プロローグ
こんにちは、はちみつゆずと申します。
いつも短編ばかりなわたくしですが、今回はじめて連載ものに挑戦しました。
実力のなさに愕然!!でも頑張りましたので、皆様の有意義な暇つぶしのお手伝いが出来れば幸いです。
「こんなもんかなぁ、招待状送る人」
「そぉだねぇ…」
街に並ぶ木々の葉の色もだいぶ変わり、風も冷たくなってきた今日この頃。
あたしは愛する未来の旦那様と、暖かい部屋で招待状の準備をしていた。
―そぅ、結婚式の。
「よし、これでオッケーだね」
「うん、引き出物も決まったし…」
「それにしても、ここまでだいぶ時間かかっちまったなぁ」
「婚約してから…1年半くらい?」
「だな。まさか結婚するのにこんなに準備がいると思わなかったよ」
「何言ってるのよ。ほとんど準備したのはあたし。コウちゃんは体育祭だ文化祭だ、学力テストだ修学旅行だなんだかんだでちっとも話きいてくれなかったじゃない。最初に式場がなかなか決められなかったせいもあるんだからね〜!」
あたしはわざと膨れっ面で言ってみた。
「そーだった!ゴメンゴメン。教職は何かとイベント事が多いからなぁ」
申し訳なさそうに頭をかく恋人が、あたしは愛しくてたまらない。
「…ふふ。ちょっと言ってみただけ。先生してるコウちゃんが好きで、婚約したんだもん」
そぅ言ってソファによりかかるコウちゃんの側に寄ると、コウちゃんは優しい笑顔とたくましい腕であたしを包みこんだ。
「籍だけ先に入れてても良かったのに」
あたしがつぶやくと、コウちゃんはう〜ん、と唸った。
「や、でもさ。やっぱ式を終えてからっていう俺の"結婚"のイメージがさ」
「はいはい」
「…俺は幸せ者だよ」
"俺は幸せ者だよ"
この言葉はコウちゃんの口癖であり、あたしをも幸せ者にする魔法の言葉。
このあたたかい空気、体温を感じる恋人があたしのたからもの。
"幸せになれよ"
「…どうした?瑞穂」
「ん、…うぅん、なんでもないよ。テレビでもつけようか」
あたしはテーブルに散乱した招待状のリストをまとめてテレビのリモコンを探した。
ふとした瞬間心に甦る、あのひとの声。
"瑞穂、幸せになれよ"
コウちゃんの、知らない人。