜ親族と疎遠に?そして孤児院に居ることになった?」


「両親は自分の仕事が出来れば満足でしたが、親族は真家に覚えが良い両親に自分たちの地位もあげてもらえるよう頼んでいたようですが、全く相手にしなかったこと。


お金の余裕がある両親に金の無心にきて、キリがないと貸してあげたことすらなかったことで向こうが勝手に付き合いを止めました。


それなのに両親ともに亡くなり、僕に家や土地、僕の学費などの貯金、そして保険にも入っていたので多額の保険金を狙ってやってきました。


それぞれがお金はすべて自分が欲しいと僕の取り合いになっています。誰が後見人になるか決まるまで面倒を避けるためこちらに入れられました」


 ここに入れられたのは、親族が手を出せば価値が下がると聞いて我慢しているが、夜中酔って手を出すかもしれないと恐れて入れられた。


価値が下がることもさることながら、自分が手を出していないのにと思うことが悔しいらしい。おかげで女の子としてここに連れてこられ、全く疑われることなく女の子の部屋に入れそうになり自分から話した。


 孤児院でも同じ心配をして結果幼い子の部屋に入れられた。お風呂も小さい子の面倒を見ると言う建前で幼い子たちと一緒に入っている。


「君が受け取るすべてを後見人となり奪うつもりか」


「そうです。後見人となりお金も土地も奪えたら僕は売られるそうです」


 南条様は片眉をあげ、顎に手をやった。


「君はそれを聞いて何もしなかったのか」


「最低限の荷物と両親の形見だけを持ってくることができました。それに明後日には真路で入学前の手続きをする予定です。その時に受け付けた方か、先生にでもどこか僕の引き取り先がないか聞いてみるつもりでいました。真路の特待生になれるようですから、真路の方も相談に乗ってくれるのではと思っていました」


「君は真路で特待生となったのか?」


 南条様は目元がピクリとしたが、何事もなかったかのように聞いてきた。


「はい、試験を受けた時はまだ両親が健在でしたので、受けてみるだけ受けてみてばと言われて、ものは試しと受けました。もし受かるなら特待生を取れれば両親に負担がないと思いまして頑張ってみました。今となっては頑張ってよかったと思いますが」


 真路では素行も調べられたうえ、成績優秀な者には真家に勤めることが条件となるが特待生になれる。特待生になれば学費はもちろん、学院での食事も学院で必要なものすべてを出してもらえる。


そして、特待生として高等部や院を卒業すれば本家に勤められることが決まっている。本家でどこまで上り詰められるかは自分次第にはなる。


 中等部入学時に特待生となれるのはかなり稀らしい。僕は成績もよかったが、実技も悪くないので取れたようだ。


 真路では王家の者や王家に仕える者も通うが、真家に勤めることが条件のため特待生にはなれない。ただ、成績が特待生ほど良くなくても、王家関係者でも真家が出している奨学金を受け取れるのでこちらを目指す方が多い。返済義務はあるが利息は安いので目指すものが多いらしい。


「特待生となったことを親族伝えれば売られる心配はなかったのでは?」


 僕は首を振って否定した。きちんと否定しておかなければ無能だと思われてしまう。


「親族のお相手をして、一生育ててやったのだからと無心されるだけです。どちらがましなのか分かりません。それならば庶民でも本家に勤めることができる真家が特待生をわざわざ潰すようなことが無いことに賭けました」


 南条様が大きく頷いたことで、合格点を貰えただろうことに安堵した。


「悪くない選択だ。末家の末席で君の年齢であれば、分家に話を持ち掛けるのは難しいだろう。確かに真路からそのような話があれば、どこか引き取り手があっただろう。優秀な人材をわざわざ潰す愚か者は真家にはいない。あぁ、すまなかった親族のことを悪く言ったか」


「いえ、親族は僕の成績のことなど気にしたことはありません。親族のことは自分とかかわらなければ、なんとも思っていませんので、たとえ死んでもなんとも思いません」


 親族の話は南条様が満足されたのか違う質問になった。


 覚悟はしたが、本家に勤める面接にあたると思うと手が震えてくる。ぐっと拳を握って南条様に知られないように後ろに手を持っていくことで隠した。


「君は特待生となってどうしたかった?親族を見返したかった?人を使う側の人間になりたかったのか?」


「今の時点では学費免除が一番でしたが、その先は両親のようにやりたいことが見つかった時にそれをあきらめずに済む気がしたからでしょうか。おかげで今見つかった気がします。玲の傍に居させてください」


「そうか、玲の傍に居ることが君のやりたいことか」


「はい、例え南条様の夜のお相手をしなければ玲の傍に居られないのであっても、玲の傍に居させてください」


 声が震えないように腹に力を入れて南条様を見つめ頼んだ。どうしても玲の傍に居たい。


 そのためならどんなことでもするつもりだ。


「君の覚悟は分かった。君がどれほど不安に思っていたのかも。この瞬間から君にそのようなことはさせないと真家の名に懸けて君に約束しよう。早々に北条家に入れるよう準備するので、そのつもりでいなさい」


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