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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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葵8歳 椿月

 今日は玲様に私が教えないといけないと思うと緊張する。


「千佳私ちゃんと教えてあげられるかしら?」


「大丈夫です。千桜様にも大丈夫だと言われましたし、葵様は平日も頑張って練習していたので、私も刺繍できるようになったほどです」


 いきなり玲様に教えるのは不安なので、千佳を相手に教える練習をしていたら千佳はあっさり出来るようになり、私よりも綺麗に刺繍するようになった。


「それは千佳が元々裁縫をしていて針とか問題なく使えていたからだわ。千佳もう私より綺麗に刺繍しているもの。玲様は初めて針を持たれるのよ。私で大丈夫かしら?」


「針などは佳那さんが教えている気がします。いくら何でも葵様にそこまで教えるのは難しいと思いますから」


 それもそうか。大切な玲様に私のような子供が初めてを教えるなんてとんでもないだろう。


「じゃあ、私は刺繍の最初からで大丈夫よね」


「はい」


 それなら少し気が楽だ。


 私はいつもより多い荷物を纏め、彰吾さんに送ってもらい綾の部屋に行くと、すぐに玲様もやって来られた。


「葵今日とても楽しみにしていたの。佳那からちゃんと針の使い方を教わったからすぐに刺繍出来ると思うの」


 玲様が嬉しそうに報告すると、綾は楽しくなさそうにしょんぼりしていた。


「私も唯から使い方を教わったのですけど、あまり楽しくなかったわ」


「綾様それは真っ直ぐに縫ったりしただけだからだと思います。花など刺繍するのは楽しいかもしれません」


 唯さんはぐったりとした様子で綾を慰める。唯さんにしては珍しいので綾に教えるのが大変だったのかもしれない。


 玲様を落ち着かせるためにも一旦お茶を楽しんでから刺繍をし始める。


「では花を刺繍するのでまず生地にこの図案を写してください」


 千桜さんから最初はいろんな縫い方を覚えたほうがいいけど、まずは刺繍が楽しいと思ってもらうために花を刺繍するのがいいと言われた。


 玲様と綾は佳那さんと唯さんに手伝ってもらいながら写す。


 私はその間に花に合いそうな色の糸を佳那さんが持って来ていた糸の中から探す。


「写せました!」


 玲様がバッと布を広げて見せてくれる。


「流石玲様綺麗に写せています。ではどの色で花を刺繍したいですか?」


「え~と、どれがいいかな」


 玲様は悩みながら薄桃色を選んだ。綾も写し終わったようで橙色を選んだ。


「では刺繍を始めましょうか」


 私がまず手本を見せる。


 布に枠をはめこみ刺繍を始める。


 「こんな風に花の中を埋めるように刺していくんです」


 2人にじっと見つめられるので恥ずかしいけど刺していく。


 一片刺し終わると2人に見せる。


「こんな感じです。何となくですけど分かりましたか?」


 玲様は何となくわかったのかさっそく佳那さんに聞きながら始めるが、綾は「もう一度」とお願いされ、今度は綾と一緒にする。


「ここはこうして」


 綾は私がするのを真似て刺す。玲様がたまに「これであっていますか?」と聞きながらさくさくと進める。


「玲様そこが終わりましたら休憩しましょう」


「は~い。これでよし。葵一片終わりました!」


 玲様が見せてくれた刺繍は私が初めてした刺繍より綺麗だった。


「うわぁ玲様凄いです。綺麗に出来ています」


「本当。うれしい!」


「本当に綺麗。私がしたのもなんて見せられないわ」


 綾は手元の布を見て嘆く。


「綾も綺麗に出来ていますよ。玲様が特別です。私も初めての時は同じような感じでしたもの」


「そうなの。……でも私には向いていない気がします。私は体を動かす方が好きみたい」


 綾は早々にもうしないと決めたようで、刺繍をしていた布を放り出してしまい、ぱくっとチョコレートクッキーを食べた。


「くすくす。綾は舞っている時とても楽しそうだもの。刺繍は出来なくてもいいと思うわ。刺繍は部屋で大人しくしていないといけない私がしたいだけだもの」


「そうですよね。私もう刺繍はしません。玲様や葵に任せるわ」


「玲様は本当にお上手なので、私も玲様にお任せしちゃいそうです」


「お任せされても困ります」


 玲様は慌てて私の腕を掴み「一緒にしましょう」とお願いされた。


「はい。私も玲様に負けないよう練習しますね」


それからは玲様はお疲れで出来ないので、本に書いてある刺繍のやり方を目の前で刺繍して見せてあげる。


「刺繍っていろんな刺し方があるのね」


「はい。多分私も一部しか知らないと思います」


 綾は自分ではするつもりはないけれど、どんなものか興味津々で見ていた。


 玲様は本と見比べながら真剣に見て、たまに「この刺繍のやり方は?」と聞いて来られるので慌てた。


「玲様それは私にも分からないので今度までに聞いてきます」と分からないものは正直に話し待ってもらった。


「はぁ、楽しかった。今度までに練習しておきますから見てね。この見本は貰ってもいい?」


 私の拙い腕でした刺繍を渡すのは恥ずかしいけどお渡しする。


「この本もどうぞ。私は家にありますから」


「ありがとう葵」


 玲様とお茶会をするようになって初めてぐらい高揚した玲様を見た。


 玲様は本と今日刺繍した布を大切に抱えてうきうきとしながら部屋に戻っていかれた。


「玲様大丈夫かしら?」


「夢中でしないといいのですけど。意外と眼とか疲れるんです」


「佳那さんが止めると思うけど、今度のお茶会は欠席されるかも」


 それは現実となり、よほど夢中でされたのか、2度ほどお茶会を欠席された。


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