カルテット〜雪中四友〜
太陽が反射して光る白い大地。
雪。
表面は少しずつ溶けていっているよう。
薄氷の池を覗き込んでいた仙々は、突然落ちてきた重さに首を振った。
「冷たっ! 蠟々……雪落とすときは言ってって言ってるじゃん」
「ごめん!! ちょっと手を動かしただけで、落ちると思わなかったんだよ」
「僕は上からの重さに弱いんだからね」
「気をつけるよ」
今度は気をつけて真下に落ちないよう、ツヤのある黄色い手をフルフルした。
「ちょっと! か弱い乙女に対する礼儀がなってないわ」
「ご、ごめん。玉々」
玉々は白い頬をふくらませて蠟々をにらんだ。
「謝ればいいってものじゃないのよ。これ以上濡れたくないのに」
仙々が顔を動かさない範囲で見える玉々に、軽く触れる。
「玉々は、白さにキラキラ感が増して、いいじゃん」
「仙々も仙々よ。たまには上を向きなさい」
玉々は矛先を変える。
「僕の性格知ってて言ってる?」
「もちろん。でも、私たちは、か弱いなりに雪の重みにも寒さにも耐えることができる強さもあるのよ。自信持ちなさい……って、あなたは自信しかなかったわね」
白い指を光を求めるように空へ伸ばす。
「暖かくなってきたわね」
玉々の言葉に、茶々が静かに肯く。
「そろそろ探しに行かなきゃかなぁ」
蠟々がのんびり口調で言う。
「そうだね。僕の足もそろそろ限界かも」
「今年は寒かったから、私たち輝いてたでしょうね。ふふふ」
「うん。仙々、玉々、茶々。探しに行こう、春を!」
元気いっぱい叫んだとき、白い大地に赤いものがポトリと落ちた。
「「「え!?」」」
キレイに3つの声が重なる。
「茶々!?」
珍しく顔を上げた仙々。
白い頬がほんのり赤みを帯びた玉々。
テリが増した蠟々。
それぞれが、いつも静かな茶々にアクションがあったことに驚いた。
茶々じゃない。
「やだ。いつの間に……入れ替わってたの」
「春を探しに行く前に、茶々を探しに行かないと。僕らのカルテットが成り立たない」