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一番仲の悪い女子が俺の前の座席になった件  作者: ラブ★コメディアン
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第九話 四月四-五週(前編・南視点)

 クラスメートに全力疾走を見られた女がいる。

 

 そう、私だ。


『花も恥じらう乙女』なんて言いつつ、思い切り恥ずかしい姿を披露してしまった。

 穴があったら入りたい。


 穴の代わりに電車に飛び込んだ私だったが、一つだけ収穫があった。


 いつも見かけない遼太郎の電車の時間が分かったのだ。

 

 入学してから今日まで、遼太郎との関係を改善することはできていなかったが、同じ帰り道だったら何かしらのきっかけが見つかるはず。


 そう考えた私は、遼太郎に遭遇した時間に帰ることにした。

 毎回会える訳ではないが、以前よりも同じ電車に乗っていることが増えた気がする。

 ただ、電車内の遼太郎はまるで息を殺しているかのように小さくなっており、降車駅までピクリとも動かず、話しかけることなんてできない。

 かと思えば、物凄い速さで電車から降りて、トイレに駆け込む。


 お腹が弱いのだろうか。


 いっそ、トイレから出た時に胃腸薬でも渡してあげようかと考えたが、いきなり私がトイレの前で待ち構えていたら遼太郎も驚いてしまうかもしれない。

 というか、私ができない。

 それくらい、平気でできるくらいまでの関係になれば良いのだけど……。


 そんなことを考えながら日々を過ごしていると、ゴールデンウィークの前日になった。

 中学時代の友人と会ったり、高校でできた友人と遊んだりと、ゴールデンウィークの予定はほとんど埋まっている。


 そういえば、今日は遼太郎の姿をクラスで見かけなかった。

 朝は登校していた気がするので、またお腹が痛くなって早退したのかもしれない。


 ……そんな風に考えていたが、帰りの電車で一緒になった。

 存在感を消していたかと思えば、駅に着いた途端トイレに駆け込む遼太郎。

 もしかして、一日中トイレに行っていて、授業に出られなかったのかな?


 ……思春期の男子だ、トイレの回数を指摘されたら、しかも私からこんなことを言われたら、遼太郎との仲も更に険悪になるかもしれない。


 そんなことを考えながら駅を出て、駐輪場に向かっていた。

 他に降車客の姿もなく、私一人で歩いていると、駐輪場に人影があった。

 三人の男がチラリと私の方を見て、何事か話し始めた。


 その横を通り過ぎようとした時、いきなり声を掛けられた。


「……ねーねー、今帰り?」

「……」


 声を掛けられた瞬間、少し震えてしまった。

 無視したまま立ち去ろうとすると、一人の男が私の前に来た。


「え、ちょっと待ってよ」

「少しだけ俺らと話さない?」


 続いてもう一人、私の前を囲むように立ちはだかる。


 こ、怖い……。

 

「……い、急いでるんで……」

「あ、話してくれた!」

「この時間だったらもう帰るだけでしょ」

「ちょっとだけ、ちょっとでいいから」


 少しずつ近づいてくる三人。


 ……きっと、この三人は誰もいないと思って、強気に出ている。

 ここで誰か来てくれれば……。

 そうだ!

 遼太郎が、まだ駅から出てきていない!

 大きな声を出せば、気付いてくれるかも……。


「……や、やめてください!」


 先程よりも強めに、拒否の声を上げる。

 これで引いてくれれば良い、引かなければ……。


「はっ? 何もしてねーじゃん」

「何もやめらんねーよ」

「わ、私もう帰るから……」

「いやいやいやいや」

「明日から休みなんだから、遅くなっても大丈夫っしょ」

「い、いや……」


 しかし、三人は全く引いてくれなかった。

 それどころか、どんどん距離を詰めてくる。

 遼太郎は出てこない。

 まだトイレにいるのだろうか。


 一人が手を伸ばして、私に触れた。


 遼太郎じゃなくても良い、誰かっ……。


 そう思った瞬間、後ろから声が聞こえた。


「お、お、お前達、何やってるんですかぁっ!」

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