貴祥8歳 柏月
後日南条が忙しいお父様に変わって部屋に報告に来てくれた。
「葵様のこと無事に許嫁となれそうです」
「ほんとう!」
不安だった気持ちが吹き飛び、南条に飛びつきたくなるほど嬉しい。
「はい。ただお伝えしておかなければいけないとこがあります」
少し難しいですがと南条は詳しく教えてくれた。
「真家には本家と言われる北条家・南条家・東条家・西条家があります。かなり昔は本家同士で結婚をしたこともありましたが、早くに亡くなる子が増えたため本家同士は結婚してはいけないと本家一同で決めました。葵様は東条と名乗っていますが、連れてきた東条彰吾の兄弟の子、つまり姪に当たるので結婚はできますが、東条彰吾の姪だということを周囲に周知しなければ、後々問題になります。そのことを覚えておいてください」
「本家同士の結婚はいけないんだな、わかった」
真路に入学した時から真家のことを少しずつ学ばなければいけないと、教えてもらうようになったので本家のことは分かる。その下に分家、そのまた下に末家があることも教えてもらったばかりだ。
「葵様は末家の家にいらっしゃいます。先日は東条彰吾が綾様の話し相手にと連れてきたので会わせましたが、本当でしたら末家では会うことは難しいのです」
「そうなのか?じゃあ連れてきてくれてよかった」
葵と会えなかっただなんて考えたくもない。
「はい。葵様に会えたことは良かったです。末家では本家ほどお金がありませんので、葵様には侍女がついていません」
「では葵はどうしているの?」
綾にも赤ちゃんの頃から唯がいるのに葵はどうやって生活をしているのだろう。
「母親が見ているか、母親の侍女が見ていると思います。ただ、それでは葵様が不便でしょうから北条家から侍女を向かわせることにしました。貴祥様どの女性を葵様の元に行かせるか選んでいただけますか?」
「もちろん、すぐに選ぶからすぐ葵の元に向かわせてくれ」
「では、呼んでいますので選んでいただけますか?」
南条と執務室に行くと数人の女性が並んで立っていた。
「どの女性も南条家で鍛えておりますので、葵様に不自由な思いをさせることはありません。貴祥様が誰を葵様の傍に置きたいか決めてください」
南条に言われ女性たちを見た。
しっかりしていそうな者も優しそうな者もいたが、どこか葵を思わせる女性に決めた。
「この人で」
「千佳ですね。かしこまりました。本日中に葵様の元に向かわせます」
「葵のこと頼んだぞ」
「かしこまりました。誠心誠意務めさせて頂きます」
「葵のこと細かく報告してほしい。困ったことがあればなおさらすぐに。お金が足りないなら僕の小遣いをすべて渡すからすぐに報告を」
彼女は「そのように致します」と深々と頭を下げた。
それからは千佳から細かく入る報告を南条経由で聞き、葵の無事を確かめることで会えるまでの間我慢することができた。