彰吾25歳 珀月
葵は泣いて夕食を途中で止めてしまうし、千佳に幼子に皆で追い詰めるのは酷いと言われてしまい、そんな約束をさせた本人に文句を言いに行くことにした。
貴祥様は執務室にて勉強されていると家僕から聞き向かう。
「勉強中に申し訳ないですが、葵のことで話が」
「少し待ってくださいこの問題だけ解いてしまいますので」
さらさらと問題を解いてしまい、ペンを置いたのを見て尋ねる。
「なぜ幼い葵に私たちにすらお茶会のことを話すなと約束させたのですか?知らずに聞いて葵に話せないと泣かれてしまいましたし、千佳にも酷いと言われました」
私は文句を言いに行ったはずなのに貴祥様に喜ばれてしまった。
「ふふ、ちゃんと約束を守れたんだ。流石葵」
「貴祥様」
「今はたいしたことは話していないけど、いつ内緒話をするのか、他家に知って欲しくないことを知るかもしれないからね。それなら最初から内緒にするようにお願いしたんだ」
「貴祥様は東条家に千佳を入れて調べているのに、北条家で葵が知ったことを話すなと言うのですか」
「そもそも葵の部屋も千佳が動ける範囲も東条家の中で限られているだろう。それに比べ綾とのお茶会となるとかなり奥に入ることになる。それと比べられては困るな」
「そんなことはありません。葵には家の中で歩いてはいけないと制限をしてはいません。貴祥様こそ北条家にいらっしゃる神子様のこと幼子から話すことさえ制限するほど隠したいのですか?」
「なんのことだ。東条家が勝手に思うのはいいが内緒になどしていない。変な噂が広がっているようだが、本人が出られないだけだぞ」
そうやって隠すから天下を取れるなどと噂になるのだ。父からもそんな話は聞いていないが、隠す理由が絶対にあるはずだ。
「なら葵が何を話してもいいじゃありませんか。内緒話なら最初から話さないでって言われるでしょう」
「だから、部屋の間取りであったり、ふと耳にしたことを話せるかの判断が葵には出来ないからすべて話すなと約束させたんだ。ちゃんと約束を守れるいい子だな葵は」
「せっかく楽しく過ごせたのにそれを話せないなどかわいそうじゃないですか。子供は親になにをしていたのか知って欲しいものですよ。まだ子供の貴祥様には分かるのでは」
「子供をそんな風に追いつめて、いい大人が何をしているのですか」
「久我!」
「久我、様!」
ちっ!邪魔が入った。このまま貴祥様を追い詰めて話せる許可を取る予定だったのに。
「貴臣様も南条様も神事でいらっしゃらない時を狙ったかのように来られて。貴臣様からの伝言です。葵に話すなと言ったことは当主からも言っているので、葵からお茶会に来た時のことを聞かないように。千佳からの報告書によると、帰る時に話せないと聞いていたのに、大人4人で囲んで責め立てたらしいですね。幼子に酷いことを。二度としないで頂きたい」
「彰吾さんそんな酷いことをしたのか!僕の許嫁になんていうことを。二度と泣かせないでください。葵にはやはり何も話させません。彰吾さんは葵を諜報部員に仕立てたいようだ」
諜報部員とまではいかないが何かしらの情報を得たいとは思っていたが、これ程警戒されてしまったのなら葵から聞き出すのは止めておいた方がよさそうだ。
「お判りいただけたらお帰り下さい。貴祥様の勉強の邪魔までするつもりですか」
久我まで来た上、貴臣様まで賛成されているなら覆そうにもない。千佳は相変わらずすぐに報告を上げ、貴祥さんの機嫌を損なってしまった。今日の所は引いた方がいいだろう。
「分かりました。私も仕事がありますのでこれで失礼します」
久我も余計なことを。これでますます神子様との距離が出来てしまう。
不機嫌さを隠すこともなく北条家を後にする。
葵なら執務棟ではなく居住棟に入っているのだろう。送って来てもこちら側までしか立ち入れないので、少しでも聞き出せればよかったのに。女の子はおしゃべりだから迎えに行けばいろんなことを教えてもらえると思ったのに貴祥さんに先を越されてしまった。
葵もあれほど頑なに話さないと決めず漏らしてくれればいいのに、よほど恐ろしく言ったのかと考えたが、それなら怖がるだろう。どう見ても慕っていてまた会いたいからと望む方が強いようにしか見えない。
くそっ!どうやればいいのか分からない。落ち着いて再度考えよう。誰かに当たりたいのを我慢して菅野と仕事へと戻る。菅野も結果が良くないのは俺を見てすぐに分かったのだろう。
馬車の中で何も言わず小さくなっている。分かっているなら発散させてくれれば良い側近だと思うのに気が利かない。結局一日必要最低限の会話しかせず、眠るまで苛立ちが消えず翌日は寝不足で仕事にならなかった。




