表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/26

第七話 息子達の進路相談・ノア編

 タケトン・スクール一日目は順調に進んでいる。


 まずホームルームの顔合わせ。

 ここで子供達の心を完璧に掴んだ。

 

 そして一時限目。

 今後みんなで挑戦するクエストについて、じゅうぶんに相談出来た。

 ここでもタケトン先生の情報収集能力の高さに、みんなびっくりしてたな。

 

 次は、二時限目だ。

 個人面談&進路相談やりまーす。




 宿屋の一室を借り、僕はまずノアと面談をしていた。


「ずっとノアを見てきた先生としては、君は誰かを助けたり守るようなクラスがいいんじゃないかな?」


 他の二人は、別の部屋で待機してもらっている。

 僕の電子書籍コレクションから、『名探偵コラン』最新156巻まで貸してきたので退屈することはないだろう。


「先生とは今日会ったばっかりなんですけど……こういうときは、父さん設定より先生なんですね」

「そうだな。こういうときだけ先生で、君達と思いっきり遊んだり頼りたいときはお父さんかな」

「そ、そうですか……」


 ノアは真面目だから、僕との会話に四苦八苦しているのが可愛い。


 しかしながらチート級に顔が良い子やな。

 男子の顔の良し悪しに興味無くても、イケメンか非イケメンかくらいはドワーフにも分かる。

 中学のときクラスで一番イケメンで〈ジュノン〉てあだ名付けられてた鈴木くんを思い出すぜ。ギャル系女子に群がられてた鈴木くんに「山本とゲームしてるのが一番おもろい」と言わしめた我ぞ。


「ちょっと気になってたんだけど、ノアのアバターってどんくらいいじってる?」

「アバター?」


 最初は、僕みたいに自分の容姿をダウンロードして、そっから骨格はそのままで、肉付きは好きにしてもらったはずだ。


「髪と目の色を変えただけですけど」

「ジュノン!!!」


 思わず叫んだ。鈴木族やこの子。


「誰ですか? ゲームの中のお知り合いですか?」


 目をぱちくりさせるノア。


「あ、いや……古い友達」


 彼はマジで俳優さんになってしまったので、同窓会とかにも来ないのだ。テレビに出るような有名人ではないが、劇団に入っているとか。

 同窓会のとき、元ギャル系からびっくりするくらいマダム化していた女子に聞いた。


 あだ名がジュノンなのを鈴木くんはけっこう嫌がっていたので、顔が良いこともいじりの対象になったりするんだと当時は思ったものだ。

 中学生は多感だし、気にする子は気にするだろうから、あまりそういうことは言わないでおこう。


「ノアはしっかり者だし、お父さんや弟達を守ってくれる盾剣士ファイターとかどうだろう?」

「ええと、前衛職タンクというやつですか?」

「そうそう」


盾剣士ファイター〉は、剣と盾を装備し、戦闘の最前列で敵の攻撃を受け、攻撃もする。


 前衛職タンクと呼ばれる役割で、タンクが敵の攻撃を真っ先に受けている間に、攻撃役アタッカーが攻撃するわけだ。


 盾剣士ファイターは攻防に優れており、成長のさせ方によっては魔法も覚えられる。


 ベースとなるステータスはこんなかんじ。


 体力・高め。

 筋力・やや高め。

 防御力・やや高め。

 敏捷性・普通。

 魔力・やや高め。

 精霊力・普通

 信仰力・普通。


 尖った長所も無いぶん、特に悪い所もない、バランスの取れた職だ。


 僕の斧戦士ウォリアーも同じく前衛職だが、盾剣士ファイターに比べると筋力と防御力は高めで、素早さと魔力が低めだ。


 盾剣士ファイターは魔法系ほどではないが、魔力の素養もあるから、そっちを伸ばして〈魔法戦士ミストファイター〉系統に進んでいくことも出来る。

 ベタな職でありながら、のちのち夢が広がりやすい。そのぶん中途半端にもなりやすいから、みんな慎重に成長させがちで、晩成型かもしれない。


 僕はドワーフ種族としての資質も込みで、戦士系だけを伸ばしてくと、〈蛮族戦士バーバリアン〉系統にまっしぐらだよ。


「攻撃も防御も出来るから、万能型といえる反面、尖った特徴もない。敵が強くなればなるほど、仲間の協力は必要になるけど」

「ソロ攻略なんてしないから、それは大丈夫ですけど」

「うん。そうだな。あと、ノアが選んだ人間族ヒューメイの最大の特徴といえるものがあるんだけど、なんだと思う?」


 予習しているっぽいので、授業っぽく訊いてみた。

 真面目な顔で、ノアはちょっと考え、答えた。


「バランスの取れたステータスですか?」

「そうなんだけど、実は信仰力なんだ。神様を信じる力っていうと大雑把だけど」

「……? ヒューメイはそんなに信仰力高くないと思いますけど」

「いや、そこじゃない。このゲーム、信仰を選べる神様は種族によって限られているんだ。大地の似合うドワーフがほとんど皆アイエネの信徒になるなんてこと、ワーブリが許すわけないだろ?」


 アイエネは月の女神だ。美人の女神というか、見た目が美少女なのだ。


 デモンズが光の神の信徒とか変だし。

 森を愛するエルフが炎の神を大崇拝とか。


 そんなわけで種族によって信仰対象として選べない神様がいるわけだが、特殊な条件化で選べるようにはなるらしい。


「これが、ヒューメイとハーフヒューだけは、ほぼどの神様も最初から選べるようになっているんだ。これが最大の特徴だと思う。特殊な信仰系のクエストをクリアしなくても、好きな神様を選べるんだから」

「神様と言っても、よく知らないんですけど……」

「まあとりあえず抑えとくなら、この世界の主神である最高神ダイゼル、その奥さんの最高女神じょしんメメテル、それから各国でメイン信仰されている八柱神と、それ以外の有象無象の神様……」

「か、神様だけでそんなにいるんですか!?」

「なんなら条件満たせば新興宗教だって起こせるから」


 ノアが慌ててウィンドウを開き、メモを始めようとするので、僕も慌てて止めた。


「いや、神様については今度本買ってあげるから! メモしてるとキリない! 二人が名探偵コランを読破しちゃうよ!?」


 開発に宗教班でもいるのかってくらい、神話まで細かく設定されてるんだぞ、このゲームは!


「信仰力で起こせる奇跡ミラクルは、回復や防御、ステータス向上とか宗派によって様々だし、盾剣士とは相性が良いよ」


「それって、毎日仏壇に手を合わせるようなことですか……?」

「うーん、まあそういう認識でいいんじゃない?」


 実は宗派によって食べてはいけない食べ物とかまである。ノアはVRメシが苦手みたいだから問題ないだろうが。

 すごいのになると、モンスターの殺生NGとかまであるからな。戦いのトドメは仲間任せか、ひたすら逃げるを繰り返すしかないという……。そんな無理ゲーにあえて挑んで極めていくガチ勢もいるが。


「お父さんや弟達を守って戦うのはどうかなーと思って。僕も前衛職だけど、ちょっと動きが遅いんだよね」

「たしかに、見ている限り、イグアスは複雑な動きが出来るからメインの攻撃役アタッカーが向いてそうだし、セイヴは魔族デモンズだから、魔力の高さを生かした職業クラスがいいですよね」

「そうそう!」


 くぅー! 初心者だけど分かってる! さす長男。

 僕、こういう役割を分担してく相談、好きなんだよな。


 それこそ鈴木くんたちとゲームやってた中坊時代も、こんなフルダイブ型じゃなかったけど、みんなでVRゴーグル付けて部屋でジタバタ手足を動かしながら、「山本気持ち悪い動きめちゃくちゃ上手いから暗黒司教ダークビショップな!」とかやってたなぁ。

 いま思えば気持ち悪い動き上手いから暗黒司教ダークビショップって、暗黒司教ダークビショップを何だと思っているのか。

 この世界で暗黒司教ダークビショップに会ったら謝ろう。


 僕が思い出に浸っている間も、ノアは真面目に自分の進路について考えていた。


「そうなると、俺は残ったタンクをやるのが、いいのかな。別にこれがやりたいとかないし」

「他にやりたいことが出来たら、相談に乗るよ」

「はい。ステータスの伸ばし方とか、信仰する神様とかは、相談に乗ってほしいです」

「うんうん、ステータスもバランス良く伸ばせるから、転職も難しくないし、上級職も幅広いほうだと思うよ。聖騎士パラディンとか、神殿騎士テンプルナイトとか、カッチリした職業もノアには向いてそうだな。更に極めていくと、神聖騎士ディバインナイトっていうユニーククラスもあってさ、ユニーククラスっていうのは、なれる人数が決まってるんだけど……」

「ま、待ってください。そ、それって、今じゃなくてもいい話ですよね?」


 いきなりの情報量に、ノアが慌て出す。

 おっとっと危ない、脱線しかけてた。


 友達に役割振るの好きだったんだよなー。逆に役割振られて暗黒司教ダークビショップやってたけど。気持ちの悪い動きを買われて。


「ユニーククラスって、プロとか、トップゲーマーとかがなるやつですよね? そこまではちょっとやり込めないと思うんですが……毎日出来ないし」


 そうだった。タケトン・スクールの冒険は、週末だけと決まっていたのだ。

 ショボーン……。お父さんすでにちょっと寂しい。


「じゃあ俺は、初期職は盾剣士ファイターにします」

「うん、いいと思うよ」


 それこそゲームやアニメの主役っぽい見た目だし。

 とは言わないが。


「ところで、これは別にクラスと関係ないんだけど、ノアはゲームやアニメとかで金髪碧眼のキャラクター好きなの?」

「え? いや、別に。そんなにゲームもアニメも詳しくないし……」


 きょとんとする美少年。

 美少女じゃなくて良かったわ。やっぱ女の子とは全力で遊べん。


 代々木坂45とかテレビに出てるぶんには観るし、可愛いとは思うけど、あん中に入って一緒にゲームしてやってくれって言われたら、手放しでは喜べない何かはある。得意な気持ち悪い動きとか狙ったやつじゃなくてガチになってしまいそう。緊張で。


 可愛い女の子の集団はさ、入るものじゃない、見るものだ。


 なんてドワーフの頭の中を知るよしもないノアが、不安げな顔をしていた。


「あの……父上? 俺、なんか間違ってますか……?」


「え? いやいや。なんで、カラーリングそうしたのかなって」

「カラーを選ぶときに、ランダム生成っていうのがあったので、それにしただけですけど」


 うおお。鈴木族ともなるとゲームのほうからこの顔に金髪碧眼チョイスしてくんのかよ。それだけでもう選ばれしかんじするぜ。


 こうしてつつがなく、長男の進路相談は終わった。

今日中に全員進路相談を終える予定です。終わったら感想返しなどさせていただきたいです! とても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ