葵7歳 杷月
東条家から帰宅すると知らない女性が食堂に座っていた。
千佳がすぐに気が付き女性に声を掛ける。
「お客様をお待たせして申し訳ありません。誰か呼びに行きましたでしょうか?」
女性は千佳ではなく私を見て立ち上がった。立ち上がったことで彼女の横には小さな男の子が座っているのが見えた。女性は私の方に近づこうとしたのを千佳が間に入って止める。
「申し訳ありません。どちら様でしょうか?」
千佳が私を背中に隠しながら尋ねる。
「私は早苗といいます。この子は和馬。藤波との子です。これからこちらで住むことになりましたのでよろしくお願いしますね。ほら和馬もご挨拶して」
「藤波和馬です」
「今日から家族となりますからよろしくお願いしますね」
心底嬉しそうに話しているが、どうして家族になるとか言っているの?お父様との子?お母様がいらっしゃるのに?
何が起きているのかさっぱり分からないのに、彼女は気にする様子もなく男の子をこちらにぐいぐい寄せてくる。
「せっかく家族になるのだから仲良くしてくださいね。ほら2人で遊んで来たらどう?」
「い、いやぁ!」
千佳の腰に捕まって2人から姿が見えないように隠れた。
いやだ、家族だなんて思えない。
「そうおっしゃらず」
男の子をぐいぐいと押して遊ばそうとするけれど、男の子もどうしたらいいのか分からないようで少し抵抗し始めた。
「葵忘れていたよ……誰だお前」
私が落としていたのか忘れ物を届けてくれた彰吾さんが女性を睨みつけていた。
「私は藤波の内縁ですわ。今日からこちらで住むことになりましたの。あなたこそ誰なの」
「はぁ、内縁だ!?藤波はどこだ!千佳は葵を連れて部屋に戻ってなさい」
彰吾さんの怒鳴り声で警備の者が慌ててお父様を探し始め、私は千佳に抱えられて部屋へと戻った。
「千佳あの人たちはなに?一緒に住むの?どうしたらいいの?」
「分かりません。茉理に聞いてまいります。絶対ここから動かないでください」
千佳が部屋から出て行ってしまうと、不安で落ち着かない。
下から聞こえてくる声が怒鳴っているようで余計に不安になる。
本を読むことも勉強することもできず立ったり座ったりしながら待った。
「葵様お待たせしました」
千佳が部屋に戻って来て詳しく話してくれた。
早苗さんは父様の内縁として住むことになったけど、2階には上がってこないこと、和馬と遊んだりと交流をしなくてもいいと教えてもらった。
「私は顔を合わさなくてもいいの?」
「はい、わざわざ会ったり話したりしなくても大丈夫です。と言うより必要以上に話さないでください」
一緒に住まないといけないのは残念だけど、顔を合わさなくていいなら十分だ。
「そうします」
「今日はいろいろあって疲れましたでしょう。早めにお休みしましょう」
千佳に言われ早めに休むことにした。
眠る前に神に今までの生活が変わることが無いようお願いした。




