渚28歳 杷月
執務室で仕事をしていると、仕事の手が止まったかと思ったら貴臣が声を掛けてきた。
「渚、玲のこと何か分かったか?」
貴臣が口調を崩したことで当主としてではなく、親として聞きたいのだろう。
「何もわからん。普通の子のように育てたいと思うのに、体調が良い時でないと食事も一緒にとることが出来ない。その体調も月に1度あるかどうか。
女神様のことを知りたくても聞き出せる時はなく、少し聞けても幼子で言葉を知らず上手く伝えられず、そのせいで悲しくなり体調を崩してしまうから聞くことさえも難しい。誰か玲のことを分かることができる者がいないものかと思うが、玲が傍に居させることを拒否する」
「佳那や晄では難しいのか」
「佳那には今でも負担が掛かりすぎていて、これ以上頼むのは難しい。晄は学院もあるから玲に会いに来る時間が少ない」
ノックの音と共にドアが開いた。
「執務中申し訳ありません。玲のことで相談がありまして」
「玲がどうした?」
晄がわざわざ執務中に相談に来るぐらいだ何かあったに違いない。
「今玲の部屋に行ったら真っ白な猫がいまして、玲にすっかり懐いていて、玲も飼いたいと」
「猫なら飼えばいいぞ。それで玲の体調が少しでも改善するのなら嬉しいことだ」
貴臣がすぐに答えるも、晄の顔がすぐれない。
「はい、飼うことはすぐに許可が下りると思ったのですが、佳那から聞いたところによると真白と呼ぶときと那智と呼ぶときがあるそうです。
佳那がどうしてか尋ねたら、宮比神様だけこちらに来てずるいと他の神達が言い出して、真白に力を渡して遊びに来ているからそのときは那智と呼んでいると」
「どういうことだ!ほかに何か分からないのか?」
「晄それだけで相談に来たわけではないのだろう。早く詳しく説明しなさい」
貴臣は立ち上がり、私も晄に詰め寄り問いただす。
「申し訳ありません。たいした情報は玲から得られず、ただ天津神様と国津神様も遊びに来られるみたいです」
貴臣と2人で部屋を出て行こうとしたら晄に止められた。
「玲は今寝ています。寝たので報告に来たのです。話せるのにそばを離れたりしません」
それはそうに違いない。ただでさえ会える時が限られる晄が、話せるのにそばを離れるはずがない。
「なら佳那を呼べ!何か聞いていないのか」
「佳那は猫の寝床や食べ物の用意でまだろくに聞けていません。これから少しずつ聞き出すしかなさそうです」
「ではなぜ天津神様と国津神が来られたことが分かったんだ」
「最初那智が来た時に、女神様が教えてくれたそうです。でも他の神達は玲が分からないので誰が来られているかは教えてくれても分からないそうです」
「佳那に聞き出してもらいたいが今は余裕が無いな。猫の世話にと誰が別の者を入れてみるか」
「それしかないでしょうね」
それで入ったばかりの女中たちが出入りしたが、結局立ち入りを許されたのは菜緒だけだった。そのうち佳那の補佐としても入れるようになり、佳那がずっと楽になった。
玲も真白がいると体調が良い日が増えたため、部屋に真白がいることを皆が喜んだ。
ただ、誰が見ても真白と那智の差が分からず、分かったのは部屋から出ないのは真白で行動的なのは那智だということだけだった。




