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雪ん子



新年会の一次会の後。

千尋はとある虫を見つけた。


「あ、雪ん子だ〜。へぇ、こっちにもいるんだなぁ」


「なぁに、どうしたの桜井さん」


「あ、高田さん……。この白くてふわふわした虫、私の地元では雪ん子って呼んでるんですけど、正式名称は雪虫です。小さい頃はよく手に乗せて、願い事をして、願い事の後に雪ん子がまた飛んだら願いが叶うっていうのでよく捕まえてたんです。でも大きくなって雪ん子は人間の体温でも弱るって知ってからはやらなくなりましたけどね」


「へー、こんな虫いるのね。確かに雪みたいねー、虫だけど可愛いわ。私だったら『彼氏と結婚出来ますように!』って願うわねー」


「あはは。叶うといいですね」


「そうねぇ。さぁ、二次会のカラオケ行くわよー!」


「はーい」


その後千尋達はカラオケで歌い、終電で帰るのだった。




翌日。



「ん……ふわぁ〜あ。よく寝たなぁ。この時間だと(めい)は霊界かな? どれ、ご飯食べよ〜」


「母さん」


「わっ、ビックリした。信治、どうしたの?」


「母さん。俺、小さい頃、雪合戦で当てられて泣いてなんかないよね」


「え? うーん、晴明様からはそんな話聞いたことないけど……」


「そうだよね。渚が、俺が『小さい頃から渚の前で泣いたことないなぁ』って言ったら、渚は俺が雪合戦で泣いたって言うんだ。嘘だよね」


「うーん。信治はそのくらいでは泣かない子だったと思うけど……未来の私に聞いてみるよ」


「うん、母さん」


「良いよー。私ー!」


バンッ(未来と現在を繋ぐ扉)


「な、なんなのだ!?」


「あれ、晴明様。私はいますか?」


「千尋ならば過去に行っておるぞ。何か用か?」


「んー、晴明様でもいっか。晴明様、信治が幼い頃、渚君と雪合戦して信治が泣いた事はありますか?」


「信治が? ふむ……。無いぞ。渚が泣いた事ならあるがな」


「やっぱりそうですか。ありがとうございました」


「良い良い。千尋、渚は負けず嫌いなのだ。だからこう言うてやるが良い。『渚君、君は──』とな」


「なるほど。分かりました、晴明様! ではまた!」


「良い良い」


バタン


「母さん、父さんから言われたこと、渚に言うの?」


「うん! さっそく言うよ。渚君ー!」


バンッ(霊界と下界を繋ぐ扉)


「な、なんですか千尋さん!?」


「渚君、君は自分の名前の意味が分からないの?」


「え? 自分の名前の意味? 確か……僕の両親が渚で出会ったから渚にしたって聞いたような……」


「渚君、本当にそれだけだと思ってるの?」


「な、何が言いたいんですか」


「渚君の名前は、『寄せては返す波のように一つとして同じ時はないのだ。だから一瞬一瞬を大切に生きる人になって欲しい』って意味だよ。渚君、信治に意地はって楽しい?」


「え……僕にそんな意味が……? 信治に意地はってなんていませんよ」


「渚、俺が雪合戦で泣いたって言うのは嘘だろう?」


「う、嘘じゃない。泣いてたよ」


「じゃあみさとに視てもらうよ。良いね?」


「い、良いよ」


「じゃあ呼ぶよ。……今来るよ」


「渚君、本当に良いの?」


「ぼ、僕は嘘なんてついてない!」


「信治君、来たよー。渚君の事を視て欲しいんだって?」


「うん、そうなんだ。渚、俺は雪合戦で泣いたんだね?」


「そ、そうだよ」


ジーッ


「……? 嘘はついてないみたいだけど、なんかおかしいや。ちょっと待って、今新・記憶の神を呼ぶから」


「え? 嘘はついてない? 可笑しいなぁ。信治は泣いた記憶は無いんだよね?」


「ああ。無いよ」


「なんか用かぃ、みさとぉ」


「あ、新・記憶の神。ちょっとそこの男の子の記憶が改ざんされてないか視て欲しいんだけど」


「なんだぃ、めんどーだねぇ。おい、坊や。こっちに頭よこしなぃ」


「は、はい……」


新・記憶の神は渚のデコに自分のデコを勢いよくぶつける。


ゴツンッ


「い゛っ……たぁ〜!」


渚はデコの痛みに涙目になる。


「なんでぃ、前のアホな記憶の神がちょいといじってらぁ。元に戻すぜぃ」


再び新・記憶の神は渚のデコに自分のデコを勢いよくぶつける。


ゴツンッ


「いっだぁぁい!」


「これでぃ、治ったはずさぁ。おい坊や、思い出してみなぃ」


「え? あ、はい。えーと……。ん!? 雪合戦で泣いたのは僕!? なんで、どうして!?」


「前のアホな記憶の神がばら撒いたタネさね。おらぁそのタネが芽吹かねぇうちに潰してきちまう。さらばさ〜」


そうして新・記憶の神は千尋達の元を去った。


「……みさと、どう言う事?」


「千尋ちゃん……恐らく、前の記憶の神は色んな人の記憶をちょっといじって、周りの人と諍いを起こすように仕向けたんじゃないかな。前の記憶の神って千香に騙されるような頭の弱い人だったから」


「そうなんだ……新しい記憶の神様になって良かった! 渚君、記憶が戻って良かったね!」


「は、はい、千尋さん。信治……ごめんね」


「良いよ。渚が悪い訳じゃ無かったし。俺こそ、ごめんな」


「良いよ。あーあ、早く信治の補佐になれないかなぁ」


「どのくらいかかるかは分からないけど、必ず日本の最高神に戻るから待ってて」


「うん。待ってる」


「千尋ちゃん、僕も旧・記憶の神がいじった人について情報を集めないといけないから、帰るね」


「うん、ありがとうみさと。お礼に……固定保存! 固定保存結界、三日保存! はい、サーモンとクリームチーズのパンだよ。食べて」


「ありがとう、千尋ちゃん! じゃあまたね」


「またねー」


こうして思わぬ形で旧・記憶の神の悪行が発覚するのだった。




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