しりとり
「明、しりとりしましょう!」
「良い。では千尋から始めるのだ」
「はい! しりとり、りす」
「好き」
「キス」
「なんだ、千尋は接吻がしたかったのか? 良い。んー……」
「め、明! 違いますよ!」
「違うのか? 我はしたいが」
「よ、良いです」
そうして晴明と千尋はキスをする。
「明……しりとりの続きです。す、ですよ」
「良い。寿司」
「し、鹿」
「かわゆい」
「犬」
「ぬ……。ぬいぐるみ」
「水」
「ず? ず……。ずっと側にいて欲しい」
「ぶっ、明、それはもはやしりとりじゃありませんよ!」
「良いではないか。そうだ、千尋。愛の言葉をしりとりで言い合おうではないか」
「え? しりとりで? うーん、まぁ良いですよ。じゃあしりとり。リスペクトしてます!」
「りすぺくととはなんなのだ?」
「尊敬してるって意味です」
「良い。す、好きだ」
「だ、大好きです」
「好いておる」
「る、る〜? るは無いですよー」
「ふむ。良い。ではあ、だ」
「あ? あ、愛しています」
「好きだ」
「だ、抱きしめたいです」
「良い。ぎゅーなのだ」
晴明は千尋を抱きしめる。
「明……ぎゅーっ」
千尋も晴明を抱きしめ返す。
「良い良い。では続きなのだ。好きで好きでたまらぬ」
「ぬ? ぬー、ぬ? ぬも無いですよー」
「良い。ではち、なのだ」
「ち? ちー……ちゅー、して下さい」
「良い」
晴明は千尋に触れるだけの接吻をする。
「良い。では続きなのだ」
「まだするんですか?」
「うむ。次は我だな。生きているのがとても楽しい。千尋のおかげだ」
「だ、大好きです!」
「好きなのだ」
「大好きです」
こうして無限ループは続く。
しばらくしてあっきーがやって来た。
「何してるんだ? 千尋」
「あ、あっきー。愛の言葉をしりとりで言い合ってるの」
「へぇ、そうなのか。晴明様、満足しましたか?」
「うむ、良い良い」
「じゃあ俺の用事を済ませますね。千尋、お前に愛座右衛門が会いたがってる」
「え、そうなの? じゃああっきー、連れて来てくれない?」
「ああ、良いぞ。ちょっと待ってろ」
──数秒後──
「にゃあおぉー」
「いらっしゃい、愛座右衛門。私に会いたかったの? 可愛いーね」
「にゃあおぉー」
「え? 俺は野良として生きていく? 今まで世話になったな、って……どういう事愛座右衛門! 何があったの!?」
「にゃあおぉー」
「晴明様が全然構ってくれないから? 晴明様、そうなのですか?」
「いや……我は愛座右衛門に怖がられておったから、無理に近づかない方が良いと思ったのだ。だから選に世話などを任せておったが……愛座右衛門、寂しかったのか?」
「にゃあおぉー」
「寂しいんじゃない、悲しいんだ、か。良い。愛座右衛門……」
晴明は愛座右衛門を抱っこする。
「すまなかった、すまなかったなぁ愛座右衛門。我、これからはもっと構うからな。沢山遊ぼうではないか。ほれ、鼻ちゅーなのだ。ちゅー……」
ガブッ
「いっ! 良い良い。噛むが良い」
ガブガブ
「愛座右衛門、もう出ていくなんて言わない?」
「にゃあおぉー」
「そう、良かった。晴明様、今度からウチに来る時は愛座右衛門も連れてくるか、来る前に沢山愛座右衛門を構ってから来てください」
「良い。分かったのだ。愛座右衛門……愛しておるぞ」
「にゃあおぉー」
(愛座右衛門×晴明様も良いな……ツンデレ攻めか……愛座右衛門いつ人体化するのかな……)
「ふふ……ふふふふ腐」
「どうしたんだ? 千尋」
「あ、あっきー……。愛座右衛門いつ人体化するのかなって」
「さぁなぁ、それは知らねーけど……。いつだって良いだろ」
「そうだね! あっきー、愛座右衛門が人体化しそうになったらビデオ撮ってね!」
「ビデオ撮ったら愛座右衛門の大事な所が映っちまうだろ」
「あ、それもそうだね! でも見たいな〜、あっきー、モザイク処理とか出来ないの?」
「ああ、まぁ出来るけど」
「じゃあお願いだよ〜、愛座右衛門の人体化は赤ちゃんが寝返り打つくらい貴重な瞬間なんだから! あっきーなら見ても大丈夫でしょ、愛座右衛門の大事な所!」
「まぁな。分かった。じゃあ愛座右衛門が人体化しそうになったら撮るな」
「うん! ありがとうあっきー!」
「いいよ」
こうしてあっきーは千尋と約束するのだった。
「にゃあのぉ!」
「あ、にゃんじろう! いらっしゃい! どうしたの?」
「にゃあのぉ、にゃあのぉ」
「愛座右衛門が心配で来た? そう、ありがとう。大丈夫だよ、愛座右衛門は野良にならなかったから」
「にゃあのぉ」
「え? 愛座右衛門を連れていく? 何処に?」
「にゃあのぉ」
「え? 猫界? なんで?」
「にゃあのぉ」
「嫁探し? にゃんじろう、愛座右衛門は人体化出来るであろう猫だよ? お嫁さんは人体化出来る猫か、人間の方が良いんじゃない?」
「にゃあのぉ」
「霊界より猫界の方がメスが多い? 愛座右衛門は女の子が好きなの?」
「にゃあのぉ……」
「それは分からない? そっかぁ、愛座右衛門に好きな人が出来れば分かるけどね。今は無理して嫁探ししなくて良いんじゃない?」
「にゃあのぉ、にゃあのぉ」
「愛座右衛門に聞いてみる? そうだね、聞いてみて」
「にゃあのぉ。にゃあのぉ〜」
「にゃあおぉー」
「にゃあのぉ」
「にゃあおぉー」
「にゃあのぉ」
「にゃあおぉー」
「にゃあのぉ?」
「にゃあおぉー」
「にゃあのぉ……」
にゃんじろうは千尋の元へと戻る。
「どうだった、にゃんじろう?」
「にゃあのぉ」
「え? 愛座右衛門は晴明様を好き? えー!?」
千尋は慌てて晴明と愛座右衛門へ話しかける。
「晴明様、愛座右衛門は晴明様を好きなようなのです! どうすれば良いのでしょう!」
「落ち着くのだ、千尋。愛座右衛門は親愛の意味で我を好きなのであろう」
「にゃあおぉー」
「違う、愛してるって言ってるじゃないですかー! あああ、まさか妄想が現実になるなんて! どうすれば……どうすればぁ〜!」
「千尋、千尋。落ち着くのだ。愛座右衛門は猫なのだ。何も問題無いであろう?」
「猫は猫でも人体化するかもしれない猫ですよ! 晴明様はネコになりたいんですか!?」
「猫? 我は猫になどならぬ」
「愛座右衛門は絶対タチですもん、晴明様はネコなんですよー!」
「タチ? なんのことなのだ?」
「あああどうしよう、いつも妄想してるからバチが当たったんだ〜! 晴明様が〜!」
「千尋、千尋。我はなんともないぞ? 愛座右衛門は千尋も愛しておると思うぞ?」
「にゃあおぉー」
「え? 私も愛してる? ……愛座右衛門、それは恋愛の愛なの?」
「にゃあ?」
「恋愛、えーと、キスしたいとかいつも一緒に居たいとか、そういう感情! なの?」
「にゃあおぉー」
「晴明様は鼻を噛みたい? 私は膝に乗りたい? うーん、それは家族愛かな?」
「そうであろう。千尋、案ずることはない。愛座右衛門はまだ恋愛というものが分かっていないのだ。だから我らに感じている感情は家族愛なのだ。良いか? 千尋」
「そうなのですか。でも私達に家族愛を抱いてくれていて良かったです。愛座右衛門、疑ってごめんね」
「にゃあおぉー」
「別にいい、か。ふふ、愛座右衛門〜」
「良かったな、千尋」
「あ、あっきー。存在を忘れてたよ、ごめんね。ありがとう」
「ああ。じゃあ愛座右衛門連れて帰るから」
「いつも預かってくれてありがとう。宜しくね」
「ああ。じゃあな。行くぞ愛座右衛門」
「にゃあおぉー」
こうしてあっきーと愛座右衛門は霊界へと帰るのだった。
「して、千尋。タチとはなんなのだ?」
「え? あ、えーと、タチは……太刀魚の様に真っ直ぐな人って意味で……」
「ふむ。なるほどなぁ。では我は猫のようにツンデレなのか」
「はい、まぁ……そうですね……」
「我、もっと千尋に甘えるのだ。良いか?」
「それは是非!」
「良い良い」
こうして千尋はなんとか晴明をごまかすのだった。




