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恋とか愛とか結婚とか  作者: 更西東花
第一章
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貴祥8歳 梅月

 あやの話し相手にと連れて来られた女の子は、幼いのに知らない場所で親から離され親の姿が見えない場所に連れて来られたのに、不安そうな素振りも見せず綾にリボンを見せてももらって、楽しそうにしていた。


とても気に入ったリボンがあったようで、じっと見つめていたので綾があげると言ったのに頑固に要らないと断る。綾がもう一度渡そうとしたので、急いで間に入り止める。


「綾無理を言ってはいけないよ」


「だって……」


綾も彼女が欲しいと思っているのはよく分かっているのだろう。


僕は首を横に振って綾をもう一度止めさせる。なにか理由があって要らないと言っているのだから押し付けるのはよくない。


後で綾に言う必要はあるけど、今言って彼女に怖いと思われたくない。


綾が大人しくリボンを引っ込め、彼女と綾はまた違う話で盛り上がった。


彼女は綾よりやせっぽっちで大人しいけど、たまににこっとするのがとてもかわいい。


流石に女の子の話に入っていけず、傍で本を読んでいたけれど、つい女の子を見てしまう。


「綾様が楽しそうでよかったです。女の子も泣かないで一緒に遊ばれているし、2人の相性がいいのかもしれませんね」


 南条なんじょうがオレンジジュースのおかわりを持ってきてホッとして言った。

 

 これまでも綾の遊び相手にと女の子が大人に連れて来られたことがあるけれど、いつも綾は相手にせずに僕の傍に居てつまらなそうにしていた。


「女の子におやつを沢山出してあげて。綾より小さいから心配。夕食も一緒にとれる?」


 傍に来たついでに南条にお願いする。今まで来た女の子たちより細すぎな気がする。


「おや、貴祥たかあき様も女の子が気になりますか?かしこまりました。三人で夕食が取れるよう準備いたします。ふふ、これほど相性がよさそうなら葵様は対かもしれませんね」

 

 南条が不思議なことを言った。


「南条対って何?」


「真家の人間には生涯共にする人間がいます。それを真家(しんけ)では対と呼びます」

 

 そう言われてもよく分からなかった。でも分かっていることもある。

「彼女が欲しい。どうすれば僕のものになる?」


 南条は一瞬固まった後すぐに僕に尋ねた。


「貴祥様それはあおい様と結婚したいということですか?」


「彼女は葵というの?葵にずっと傍に居て欲しい。どうすればいい?」


「畏まりました。貴臣たかおみ様と相談させてください」


 僕の答えに答えてくれてないけれど、南条がそう言ったなら相談しないことには何も言ってくれないと思って我慢した。


「貴祥様、後日詳しく話しましょう」

「わかった」


この時は葵が欲しかっただけで、あんなに大騒ぎになるだなんて想像もしてなかった。



 葵を見送った後、父様に呼ばれた。

 

 綾もお風呂に入るような時間になっていたけど、綾からも聞きたいからと一緒に呼ばれた。


「綾、葵と遊んだのは楽しかったかい?」


「楽しかった!」


 綾は葵と何をして遊んだのかをお父様に一生懸命説明するのを、お父様は楽しそうに聞いていた。綾が離し終わるとお父様は真剣な顔をして僕の方を見た。


「貴祥、南条から聞いたが葵に傍に居て欲しいのか?」


「はい、葵を僕に下さい」


 僕は父様に即答した。


「お兄様私より葵の方が好きなの!?」


「そうじゃないよ綾」


 綾がお父様との話に割り込んできたと思ったら、急に泣き出してびっくりして違うと言ってしまった。


 綾は兄弟だから大事だし、葵は傍に居て欲しい。


「うそ!葵ばっかり優しくしていたもの!もう葵と遊ばない!」

 

 見送る時はまた遊ぼうねと言っていたし、先ほども楽しかったとあれほど話していたのに、嫌がるだなんて!


 綾が遊んでくれないと僕は葵と会えないと思う。僕が女の子を家に呼ぶのはおかしい。


「綾はいつも一緒にいるから、お客様の葵に優しくしていただけだよ」


「そうだよ綾。お客様は優しくしないといけないだろう」


お父様もそう言ってくれたが、綾は全然聞き入れてくれなかった。


「うそ!葵は私からお兄様を取っちゃうんでしょ!絶対会わないから!」


 綾が泣き始めてしまった。もうこうなってはどうしようもない。気難しい綾が一時的にでも遊んだだけでも驚きなぐらいなのだから。


「綾会わなくてもいいよ。ごめんね心配させて。僕は綾の傍に居るから」


 よしよしと綾の頭を撫でて落ち着かせる。


「本当!絶対よ。お兄様どこにも行かないで」


 ぐずぐずとはいっているが泣き止んできた綾を見てホッとした。


「うん傍に居る。もう遅いからお風呂に入って寝ようか」


「うん、もう寝る」


 安心したのか途端に瞼が落ちてきた綾を慌ててゆいが連れて行く。


「綾様お風呂に入りましょう」


「もう寝たいわ。お風呂は明日じゃ駄目?」


「駄目ですよ。急いで入りましょう」


 唯がバタバタと綾を連れて部屋を出た途端涙が出てきた。


「っう、……くっ……」


 お父様も南条もいるのに、涙が止まらない。


 もう学年も上がってお兄さんなのに葵に会えないと思うと涙が止まらなかった。


 お父様が僕の頭を撫でながら褒めてくれた。


「貴祥よく我慢したな。すぐには難しいと思うが、葵に会えるようにしてやるからそれまで我慢できるか?」


「葵と会えるのなら我慢します」


 先になるだろうけど葵に会えると思ったら、涙が堪えられるようになった。


「よし、葵を貴祥の許嫁としよう。南条急ぎ調整するように。待て東条には打診するだけで、許嫁とするのは綾とまた遊ぶようになってからにしよう」


「かしこまりました」


 南条が部屋を出て行ったが、僕には許嫁が分からなかった。


「お父様許嫁はなんですか?」


「あぁ、許嫁とは将来年頃になったら結婚しましょうと約束しておくことだ」


「結婚を約束。お父様お願いします。葵を誰にも渡したくありません」


「そうか、分かった。でも貴祥まだ二人は幼い。将来結婚しましょうと約束しておくだけで、間違いなく結婚できるわけではないからな。葵と結婚できるよう、よく学びよき当主となれるよう努力しなさい」


「はい。分かりました」


 葵と結婚するために頑張るのだと誓った。


読んで頂きありがとうございます。

以前数話だけアップしたことがありますが、自分で強引だなと思った所が、このままでは読んでもらえないだろうと思い全面書き直し加筆しました。

タイトルは変えましたが、見かけたことがある設定や名前かもしれません。


短編も書いたことが無い無名の人間が、何となく考えた設定をコロナで外出自粛になり時間が出来たので書いたらこうなってしまいました。


無名で設定を考えた時に賞に応募するのも難しいだろと早々に諦めたので無茶しました。

気長に読んで頂けたらうれしいです。


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