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『サーシャ、大きくなったなぁ。一年前はこんなに小さかったはずなのに』
馬車から降りるなり、お祖父様が私を抱き上げて笑う。
『もうお祖父様ったら!そんなに小さくなんてなかったはずですわ』
『そんなに頬を膨らませて。リスみたいで可愛いのぉ』
『・・・・・・・』
やっぱりお義父様とお祖父様は親子だわ。
『あなた、サーシャも困ってしまうでしょう?さぁ、わたくしにもお顔を見せて頂戴』
お義父様に手を引かれてお祖母様が馬車から降りてくる。
『お祖母様。お久しゅうございます。遠路はるばるようこそおこし下さいました』
お祖父様の手を離れて、お祖母様の前でカテーシーをする。
『まぁ。サーシャもすっかりレディーになって』
嬉しそうにお祖母様が微笑まれる。お祖母様は隣国からお祖父様の元に嫁がれた元王女様。
一緒に過ごした数年間、お祖母様に淑女としての教育をしていただいた。お祖父様とお祖母様がお義父様に家督を譲って領地に移られてからは、年に1度、わたくしの誕生日に合わせて王都に戻り数か月程度過ごされている。
『大旦那様、大奥様』
『あぁ。バーバラ。お前も息災ないか?』
『はい。お陰様で。坊ちゃまやサーシャ様がよくして下さいます』
『そうなのね。よかったわ』
バーバラーはお祖母様がお嫁に来る時に一緒に隣国からやってきた侍女で、本来であればお祖母様が領地に移られた時に同行する予定だったが、お義父様が結婚されるまではと王都に残り本邸を取り仕切っている。
小さい頃から世話をしてきたバーバラーには、お義父様も頭が上がらないみたい。
『日差しも強うございます。ささ、お部屋の中へ。長時間馬車に揺られてお疲れでしょう。お茶などはいかがでしょうか?』
『そうね。久しぶりにバーバラの入れたお茶が飲みたいわ』
『かしこまりました、大奥様』