葵6歳 梅月-1
いよいよ明日から真路へ入学するので、今日は特別に平日なのに東条家に来ていた。
以前千佳にきちんと測ってもらい作った制服は、私が大きくなっても大丈夫なように大き目だけど、濃紺のジャケットにグレーの膝丈で幅広のプリーツスカートで可愛らしい。
ネクタイは自分でできなかったので千佳にしてもらい鏡を見ると、自分でもよく似合っている気がした。
「千佳似合う?」
「とてもよく似合っていますよ」
千佳にも褒めてもらって嬉しくて鏡でいつまでも見ていたかったけど、千佳に「汚してはいけないので早めに脱ぎましょう」とさっさと脱がされてしまって残念だ。
明日からはずっと着られるのだからまあいいか。
部屋で明日持って行く物を千佳と用意していると千桜さんがやって来た。
「葵明日の準備はちゃんとできた?」
「はい、千佳と準備したので大丈夫です」
「明日は学院から帰ったらお祝いをするから楽しみにしていて」
「はい、ありがとうございます千桜さん」
「ふふふ、子供が学院に入学するのを祝うのは親として当然よ。私は明日のお祝い準備をするわね。明日は菅野が付いていくから心配しないで」
「はい」
彰吾さんから真路学院の入学式には保護者は出席できないと聞いていたし、ちゃんと菅野さんを紹介してもらったから大丈夫。
千佳にその後詳しく教えてもらったのは、真路学院はもともと真家の子供に勉強を教える場所だったが、そのうち昔の王家や武家にあたる人たちの子供も教えて欲しいと言われ、今のように皆が通う学院が出来たそうだ。
ただお金が掛かるので国で大半を負担する最上学校を最上様が作られた物なので庶民も学校に通えるようになったそうだ。
真路学院ではいつからか入学式をするようになったが、いつの時か王家にあたる方が入学式に行って姿を見たいと言い出し、それに合わせて他の親たちも自分たちもと言い出したのでとても警備が出来ないとすべて断った。
それが今でも続いているので、親は誰も入学式には行けないが、入学式だけ付き添いの人が特別認めていて大抵誰かがついていく。
入学式の当日、いつもよりしっかりと身支度をして制服を着て玄関に向かった。
「葵今日はおめでとう。学院は楽しい所だよ。一生懸命勉強して友人も沢山作って楽しい学院生活を送るんだよ」
「はい。いってきます」
菅野さんと馬車に乗り真路学院に向かう。千佳も一緒に行けたらいいけど、侍女や家僕は学院内に入れないので仕方がない。
王家の方々は同じ生徒の中でお世話する人が一緒に行くらしいけど、真家では分家などにお願いしたりしないので自分でしなければいけない。
今まで千佳が居てくれたので、自分で全部しなければいけないから不安で落ち着かない。
「葵様心配しなくても大丈夫です。先生方が優しく何をしなければいけないのかなども教えてくれますから」
「はい、先生の言うことをよく聞きます」
今までは私より年下なのは彰啓だけで皆年上ばかりだったのでなんでも簡単にしてしまうけど、学院で合う人たちは私と同じ年だから、私だけが出来ないってことは無いと思う。
私だけ出来なかったらどうしよう。ゆっくり教えてくれるから大丈夫?舞のお稽古もゆっくり教えてくれるから怒られたりしないから大丈夫よね。
ドキドキしながら馬車で学院の近くまで来ると馬車がずらっと並んで順番待ちをしていた。
「菅野さん何の順番待ちですか?」
「学院に入る順番待ちです。馬車が学院に入るのにはこの通行証が必要です。それを門の所にいる警備に見せなければ入ることが出来ません。真家も王家のお子様もいますから警備はしっかりしているんです」
そうなんだと思っていると、馬車の窓から制服を着て歩いて場所の横を通り過ぎていく人たちが見えた。
「あの人たちはどうして歩いて入っていくのですか?」
「あぁ、彼らは庶民や馬車を持っていない家の子が歩いて通ってきているんです。彼らは制服も来ていますから通行証を見せる必要が無いんです」
なら、私が藤波の家の子であればああやって歩いて登校することになったんだ。
歩いて通うのも楽しそう。でも藤波の家からだと遠いから、歩いて学院まで歩けるかどうか自信がないし、帰りも歩いたら凄く疲れそう。馬車で良かった。
菅野さんにあれこれ聞いているうちに馬車は学院の中に入った。
菅野さんに私の学級が集まる場所に連れて行ってもらうと、菅野さんは「こちらで居られれば担任の先生が来られます。先生が来られたら先生の言うことをよく聞いてください。私は入学の手続きをしてまいりますので」とすぐにこの場を離れてしまった。
周りを見渡せは知っている人が居れば話したりしているが、ほとんど1人でポツンとしていた。誰かに話しかけたいけど、男の子が多くて女の子は少ししかいない。
迷っているうちに先生がいらっしゃって、私たちは入学式へと向かった。




