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車でラブコメを書いてみた  作者: まるたん
四回目・泥酔車とミキ
17/33

【3】

「ツイストさん」


「なんだ?」


「いたんですね」


「いたよ! さっきから、ずっとこの部屋にいたよ!」


 ツイストはちょっと傷付いた。


「ったく……酔い過ぎだ。次は戦い方だけではなく、飲み方も教えてやる」


 嘆息混じりにツイストは言う。


 余談だが、命の危険が迫っているという事もあり、ツイストから軽い護身術等を習っていたのだった。


 そんなツイストのグラスに注がれていたのは、烏龍茶。


 これは別に彼がゲコだからと言うわけではない。


 単純に、真を送る目的から、敢えてハンドルキーパーをしていたのだ。


 飲酒運転はしないのである。


 この辺りの関係もあり、ツイストは完全にシラフの状態だった。


 ……が、だ?


 他は見事に全滅。


 プリウは最初から海に何かされて、ワインボトルを口に突っ込んだまま寝ていたし、海も海で今はケタケタ笑っている。


 辛うじて意識があった物の、いつ寝こけてもおかしくない状態だった。


 視点を変えると、テーブルに仲良く突っ伏す女の子二人がいる。


 ノースと真だ。


 年齢不詳のノースは良いとして、まだ十八歳の真まで酔い潰れていた。


 尚、このお話はフィクションである。実際の世界では二十歳にならないとお酒は飲めません……と、注意書きはして置こう。


 余談もそこそこに。


 龍虎の戦いを演じ始めた二人は、いきなり何を思ったのか、飲み比べ対決をはじめてしまったのだ。


 その結果がこれである。


 ノースと真の負けられない、女の意地の張り合いは、仲良くダブルノックアウトと言う形で決着が着いたのだった。


「もう、完全にお開きにしても大丈夫そうだな」


 この光景を見て、ツイストは顎に手を当てて答えた。


 そんな時だった。


「う~……眠い~」


 目をしょぼしょぼさせた海は、目を擦りながら言うと、そのままノソノソと歩き始める。


 ああ、寝室にでも行くのかなと、その時の隆太は軽く考えてた。


 その考えが砂糖水より甘いと分かったのは、そこから数十秒後だった。


「………? 海?」


 ノソノソと向かったのは、何故か玄関。


 しかも、靴もはかずに家から外へと出て行ってしまった。


「……えぇと?」


 何が起きているのだろう?


 ふと、そんな事を考える。


「追いかけた方が良いんじゃないのか?」


「……え?」


「いや、さっきの嬢ちゃん……確実におかしかったし」


 確かにおかしい。


 根拠もある。完全に泥酔していたのだから。


 そんな海が、一人、外に出て行ってしまった……と、言う事は?


「……まさか、な」


 隆太の額から、嫌な汗が出た。


 直後、隆太も外に飛び出す。


 少し遅れて、ツイストもやって来た。


「急ごう。今の嬢ちゃんは危険だ」


「はい!」


 素早く玄関を出て、そこからマンション通路を疾走する。


 そのまま全力で階段を駆け降り、直ぐ様、マンションの外に出た。


 ――刹那。


 キュイィィィン!


 モーター音と共に、一台の車がマンションから走り去ろうとしていた。


 尋常ではない速度だった。


「遅かったか……」


 ツイストは苦虫を噛む顔になった。


「この場合、飲酒運転になるのでしょうか?」


 程なくして、隆太が素朴な疑問を口にした。


「飲酒運転にはならんよ。そもそも、運転者がいないんだからな」


 車その物が飲酒している。


 当然、こんな滑稽な法律など、現時点では制定されていない。


「……とはいえ、厄介な事になった」


 一歩遅れてやって来た二人は、完全に海を見失っていた。


「……大丈夫。私がいる」


 程なくして、思わぬ角度からノースの声が二人の耳へと転がって来る。


「……? ノースさん?」


「警部……身体は大丈夫ですか?」


 酔い潰れていた筈の彼女を見て、二人は少し不安気に声を掛けた。


 二人の視線を結果的に浴びていたノースは、しかし足取りこそおぼつかない物の……その意識はしっかりしていたらしく、


「問題ないわ」


 ポツリと、いつもの能面な表情で二人へと返答した。

    

 まもなく、彼女は右手を掲げる。


「サーチ………」


 ポソ………と、ノースが述べると、


 ウォンッ!


 彼女の周囲にいくつかの画面の様なものが出現する。


 画面の内容は様々だ。


 近くの風景を映し出す映像であったり、地図だったり……はたまた、なんらかのコンピューター言語らしき文字が、超高速で並べられては消えたりしている。


「捜索開始……ヒット」


 ノースが答えると、画面は二つに絞られる。


 その一つの画面に、海と思われる車が、想像以上の早さで快走しているのが映し出された。


「行動予測、及び予測されるルートを演算……」


 ノースが答えると、画面は一つになる。 


 出て来た物は地図だ。


 地図は、郡浜を始点として、以後点線状の矢印を描く。


 恐らく、この点線が海の行動予測地点なのだろう。


「……っ!」


 ツイストは目を大きく見開いた。


 いや、ノースもまた、動揺の色を隠せない。


「どうしたんです?」


「………この地点。覚えていない?」


 画面を指差してノースは言った。


「………? えぇと、ここは……」


 凝視する形で隆太は地図を見た。


 最終予測地点。


 そこは――


「鹿苗代?」


 隆太の眉がよじれた。


 ノースはコクリと頷く。


「そう、鹿苗代」


「まずいな……あそこには、まだ、時空転移ポイントが残っていた筈だ」


 神妙な顔のツイストは、まもなく身体を動かす。


「行くぞ、隆太! このままだと、海の嬢ちゃん……未来に帰っちまう」


「――なっ!」


 余りに衝撃的だった。


 海が………未来……に?


 切なさが胸を圧迫した。


 不思議でもある……別に、海とはそこまでの付き合いでも何でもない。


 ほんの数日……精々、十日程度の付き合いだ。


 なのに、どうして?


 どうして………心がこんなにも悲鳴を上げるんだろう?


「なにしてる! サッサとしろ!」


 怒号が飛んで来た。


 どうやら、自分でも無意識の内に、ほうけていた模様だ。


「はいっ!」


 隆太はハッとなり、表情を瞬時に引き締めて、ツイストの後を追いかけた。


「………」


 他方、その一部始終を見るノース。


 相変わらず能面だったが、その瞳には、なんらかの強い熱情を感じた。


 そして、彼女は言った。


「残念だけど……私も、智也ともやを諦める事は出来ない。仕事は遂行するけど、それ以上の手助けは出来ない……したくないから」




 ★☆★☆★




 すっかり陽が暮れ、月が空の中心になりつつあった郡浜の道を、一台の車が激走する。


 ツイストの愛車である、スズモト・ツイフトだ。


 コンパクトカーでありながら、走る為に生まれた直菅ターボの優れ物。


 更に色々と改造しているらしく、従来のツイフトにはない物が多数存在している。


 例えば、ギアはマニュアル。


 しかも六速だ。


 状況に合わせ、物凄い勢いでシフトチェンジしている。


 ウォォォォンッ!


 吠える直菅ターボは、明らかに標準仕様とは別の重低音を奏でていた。


 しかし、これは未来車仕様ではなかったのだろう。


「ツ、ツイストさん! す、少し運転が荒くないですか!?」


 その加速も揺れもダイレクトで乗り手にやって来る。


 完全に未来の車だったプリウ辺りと乗り心地を比べると、どうしても差を感じてしまった。


 しかし、ここは仕方ない。


 百年近い差があるのだから。

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