【5】
「これで、落ち着いて話が出来る。ジャン○だけ買えなくなったのは痛い損失だけど」
「まだそのネタを引っ張るのか……」
「そんなつもりはない。ちゃんと大事な話しはある。……でもジャン○は私の生き甲斐……」
本気で肩を落としていた。
もう、ツッコミを入れるのも嫌になって来た。
「後で買ってあげるから、とりあえず、その話は終わって下さい」
「えっ!……」
溜め息もそこそこの隆太に、ノースは頬を赤らめた。
「それは……プロポーズの言葉なの?」
「ジャン○で結婚出来るのかい!」
どんだけ安い女なのだろう。
もう、驚く事しか出来なかった。
「そうね。貴方は私好み。だからと言って、物で釣るのは良くないわ」
「安心して下さい。釣ってません」
「もしかして、私の心をもてあそんでる?!」
むしろ、遊ばれてる気分だった。
「そろそろ、真面目に話をしましょうか。こっちの精神がもたないので」
「分かった、結婚の事は真剣に善処する」
取り合えず、出て行って貰おうと思った。
ピンポーン
その時、自宅の呼び鈴が鳴る。
程なくして、海がトタトタと小走りに玄関へと向かうと、そのままドアを開けた。
「はい、どな……」
気楽な口調で言った海の顔が、この瞬間にフリーズする。
そこにいたのは、昨夜、海を捕まえた筋肉質の男が立っていた。
「うきゃぁぁぁ! 大変です! 人さらいがまた来たのですっ!」
「人さらいとは、ご挨拶だな」
悲鳴を上げながら隆太の元へと逃げて行く海を前に、男は少しだけつまらない顔になる。
そして、
「誰かと思えば、ロリコンのツイストじゃない」
「ロリじゃないですから!」
その直後に能面のまま答えたノースの言葉を耳にして眉を大きくつり上げた。
「よう、兄ちゃん。元気そうだな」
ニッと、軽やかな笑みを作る男。
隆太は安堵の息を吐き出した。
「良かった。あなたはマトモそうだ」
「まとも? ロリコンはまともではないわ。訂正すべき」
他方の銀髪少女は、途方もなくおかしな人だった。
取り合えず、無視しておく。
「えぇと、お互いにまだ自己紹介してませんでしたね。俺の名前は鈴木隆太。学生です」
「じゃあ俺も自己紹介しておこう。ツイストだ。ツイスト・吉原」
「ハーフですか?」
男……ツイストの言葉に、隆太は以外そうな顔になる。
見る限り、普通の日本人にみえたからだ。
「母親が北欧系でな。この時代だと国の名前が違うから、言えないが、ハーフではある」
「そうですか」
良かった、本当にまともだと、隆太は心から安堵の息を吐き出す。
そして、思った。
「どうして、ノースさんと一緒に来なかったのです?」
そうしてくれれば、さっきの様な疲れる会話をしなくても良かったのに。
内心で毒づいてる隆太の質問に答えたのは、ノースだった。
「ロリコンだから」
でも、答えになってなかった。
「まだ、こっちの時代に来たばかりで、準備もないと思った俺は、警部を自宅に連れて行こうとしたんだが『ロリコンの家に行ったら、三ヶ月後には妊婦になってしまうから遠慮する』とか言われたんだ」
ツイストは苦い顔で言う。
ある意味災難だった。
「当然だが、俺はそんな事をする様な男ではないし、ロリコンでもない」
「大丈夫です。そこは疑ってませんから」
「疑うべき」
『もう、黙ってて下さいよ!』
直後にポツリと会話に入って来たノースに、隆太とツイストの声が重なった。
「取り合えず、話をしよう。良いか? これは隆太……お前にとってかなり重要な話になる」
「重要な話?」
「きっと、ジャン……あ、こら! なにするの! 離しなさい!」
またもや会話に割り込んで来たノースだったが、全てを言い終わるより早く、海とプリウの二人に連れて行かれた。
やっと、話しが出来そうだった。
「邪魔者はいなくなりました。話しを続けて下さい」
「一応上司だから、少し気が引けるが……確かに話しはしやすくなったな」
そこから、ツイストは仕切り直す形で再び口を開いた。
「今、俺たちがここにいる。この時点で、本来は起こる筈のないパラドクスを既に引き起こしている」
「実際、貴方がたは、未来の存在ですからね」
「そうだ」
納得混じりの隆太に、ツイストは短く頷きだけを返した。
「だらだら話しをするのは性に合わない。だから率直に言う。これにより、未来が大きく変わる」
神妙な顔つきのまま、そこで息を吸い、ややを間を開けてから言った。
「その結果、お前は死ぬ」
――次回に続く。




