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俺の怖い話  作者: 大塚
3/3

真夏の海水浴場2


次に目が覚めたのは、随分と日が高くなってからだった。

俺が寝てる間に父さんが砂浜に、テントや日除けのパラソルなんかを設置していて、母さんも父さんもビニールで出来たベッド、通称ボンボンベッドで寛いでいた。


車から出て来た俺を見ると、やっと起きたの?かぁ君もミーも、とっくに海で遊んでるわよ!と言って母さんが朝ごはんのおにぎりを渡してくる。


起こしてくれればよかったのに!と文句を言いつつ大急ぎで食べて、かぁ君とミーのところへ行くと、知らない男の子、多分同じくらいの歳の子が一緒に遊んでいた。


一緒に遊ぶ!!と叫びながら走って行くと、ミーがこの子、蓮と同じ歳なんだって!と言いながら男の子を連れて寄って来た。


男の子はケンタと言うらしい。

じゃあケンタと蓮は危ないから砂浜で遊んでて!と言いながらミーは浮き輪を持って離れていく。


え?知らない子と2人?と思いながらも、俺は泳げなかったので、しぶしぶケンタと砂浜で遊ぶ事にした。


なんだかんだで小学生同士気が合って、結局夕方になるまで2人で遊んでしまった。かぁ君とミーは何時間も前に母さんたちの所に戻ってドン君と遊んでいたし、そろそろ俺も戻ろうかな?って思っているとケンタのお母さんが呼びに来た。


凄く優しそうなお母さんで、ケンタと遊んでくれてありがとう。もう暗くなるからテントまで送って行くね。と言って俺とケンタの手を握ってテントまで送ってくれた。


俺の母さんは、折角だから一緒にバーベキューでもどうですか?とケンタとケンタのお母さんを誘って、みんなでバーベキューする事に。


結局、母さん同士も気が合ったみたいで、みんなで写真撮ったり花火したりと、家族同士も、かなり仲良くなった。


次の日も朝からケンタとビーチボールで遊んだり、探検したりして過ごした。そして夕陽が沈む頃、なんとなく寂しい気持ちになりつつも、明日帰るから、来年もここで遊ぼう!と言うとケンタは寂しそうに、うん。と呟いて、自分達のテントの方へと帰って行った。



今年のキャンプ最後の晩に、家族みんながテントで寝てる頃、俺はボンボンベッドに寝転がり、星空を見ながら今年は楽しかったなーなんて考えていた。明日帰る前に、ケンタに会えるかな?って思っていると、急にドン君が吠え出した。普段は全然吠えないのに、海の方を見ながら気が狂ったように唸りながら吠えている。こんなに吠えてるのに、なんで誰も起きてこないんだろう?と思っていると、海の方からケンタと、そのお母さんが歩いてきた。


え?こんな時間になんで?って思っていると、ケンタがニコニコ笑いながら、凄く面白いところがあるから一緒に行こう!と俺の手を握ってきた。その手が異様に冷たくて、俺は怖くて振り解いてしまった。母さんに怒られるから行けない。そう言って断ってもケンタも、ケンタのお母さんも、大丈夫だから一緒に行こう!ってしつこく迫ってくる。壊れたように、行こうよ。行こうよ。と繰り返し続ける2人から逃げるように、牙を剥き出したドン君を抱きかかえて、母さん達が眠るテントに飛び込んだ。


2人の声は聞こえないけど、テントの周りを人が歩いてる音がしている。怖くて震えることしかできない。



そしていつの間にか眠ってしまっていた俺は、朝になり、母さんに起こされた。すでにテントの片付けを始めていた父さんの手伝いをして、忘れ物の確認をしてからハイエースに乗り込んだ。走り出した車の中で、今年のキャンプも終わりかーなんて思いながら窓の外を見ると、同じ歳くらいの男の子と、その母親らしき人が手を振っていた。なんか見た事あるような?そんな不思議な気持ちで家に帰り着いた。




それから、数週間。

夏休みも終わってそろそろ寒くなってくる頃、母さんが漸く、キャンプで撮った写真を現像して来たらしい。


その写真は、楽しそうに笑う3人兄弟と、両親だけが写っていた。

別に、これと言って深く考えて言ったわけではないけど、母さんに海で仲良くなった男の子の写真は?って聞いていた。

何一つ覚えていなかったけど、男の子の写真が一つもないって思い、口に出した瞬間に、俺は思い出した。海で仲良くなった男の子事も、最後の晩に何処かへ連れて行かれそうになった事も。


そして、その男の子の顔も名前も思い出せないことも。



それから、俺は父さんや、かぁ君にミーにも何度も何度も、それこそ母さんに怒られるまで男の子のことを聞いたけど、誰も覚えてなかった。

結局、俺が夢を見ていた。という結論に至って、俺はその話をするのをやめた。

あの時、もしも、あの2人に着いて行っていたら。

もしも、ドン君が吠えていなければ。


俺は誰に、どこに連れて行かれたんだろう。


その次の年も、次の次の年も、その子に会うことはなかった。


そして気掛かりなのは、パーキングエリアに居た霊も、次の年から見なくなった。

俺に着いて来ていないと願うばかりだ。



男の子の名前はケンタと書いてますが、実際には覚えておりません。

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