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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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玲6歳 柑月

 佳那にいろいろ教えてもらうけれど、いつも優しいのに勉強になると厳しい。


「玲様この国の名前を憶えていますか?」


「もちろん!天那祇あわなぎ国でここは王都で那加津なかつというのでしょう」


「流石です玲様。ちなみに貴祥様や晄様のおじい様やおばあ様がいらっしゃる都市は伊那美いなみと言います」


「一緒に暮らせばいいのに」


 部屋は沢山あるのだから一緒に住んでも大丈夫だと思う。


「天那祇国は広いですから真家がきちんとお勤めを出来ているか見るために別に住まわれているんですよ」


「わざとなの?じゃあ私はおじい様やおばあ様には会えないの?」


「数年に1度ぐらいは王都に来ますからそのうち会えますよ。以前来られた時は玲様が寝込んでいらっしゃったのでお会いできず本当に残念に思われていましたから。おじいさま方にお会いした時褒めて頂けるよう勉強を続けましょうか。月は分かりますか?」


「え~と、桐月きりげつ椿月ちんげつ桃月とうげつ梅月ばいげつ柏月はくげつ桔月きつげつでしょう。それから梶月びげつ桂月けいげつ柾月まさげつ杷月はげつと……柊月しゅうげつ柑月かんげつ!」


 私は指を折りながら、一生懸命思い出しながら答える。


「大変よくできました。一年は桐月から始まり柑月で終わりますが、学院などは梅月からはじまり桃月で終わります」


「じゃあ梅月から私も学院に行ける?」


 途端に佳那は顔を曇らせった。


「申し訳ありません。玲様は学院には通えません」


「なんで?……どうして行けないの?」


 綾も葵も学院に通っている。私だって通える年になったらいけると思っていた。


 宮比神様からあまり楽しんでも悲しんでも駄目だって言われているけど私はただの人だ。


 我慢しようにも零れる涙が止められない。


 佳那は私を抱きしめて「理由をきちんとお話ししますから泣かないでください」と背中をとんとんと軽く叩いて私を落ち着かせる。


 いつものようにしばらくは涙が出るのに任せ、少し落ち着いたら難しいけど深く息をなるべくして落ちつけるようにする。


 時間はかかるけれどそれが一番心を乱さなくてすむ。


落ちついても佳那にしばらく抱きついていた。


 もう大丈夫と思ったので佳那から離れると、佳那は私の身だしなみを直し、お茶を入れてくれた。私がお茶を飲んでホッとすると、佳那が話し始めた。


「まず玲様は体が弱く、いまでもベッドから出られない日が多いのでとても学院に通えるとは思えません」


 それについては何も言えない。


 週の半分はベッドにいて、ベッドにいる日の半分は起きることが出来ない。


「次に玲様の見た目は特徴的です。すぐに神子様と知られてしまうでしょう。そうなれば学院で玲様が自分にも何かして欲しいとお願いされてしまうかもしれないですし、それを先生方などに抑えられるとは思えません」


 私は宮比神様の力のせいで髪の色が焦げ茶になってしまった。産まれた時は真っ黒だったそうなので、これからも茶色になっていくかもしれない。それに最近では目の色も焦げ茶になってきているのでもしかしたら目の色もなっていくかもしれない。


 周りが黒髪の黒目しかいないので、とても目立つと思う。そのせいで神子様だと知られてしまい、神子様ならなにかしてとお願いされるかもしれないのは私にでもわかる。


 ここではお父様や貴臣様が押さえていてくれていて、私が会いたくないと言えば会わずに済んでいるけど学院では無理だろう。自分でお断りもできそうもない。


「神子様って知られないようにしてって先生にお願いしても駄目なんでしょうね」


「難しいでしょう。それに玲様はとても喜んだり、悲しむことが無いようにしなければいけませんが、学院に行けばいろいろな学生が居ますから、楽しいこともあるでしょうが、嫌なことも悲しいことも起こりやすいです。


そうなれば玲様は体調を崩されるでしょう。学生ではどうしたらいいのか分からないですし、私もすぐに玲様の元に駆けつけられません。玲様をそんな状況にさせるわけにはいきません」


「なんだかとても学院に行けない気がしてきたわ」


「はい、ですので学院に通わせられないんです」


「じゃあ勉強もしなくてもいいの?」


 佳那は勉強の時厳しいからしないでいいならしたくない。


「それはいけません。今は私でも教えていますが、玲様が学院に通う時期になりましたら、ちゃんと先生に教えてもらいます。


真路での試験をきちんと同じように受けて頂きますし、他の生徒と比べどれぐらい出来ているかも確認しますので、さぼればすぐに分かりますよ」


 先ほどの優しい佳那は姿を消し、厳しい顔でメッと叱られる。


「試験……。綾が嫌いだって言っていたわ」


 綾は試験の前になると暗い顔をして「やりたくない」と泣いている。


「試験は今まで勉強していた結果が出ますし、成績順も出ますから皆好きではないです」


「でも葵は普通だったけど」


 葵は綾を大丈夫だと一生懸命慰めていたけど、綾が「葵は成績がいいから何でもないだけよ」と余計に凹んでいたけど。


「葵様は優秀ですから平気なんでしょう。玲様もしっかり勉強されていますから、試験もそんなに難しくないかもしれませんよ」


「でも成績が良くないと恥ずかしいんでしょう。北条家として恥ずかしい成績は取れないって2人共言っていたもの。私そんな成績取れるかしら?」


「大丈夫です。勉強はこれからですし、私の娘の沙那さなと比べて玲様は本当によくできています。沙那は遊ぶことが大好きで座っていることが大嫌いでしたから全然勉強しないのです。本当に困ったもので。それに比べ玲様は体調が良い時が少ないのにきちんと勉強されて素晴らしいです」


「それは私が部屋に居るしかできなくて、やることが本を読むか勉強するかしかないからだと思うの」


「それだけではないと思いますが。……玲様他にしたいことがありますか?していることが勉強ばかりで、それでは良くない気がしてきました」


「私に何ができるかしら?部屋からほとんど出ないし」


「今度綾様や葵様に聞いてみられてはどうでしょう?」


「そうしてみようかな」


「えぇ、ぜひそうしてみてください。では綾様達とお茶会をするのは週で言うといつか分かりますか?」


「土の日よ。一週間は月の日から始まって水金火木土日の日までで、綾達は土と日の日が休みだけど、お父様達の秘書とか大人の人は日の日だけがお休みなの。……佳那はいつ休んでいるの?」


 毎日佳那の顔を見ている。佳那はいつ休んでいるのだろう。


「私も日の日ではないですが、菜緒と交代でお休みをしていますよ。玲様が体調が悪くなくて、でもベッドで寝ている日が多いから玲様が気が付かないことが多いだけです」


「良かった。佳那ちゃんと休んでね」


「はい。ありがとうございます。ちゃんと私もお休みします。玲様今度綾様達に会うのはいつか覚えていますか?」


「今年はもう会えないから、来年の桐月の第三週目の土の日よ」


「何時だったかも覚えていますか?」


 佳那ったらすぐに勉強にしちゃうんだから。


「たしかおやつより早い時間だからお昼の2時」


「そうです。では今は何時ですか?」


 私は机に置かれている置き時計を見る。

「えっと2時……50分?」


「正解です。やっぱり玲様は素晴らしいです。今日はここまでにしましょう。すぐにおやつを持って来てもらいますね」


「は~い。今日のおやつは何?」


「今日はマドレーヌですよ」


 佳那が部屋の外に出るとすぐに戻ってきた。


「菜緒が持って来てくれていました」


 佳那が用意をしてくれ、佳那が食べてからミルクとマドレーヌを食べ始める。


「美味しい!」


 佳那がにこにこしながら私を見ていて、私は佳那が居てくれて安心しておやつを食べる。


 たまに佳那が呼ばれて1人で食べないといけない時もある。そういう時は部屋の外に警備の人がいると分かっていても寂しくて、おやつもそんなに美味しいと思えない。


「佳那もう一つ食べる?」


「いえ、玲様が食べてください」


「いいの?嬉しい!」

 

 佳那もいいと言ったので、残りのマドレーヌを全部食べてしまった。


読んで頂きありがとうございます。


サブタイトルに入れているのにやっと月の説明です。


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