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車でラブコメを書いてみた  作者: まるたん
三回目 プリウとツイストと心強さと
13/33

【4】

 これだけでも驚きだったのだが、元々そこまで大きくもないセミダブルのベットに、三人が強引な形で寝ていたので、完全に密着してた。


「………」


 隆太は絶句する。


 もう、色々と衝撃的だ。


 なんだか感覚がない状態になっている両腕は、見事に海とプリウの枕になっている。


 つまり、自分でも知らない内に腕枕をしていたのだ。


 更に密着していた二人の四肢が、隆太の身体に感触と言う形でダイレクトに全身へとやって来る。


 ああ、女の子って……こんなに柔らかいんだなと、地味に隆太の理性を攻撃して来た。


 隆太、朝もはよから、特大のピンチだ!


 このまま行けば、隆太の理性が危険で危ない!


 特に意識するつもりがなくても、無駄にやって来る二人の感触、体温……香り。


 むにっとした感触はいたずらに蠱惑的で、身体全体が暖かくなるまでの人肌には、脳がおかしくなる。


 香りに至っては、もはや未知の領域だった。


 海の長い髪からやって来る、仄かなシャンプーの香りに、プリウの身体全体からやって来る甘い香り……もう、どうしろと言うんだ! とか、叫びたくなる。


 当然、五感を刺激された先に、股間も刺激……おっと、流石にここらは自主規制した方が良さそうだ。


 閑話休題。


 今までの人生で、これ程の精神的なピンチを体験した事はあったか? と、隆太は自分に問いかけた。


 答えは一秒もいらない。


 ないに決まってる!


 そもそも、海がここに来るまで、まともに女性と付き合った事だってない隆太だけに、その精神的ダメージは計り知れなかった。


 ど……どうする、俺?


 海の寝息すら桃色の吐息に感じて来た隆太。


 いよいよ、彼の脳ミソは末期だ!


 このまま、心の中に潜む欲望に負け、本能に忠実な選択肢を取ってしまうのか?


 まさに、隆太の理性が風前の灯火になっていた時だった。


「私はここで、どんな台詞を述べるのが正しいかで悩む」


 やたら、無機質な声が隆太の耳に転がって来た。


「……え?」


 ポカンとなる。


 気付くとそこに、銀髪の少女がいた。


 昨晩、筋肉質の男から警部と言われていたサイドテールの少女・ノースだ。


「なんでここに?」


「私にはこれがある」


 言うなり、ノースは瞳をキュピーンと輝かせ、得意気に右手を隆太に見せた。


 彼女が握っていたのは、一本の針金。


「れっつ、ぴっきんぐ」


「犯罪でしょーが!」


 あんたそれでも警官か! とかって本気で思った。


「ああ、そうか。わかった」


「今度はなんですか?」


「これが正しい台詞『ゆうべはお楽しみでしたね』だ」


「正しくないよっっっ!」


 本当になにしに来たんだと、声を大にして言ってやりたくなった。


「それより、少し助けてくれませんか? さっきから、二人とも起きなくて」


 現在の隆太はプリウと海に両方から抱き締められ、二人の抱き枕状態になっていた。


 とりあえず、振りほどこうと思ったのだが、海にしてもプリウにしてもやたら力が強くて振りほどけない。


 頑張れば海はなんとかなりそうだったのだが、プリウは根本的な能力が違うのか? 本気で力を込めてもビクともしなかった。

 

「これじゃ、まともに立つ事も出来ませんよ……」


「仕方ない。昨日の疲労が溜まっている」


「まぁ、昨日は大変でしたからねぇ」


 隆太は苦笑しながら言う。


「昨日、ベットで燃える様な激しい愛情表現があったのだろう。故に疲労が爆発的に溜まっていると分析出来る」


「その分析、間違ってるからっ!」


 なんだろう? この人ってこんなキャラなのかと、思わず内心でのみぼやいた。

 

「もう、バカな事いってないで、せめて助けて下さいよ」


「バカ? バカな事は言っていない。私は常に真剣だ」


「なおさら悪いわ!」


 てか、もう、面倒だから帰って欲しかった。

 

「助けてやっても構わない」


 言うなり、彼女は隆太へ向けて右手を差し出した。


「千円貸してくれたら助ける」


「本当にアンタは警部なのかよ!」


「私は昨晩、ここに来た。よってこの時代の通貨を持ち合わせていないのだ」


 なので貸して欲しいらしい。


「ちゃんと、後で返す」


「まぁ、そこは疑ってませんが……何に使うのです? もし、食べる物がないのであれば、そこの冷蔵庫から適当なのを食べてもいいですよ?」


「好意に感謝したい。そしてありがたく頂いた」


 見れば、さりげなく口元に食べかすが付いていた。


「もう食ってんのかいっ!」


 もう嫌だこの人って、わりと本気で思った。


「じゃあ、何に使う気なのです?」


「大した事ではない。私はただ、ジャン○が欲しいだけ」


「本当に大した使い道じゃなかった!」


「私の時代のジャン○は定価980円だったから、千円借りようとした」


「百年後のジャン○高すぎだろ!」


「今のはボケてない。それでもツッコめるあなたは、天性のツッコミ名人。この調子で私の下腹部にも突っ込みを……」


「あのぅ……いい加減、助けてくれませんかねぇ」


 話しをするのも億劫な心境になる。


「う……ん、ふぁ……ぅふ」


 その辺で海が自然と意識を覚醒させて行く。


「残念、ジャン○が買えなくなった」


 無表情なので分かりにくいが、残念そうな顔をしてた。


 他方、プリウも目を覚ます。


「……おあよ」


 本人は『おはよ』と言ったつもりだったのだろうが、実際は寝ぼけて舌足らずになってた。


「お早う、プリウさんに海。そして、ぼちぼち離れてくれないか?」


 挨拶もそこそこに、隆太が言うと、まもなく海は欠伸半分に離れる。


 そこから、ノソノソと洗面台に向かった。


 一方、プリウは離れない。


 むすぅっとした顔になる。


「海は呼び捨てなのに、なんで私だけ、プリウさんなのさ?」


 隆太はこめかみに指を当てた。


「どう見ても年上ですし……」


「だから敬語も使う、と? なんだろうな、そう言うのは嫌いなんだ。普通にタメ語で良いし、名前もプリウで良い。嫌だと言うなら、そこの交番行って、迫真の演技で『この人変態なんです!』って叫ぶぞ!」


 なんか、同じ事を海にも言われた記憶がある。


 そう言えば、プリウは海の事を妹と呼称していた。


 つまり、この二人は色々な意味で似た者姉妹なのだろう。本当に勘弁して欲しい。


「分かった、わかりましたよ、プリウさ……プリウ」


「……っ! わ、わかれば良いんだ」


 プリウは少しだけ頬を赤らめた。


 自分で言わせたのに、いざ言われると照れるみたいだ。


「ともかく、これならいいだろう? じゃあ、暑苦しいから離れてくれ」


 本当は理性が赤信号を出してたからなのだが、当然そんな事は言えなかった。


「分かったよ……ったく、そんなに邪険にしなくても良いだろう……私はあんたの事が……」


 プリウはここまで言うと。


 ぽん!


 ……と、顔から湯気が出た。


 同時に顔が瞬間沸騰して、スゴい真っ赤になる。


 どうやら、見かけの大人びた外見とは裏腹に、かなりの純情らしい。


「あ、あはは……じゃ、私は顔洗って来る」


 逃げる様に洗面台に向かった。 

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