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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第二章
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棗12歳 柏月

 新生活に慣れてから探し始めてやっと学校の裏側にあたる場所で彼女を見かけてホッとした。


ここは学院長室や応接室に面していて、裏側でも花々が植えられ整えられているので、告白されるときに呼び出されることも多いと聞く。


 彼女が入学早々東条を名乗りながら最上に通っていることに、皆が面白おかしく話しているのは聞いている。


彼女は東条彰吾の姪なことは真家ではよく知られていて、大変可愛らしく特進に居ることからも成績優秀で東条の娘だと言ってもおかしくはないのに、


わざわざ姪だと言うことを広げ最上に通わせるのは、彼女の亡くなった父親がよほど当主と仲が悪かったのだろうと。


それでその娘も気に入らず冷たく当たっているのだと。


 東条を名乗るだけに何かあってはと近づかずこそこそと彼女を見て話すので、教室にいるのは落ち着かないのだろう。


「入学早々からお昼時に教室でも食堂でも見かけないからどこにいるのかと思ったら、こんな素敵な所でいたのね」


 急に声をかけられて驚いてビクッとなったのが丸わかりで、東条様はバッと振り返った。


「……楠木(くすのき)様」


 彼女のことを好んでいない人間から声をかけられたのかと思ったのだろう。


私が何も言っていないのを知っているのか、東条様は私を見てホッとしたように肩の力が抜けた。


「今日はいい天気ですからここは最高ですね。お昼ご一緒させてもらっても構いませんか?」


「楠木様はご友人の方たちとご一緒していたのでは?」


 私がなにかしたわけではないけれど、なにか言われるのではないかとかほかのだれかも来るのではと心配そうに東条様は尋ねられた。


「様は止めてください。敬称をつけられるほどの人間ではありませんから。実はずっと東条様に聞きたいことがあったので1人で来たんです」


 安心して話を聞いてもらうために1人だということを伝える。


「では私も様は止めてください、同級生なのですから。楠木さんと呼んでもいいですか?」


「もちろんです。では私も東条さんと呼んでも?」


「はい。……それで聞きたいこととは?」


「あ~。怒らないで、いえ怒ってもかまいませんので、できたら最後まで聞いて欲しいことがあるんです」


「あら、聞きたいことではなく聞いて欲しいことですか?それに怒ってもいいんですか?」


 自分でもおかしなことを言ったと思うけど、きっと怒ると思う。でも私は知りたいのだ。


「はい、怒るだろうなと思うんですけど、聞きたくて」


「分かりました。聞いていて思うことがあっても最後まで聞きます」


「ありがとうございます。……ふう。……怒られると分かっていて話すのは緊張します」


 彼女は私からお願いしたのに、なかなか話し始められない私を急かすわけでもなく、じっと話し始めるのを待ってくれた。


それで優しい人だと思えて、やっと話し始められた。


「私将来小説家になりたいと思っているんです。それでいろんなことに興味があって、気になることがあるとつい聞いてしまったり、調べたりするんです。


……それで、……東条さんがなぜ東条家のお嬢さまが最上学校に入学したのかとても気になっています」


 彼女は顔に出さないようにしているのだろうけど、泣きそうな顔をして肩に力が入ったことでやっぱり聞いて欲しくないとこなのはすぐに分かった。


 それでも彼女は最後まで聞くと言ったことを違えることが無いようで、何も言わず私の続きを待っていた。


「……それで、私がいくら小説家になりたくて知りたいと思っても話してもらえないと思ったんです。


ですから、東条さんご友人になってくれませんか?」


 話したくないことを聞かれると思っていた彼女は、急に話が変わって付いていけなかったようでキョトンとした。


「……はい?」


「あの、仲良くなって話してもいいかなと思えたら、話してくれたら嬉しいなと思いまして。


まずご友人になりたいと思ったんですけど、いつも教室にいらっしゃらないので、話す機会が見つけられなくて、こうして強行突破に出てしまったというわけで」


 彼女は目をパシパシと瞬きをして、私が言ったことを理解しようとした。


「今聞きたいわけではないの?……もし、仲良くなっても私が話したくないと思ったらずっと話さなくてもかまわないの?」


「はい、無理やり聞き出したいわけではないので。私に下心があるように東条さんも私を利用してください。


流石に親友が出来ます!とは言えませんけど、私は小学校の頃より最上に通っていますので、それなりに友人もいます。話してみて優しい方だったと紹介します。


最上には分家や末家に仕えている両親がいる子も、真家に出入りしている商家の子もいて、東条さんの機嫌を損なえば両親が仕事を失うかもしれないと、怯えてなかなか近づいて来られません。


でも、私の友人は分かったうえで親しくしています。東条さんは少し気に入らないことがあれば騒ぐような方ではないでしょ?


親友は出来ないかもしれませんが、皆でわいわい話すのは楽しいですよ。


今日の様な日にここで食べるのは最高ですけど、辛い日もありますから、私と一緒にお昼を教室で食べませんか?」


 そう言うと彼女は泣き顔のまま笑った。


「はい、はい。私普通にみんなと話がしてみたいです。本当に話さなくてもいいのなら、私からもお願いします。楠木さん私と友達になってください」


「東条さんよろしくお願いします」


「ふふふ、友人になったのに東条さんはおかしいですね。葵と呼んでください」


「すみません。それはちょっとまだ難しいです。葵さんで許してください。私のことは(なつめ)でかまいませんので」


「それはおかしいわ。棗さんが葵と呼んでくれるようになったらにします」


 お互いふふふと笑って、お昼休憩の時間が少なくなっていることに気が付き、急いでお弁当を食べた。


その慌てぶりもお互いおかしくて、笑いながら教室へと急いだのだった。


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