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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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葵5歳 梅月-5

 楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい、帰らないといけない時間になってっしまった。


「葵これは綾に買った物だけど、綾が読まないから読む?今度までに返して欲しいわけじゃなくて、読み終わったらでいいからね」


 貴祥様がお話をしている間に部屋を出られたことは何となく知っていたけど、本を持ってきてくれているとは思わなかった。貴祥様が持っている本は私が読んだことが無いもので、読めるのなら是非読みたい。


「本当に貸してくださっていいのですか?綾が読むんじゃあ」


「私はお稽古で忙しいからあまり読まないの。それなのに読むといいって買ってくださるから困っていて。一度も読まないより葵が読んでくれるなら嬉しいわ」


 貴祥様がそっと差し出した本を受け取り胸に抱きしめる。


「早めに読んでお返ししますね」


「言っただろう。十分楽しんでから返してくれればいいから」


 なんて贅沢なんだろう。こんな楽しそうな本をゆっくり楽しんでから返してもいいだなんて。


「汚さないように気を付けて読みますね」


 大事にしている本を汚したり折ったりなんて酷いことは絶対にするもんか。


「あぁ、そうしてくれると嬉しい。さぁ葵帰ろうか」


「葵また来てね」


「はい、今度はレース付けてきますね」


「葵これだけは約束して。ここで綾と話したり知ったことは誰にも彰吾さん達にも言わないと。東条家に帰ってから決してここで見聞きしたことは話さないと約束して。その約束を守れるならまた何度も綾や僕と楽しい時間を過ごしてほしい。でもその約束を守れないならもう来られないと思って」


 先ほどまで楽しくお話していたのに、今の貴祥様はなんだか怖い。


「女の子同士のお話を他で話しては嫌よ。2人の秘密なんだから」


 綾様が優しく言ってくださったので少し楽になった。


「あの、千佳とならいいですか?」


 せっかく楽しくお話しできたのに、嬉しかったこととかを話せないのは寂しい。


 千佳なら今日も部屋に居たし、話してもいい気がする。


「そうだね、千佳ならいいよ。でも必ず自分の部屋で2人だけの時にならだよ」


 今度は笑顔で優しく言ってくださった。


「はい。それなら絶対に彰吾さん達に話したりしません。だからまた来てもいいですか?」


 美味しいおやつも嬉しいけど、楽しくお話してくれたお2人にまた会いたい。


「ぜひまたおいで。でも嘘をついてもすぐに分かるからね。僕も綾も葵に何度も会いたいから忘れないで」


「絶対に忘れません」


 貴祥様と約束してから、綾様の部屋を皆で出た。


 棟を移動し玄関に向かうと、彰吾さんがいた。


「彰吾さん!」


「葵楽しかった?」


「はいとっても!」


「それは良かった。じゃあ遅くなるから帰ろうか」


「はい。綾・貴祥様今日は呼んで頂きありがとうございます。また会いたいです」


「また遊びましょうね」


「あぁ、また会おう。葵忘れないでね」


「はい!」


 彰吾さんも綾や貴祥様に挨拶をしてから迎えの馬車へと乗り込んだ。


 楽しくて歌でも歌いたくなる気分だけど、彰吾さんもいるから我慢。


 そうしたら彰吾さんが尋ねてきた。


「葵、貴祥さんが葵に忘れないでって言ったのは何?綾様達のことを忘れないではおかしいし」


「今日お話ししたことは彰吾さん達にも内緒って約束したんです」


「なんで?そんな約束を?」


 彰吾さんはどうしてなのかさっぱり分からないと不思議そうにした。


「分からないです。でもまた会いたいから話さないでって。綾様は2人の秘密って。だから話しちゃダメなんです」


「千桜にはいいの?」


「約束したからお話しません!」


 話したら会えないって言われたし、嘘ついてもすぐに分かるって。絶対に綾様達にまた会いたいからお話しない。


 彰吾さんは機嫌が悪そうにした。


「小さい子に話したことを内緒にしろだなんて。千佳から聞くか」


 東条家に着き、千佳が私の傍に来た時彰吾さんが千佳に聞いた。


「千佳は同じ部屋に居たのだから、どんな話をしたのか知っているだろう。どんなことを話したの?」


「葵様にも話すなと言われたことを彰吾様にはお教えできません」


「お前、小さい子がどんな話をしたのか知りたいと思うのは普通だろ」


「本当にお菓子のことなどの他愛のないことです。葵様はこれから初等部に入学されたりすれば、女の子同士の内緒の話も多くなります。北条家の内情が分かってくることもあると思いますが、それを気安く話すべきではありません。そのことを幼いころから覚えるということも大切だと思います」


「親でもないお前が決めることではない」


「私は北条家より葵様の躾もするように言われておりますので。もうよろしいでしょうか。葵様は初めてのことばかりで疲れていると思います。着替えて休ませたいのです」


 2人の言い合いが嫌で私は千佳の服を引っ張って止めたかったのに言ったのは「千佳私疲れてないわ」で何にもならなかった。


 千佳はそんなことお構いなく私を家の中へと連れて行こうとする。


「今は楽しくて分からないだけです。夕食まで少し横になってください」


 千佳に言われるとそんな気がしてくるから大人しく千佳について行く。


 千佳は彰吾さんを置いたままだし、彰吾さんは引き止めたりしないのでそのまま部屋に戻った。


「さぁ、葵様着替えましょう」


 部屋に戻るとホッとして千佳が疲れていると言ったのが分かった。


 急いで着物を脱ぎ部屋着へと着替えて、綾から貰ったレースは大切にしまい込んでからベッドに腰かけた。


「葵様休まれる前に少しお話しましょう」


「今日のこと?」


 早速楽しい話が出来ると思ったが、千佳は違うという。


「はい。楽しいお話はまたゆっくりと聞きます。今は貴祥様が彰吾様にも内緒だと言ったことです。葵様は藤波でいる時のことを綾様達に知られたくないですよね」


「知られたくないわ」


 素敵なお2人に惨めな生活をしていると知られるのは嫌だ。


「会ううちに知ってしまうことで、綾様にもそう思うことがあるかもしれません。でも葵様にはそれがどれか分からないですよね」


 綾様は素敵すぎてそんなことないと思うけど、綾様には初めて会ったから何がいやなのか分からない。私は頷いて千佳に答える。


「だから貴祥様は話してはいけないと言われたのです。どんな着物を着ておやつを頂いたのかもです。藤波に好きなものを知られて、機嫌が悪い時に食べるなって取られたら嫌ですよね。綾様にも知られたくない人や知られたくないことがあるんです。だから貴祥様が誰にも話してはいけないと言われたのです」


「好きなものを取られるなんて嫌だ」


「今日はなかったですが綾様はこれから何度か会ううちに本当に内緒よって話してくださることもあるかもしれません。葵様だけに教えたのに他の人が知っていたら綾様は悲しまれます。内緒にしなければいけない訳を分かって頂けましたか」


「分かったわ。なにもお話ししないわ。私綾様や貴祥様にまた会いたいもの」


「はい。長くお話してしまいましたね。夕食まで少し眠ってください。夕食の時にはちゃんと起こしますから」


「は~い」


 もぞもぞと布団の中に潜り込めば、すぐに眠たくなってくる。千佳が布団を直してくれるのを感じながら眠りについた。

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