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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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葵5歳 梅月-3

 翌日お昼ご飯を食べてから、お嬢様がいらっしゃるお家に出かけた。


 門の中に入り馬車が止まり、その場に立ち屋敷を見上げて思わずため息がでた。


「ふわぁぁ」


「すごいだろう。藤波の家よりも大きいからね」


「ここはお城ですか?」


 首が痛くなるぐらい上を向かないと屋根が見えない。玄関前も大きくて家とは大違いだ。


「あはは、違うよ。北条家。綾様が住まわれているところだ」


 彰吾さんと話していると玄関のドアが開いた。


「東条様お待ちしておりました」


 男性が彰吾さんに頭を下げ中に招き入れてくれた。


 玄関も本当に大きく私の部屋ぐらいあると思う。


「東条様はこちらで大丈夫です。葵様綾様がお待ちです。こちらにどうぞ」


 彰吾さんが私を連れて行こうとした侍女の腕を捕まえる。


「僕が一緒に行ってはいけないのか?」


「東条様手を放してください。綾様は居住棟にてお待ちです。東条様は居住棟への立ち入りを北条様より許可されておりません。唯、葵様をお連れして」


 玄関に招き入れてくれた男性が彰吾さんと侍女との間に入り2人を引き離した。


「葵様こちらにどうぞ」


「でも彰吾さんが……」


「綾様がお待ちですので。侍女の方もご一緒にどうぞ」


 そう言われると私は綾様と話をするために来たのだから綾様の方に行くべきだと思う。


 彰吾さんと家僕とまだ揉めていたけれど、私は千佳と一緒に唯と呼ばれた侍女に連れられて別の建物に渡り廊下を歩き移動し始める。


 唯さんはゆっくり歩いてくれているのか遅れずについて行くことができた。


 渡り廊下を渡り、居住棟の2階の一室の前に着くと唯さんは立ち止まった。


「こちらになります。失礼します葵様をお連れしました」


 部屋の中が見えるとそこには綾様だろう美人の女の子と、お兄様らしい男の子が座っていた。


 唯さんに「どうぞ」と言われ部屋に入る。


「初めまして東条葵です。今日はご招待いただきありがとうございます」


 昨日夕食後に千桜さんに教えてもらった通りに挨拶をする。


 2人は顔を見合わせ、綾様がなにか言いかけたがお兄様?が首を振って止めた。


「初めまして。僕は綾の兄の北条貴祥。こちらが妹の綾。これからよろしくね」


 貴祥様は立ち上がり2人を紹介してくれた。貴祥様は綾様と同じようにシュッとした目をしていてとても素敵な男の子で、洋服を着られていてどんな動きをしても綺麗だ。


「今日は来てくれて嬉しいわ。会えることが決まってからずっと楽しみにしていたのよ」


 綾様も立ち上がり私の手を取って喜んでくれる。綾様は薄い桃色に雲や花の模様のお着物を着られて、少し癖があり朝千佳に髪を直してもらっている私には羨ましいほど真っ直ぐな黒髪を上の方だけ纏め後は下ろしていてお人形さんみたい。


「さぁこちらに座って」


 最初見た時は冷たい感じだったのに笑うと可愛らしくて羨ましい。私も綾様のように綺麗だったら今着ている着物もよく似合うと思う。私はちっとも可愛くないので貴祥様が綾様と比べてがっかりしていないといいけど。


 私の手を取ったまま席に連れて行ってくれる。綾様は自分の隣の席を私に勧めてくれ、私を挟むように貴祥様が腰かけた。


「葵、ねぇ葵って呼んでもいいでしょう?私のことは綾って呼んで」


「はい葵と呼んでください。でも私はとても呼び捨てにできません」


 昨日彰吾さんからくれぐれも失礼のないように言われている。


「せっかくお友達になったのにそんなの寂しいわ。綾って呼んで」


 にこやかにでもそう呼ばないと許してもらえなさそうな雰囲気に諦める。


「はい、では綾と呼びます」


「ふふふ。葵はオレンジジュースを飲むでしょう。これはパウンドケーキ。いっぱい食べてね」


 オレンジジュースは家飲んだことがあるけれど、パウンドケーキは食べたことが無い。


 すぐにでも食べたかったけど、誰も食べ始めていないのに一番に食べるのは恥ずかしくて我慢する。でも、我慢できなくてオレンジジュースを手に取る。


 一口飲むと甘くておいしい。家で飲んだのと全然違う。


「おいしい!」


 思わず声が出ると貴祥様が嬉しそうにした。


「それは良かった。おかわりも沢山あるから好きなだけ飲んで。パウンドケーキもあるからね」


 貴祥様に言われたし、綾様が食べ始めたので私も食べる。ナイフとフォークになれていないけど、綾様を真似してできるだけ綺麗に食べるようにする。


 口いっぱいに広がる甘さに驚く。


「甘~い!おいしい!」


 出来るだけ綾様のようにしたいのにすぐに崩れてしまう。


「でしょう。好きなだけ食べてね」


 こんなんじゃ嫌われてしまうと思ったのに、綾が嬉しそうに賛成してくれたので安心した。


「綾、葵も沢山食べてもいいけど夕食が入らないほど食べると怒られるよ」


「は~い気をつけますお兄様」


 そうは言っても気を付けるつもりがなさそうな雰囲気に綾と顔を見合わせて笑う。


「葵は何が好き?私はお着物もお洋服も好きなの。綺麗なリボンやレースも沢山持っているのよ。唯持ってきて」


 綾は唯さんに慣れたように頼む。


「私はリボンとかも見ていて綺麗だと思いますけど、沢山買えたり出来ないので。……私は本が好きです。家に沢山は無いので何度も読んでいますけど楽しいです」


 綾のようにたくさん持てたらいいけど、自分に合った洋服も満足に持てないのではリボンなどとても持てない。本はもちろん読んでいて楽しいけれど、部屋で大人しくしていないとお父様が怒るから部屋で静かに出来ることを探しているうちにそうなっただけだ。


「そうなの?私本はお母様が買ってくださるけど読むのはあまり好きじゃないの。葵リボンとか見るのは好きでしょう?ねぇ葵はどんなお着物が好き?お洋服では?」


 綾様の質問には困った。着られる物を着ているだけなので、今までどんなのが好きなのか考えたこともなかった。


「あの、その……すっきりしたのが好き?……です」


 綾はキョトンとして私を見る。


「葵はお母様に言われたままにお着物を着ているの?」

 

 お母様ではないが千桜さんに言われるがままだ。


「はい」


 自分で選んでいないことが恥ずかしいことのようで声が小さくなってしまう。


「じゃあこれから私と一緒に勉強しましょう。私も最近分かってきたところなの」


 綾は絶対好きな物がもう分かっているはずなのに一緒にしようと言ってくださったのが嬉しい。


「はい。一緒に勉強したいです!」


「ふふ。なら好きな色から探さない?唯ありがとう」


 綾は唯さんから箱を受け取りながらお礼を言った。綾が侍女にお礼を言うとは思わなかった。赤ちゃんの頃から侍女がいるだろうからお願いすることに慣れていて、お礼なんて言わないと思っていた。昨日千桜さんは特にお礼を言ったりしていなかったし。


「葵綾がお礼を言ったのがそんなに不思議?」


「はい。綾ならずっと侍女の人がいただろうからお願いするは当たり前だと思って」


「お母様に言われたの。侍女がいるのが当たり前になって感謝を忘れてはいけないから、お願いしたらお礼を言いなさいって。でもお兄様は言わないのよ」


「僕は人を使うことを覚えなければいけないから、感謝を毎回お礼を言うことで伝えるのではなく言うべき時に伝えるようにしているからね」


 貴祥様が言われたことは難しくて分からなかったけど、千佳がいなくなるのは嫌だ。千佳に感謝することを忘れないことだけ覚えておこう。


「綾僕がいては邪魔になるだろうから席を外すね。部屋の中にはいさせてもらうけど、あちらで本を読んでいるから気にせず話をして。葵ごめんね。2人で話したいだろうけど、綾がもう少し大きくなるまで僕も一緒に居させてね」


「いえ、私貴祥様とのお話も楽しかったので、また違うことで貴祥様とお話しさせてください」


 綾とのお話はとても楽しいけど、貴祥様が話してくださることも難しいけど聞きたい。


 せっかく知り合えたのにあまりお話しできないのは寂しい気がする。


「ありがとう葵。じゃあ今度違うお話の時は僕も一緒にさせてね」


 貴祥様は私に笑いかけてくれて、最初からそのつもりで用意されていた本を持って隣の机の方に移動した。


「葵ほら見て。いろいろあるでしょう」


 綾は貴祥様のことは気にせずリボンやレースを机に広げて見せてくれる。


「うわぁ。素敵!綺麗な物や可愛いのが沢山ありますね」


「でしょう。葵はどれが好き?」


 あれ?なぜか同じようなことを前にしたことがある気がする?こんな風にたくさんのリボンやレースを広げて見たことが。家でこれほどリボンやレースを見ることなんてない。


「あれ?私前にこんな風に見せてもらったことがある気がします」


 よく見ると見覚えがあるレースがある。とても好きになって女の子がくれると言ったけど、怒られると思って要らないと言った気がする。


「このレース知っています。とても綺麗だと思ったから。でもなんで見たことがあるのか分かりません」


そう、要らないと言った時こんな風に離れて座っていた男の子に女の子が叱られていた気がする。その時も男の子は本を読んでいて、大人みたいで格好いいと思った。


 あれ?オレンジジュースって家で出てきたことがあった?甘いおやつも貰って食べたことがある気がする。一つ思い出せばいろいろズルズルと思いだしていく。


 2人は私が思い出すのを私をじっと見て待っていた。



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