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紅葉狩り





──霊界にて──


ピンポーン


「はーい、あ、母さん」


「信治ー、紅葉(こうよう)を見にいこうよう!」


「え? 駄洒落? 母さん」


「うん! でも紅葉を見に行きたいのは本当だよ! 下界の私が『信治達と紅葉狩りに行きたい! けど下界の私じゃ良い所に行けないから未来の私、代わりに行って来て!』って言うから、私が代わりに来たの。ねぇねぇ行こうよう!」


「そうなんだ、良いよ母さん。じゃあ愛香と選も呼ばないとね。父さんには言ってあるの?」


「うん、言ってあるよ。お仕事の確認が終わり次第来るって。信治、他に呼びたい人いる? 杜姫美ちゃんとか」


「うーん、そうだなぁ。俺は久々に家族水入らずでいたいかな」


「そっか、じゃあ家族水入らずでいこう! じゃあ信治は愛香達を呼んでおいて。私はお弁当を作るから」


「良いよ母さん。じゃあ入って」


「うん!」


二時間後。


「よーし、しゅっぱーつ!」


「にゃあのぉー!」


「って、なんでいるのにゃんじろう」


「にゃあのぉ、にゃあのぉ」


「え? 俺は信治の用心棒だ、居て当然だって? うーん、まぁにゃんじろうが居てくれるのは心強いけど……。まぁいいや、よろしくね、にゃんじろう」


「にゃあのぉ」


「母さん、行く場所は決まってるの?」


「うん、決まってるよ。未来で料理の先生に連れてって貰った所なんだけど……。じゃあ皆、手を繋いでねー」


『はーい』


安倍一家は円を描くように手を繋ぎ、にゃんじろうは信治の肩に乗る。


「行っくよー、せーの!」


そう言うと千尋達は紅葉狩りの場所へと瞬間移動した。


「うわぁー、凄く綺麗だね、母さん」


「そうだね信治! じゃあしばらく眺めながら歩こう!」


「母様、私皆で写真撮りたいわ」


「あ、良いね愛香! 晴明様、カメラ持って来てますか?」


「うむ、持って来ておるのだ。どれ……。む? 誰に撮ってもらうのだ?」


「あ、確かに。うーん、三脚は持って来てないんだよなー。どうしましょう? 誰か呼びますか?」


「にゃあのぉー」


「あ、にゃんじろうが撮ってくれる? じゃあ皆で交代しながら撮ろうか!」


「にゃあのぉ」


「じゃあ人体化してね、にゃんじろう」


にゃんじろうは人体化して藤次郎になり、晴明からカメラを受け取る。


「じゃあ撮るぞー。はい、にゃあのぉ!」


カシャッ


「に、にゃあのぉと言うのが定番のかけ声なのか?」


「いえ、藤次郎様独自のかけ声かと……」


「ありがとう藤次郎、今度は俺が撮るよ」


「ああ」


「信治にぃ、後で僕一人でも撮って欲しい。未来ちゃんに見せるから」


「分かったよ、選。じゃあ撮るよー、はい、チーズ!」


カシャッ


「うん、よく撮れたよ。じゃあ次は愛香お願いね」


「分かったわ」


そうして順番に撮った後、一行はゆっくりと歩き出した。


「千尋、とても雅な風景なのだ。青空と赤や緑の色彩がとても綺麗だなぁ」


「そうですね晴明様。きっと晴明様が実体時代に過ごされていた京都はここと同じくらい綺麗な風景なのでしょうね」


「うむ、日本の最高神となってから何度か足を運んだ事があるが、秋は特にとても綺麗だぞ。下界の千尋にも是非見せたいものなのだ」


「下界の私は今はまだ京都に行った事ないからなー、私は未来で晴明様に何度も連れて行ってもらってるけど。下界の紅葉も見たいですね、晴明様!」


「うむ、今度行こうなぁ。おっ。千尋、我この紅葉を取っておきたいなぁ」


そう言うと晴明は一枚の紅葉を拾う。


「晴明様、では押し葉にしましょうか」


「押し葉? とはなんなのだ?」


「普通は花を長期間残しておける方法なのですが、葉っぱでも出来るのですよ。葉っぱの水分を飛ばして乾燥させて、しおりなんかに出来るのです」


「良い。ではその押し葉とやらにするのだ。これは持って帰ろう」


「ええ!」


そうこうしながら進んで行くと、ぽっかりと開けた場所に出た。


「皆、ここでお弁当食べよー!」


「うん〜」


「良いわ」


「良いよ母さん」


「良い良い」


「さて、敷物を敷いてっと……。よいしょっ」


千尋は小さくして袖に入れて置いた重箱を取り出す。そして大きくして並べると、蓋を開けていく。


「わぁ、栗ご飯に秋刀魚に唐揚げに……。とっても美味しそうよ、母様!」


「うふふ、秋は食欲の秋! 美味しいものが沢山だからねー。ほら、食べよう! いただきまーす」


『いただきまーす』


「もぐもぐ……。千尋、とっても美味しいのだぞ。ありがとうなぁ」


「いえいえ! 皆の為ならこのくらいお茶の子さいさいですよ!」


「千尋……。これははらこ飯じゃねぇか。俺これ好きなんだよ、ありがとな」


「あ、藤次郎様。藤次郎様が来ると分かってたらずんだ餅も用意したんですけど……。今日は練り切りで我慢して下さいね」


「十分だ」


「パクッ。ん〜、おいふぃよぉ、おいふぃよぉ」


「え? 誰?」


「ん? ……もぐもぐ……おいふぃよぉ」


シュットンッ! ドサッ


突然現れて千尋の作ったお弁当を食べる人物に藤次郎が手刀を放ち、昏倒させる。


「おい、千尋。こいつは連れじゃないんだよな?」


「うん、そうだよ。害はなさそうだけど……このおいふぃよぉさん……」


「害はあんまないかもしれないが、人のもん勝手に食うのは窃盗罪だ。こいつは閻魔界に連れていく。おい、信治、俺は少し離れるが襲われねぇように気をつけろよ」


「父さんもいるし、大丈夫だよ藤次郎。いってらっしゃい」


「ああ」


そうして藤次郎はおいふぃよぉさんを連れて閻魔界へと瞬間移動した。


「母様、この秋刀魚骨が無いのよ。どうして?」


「それは、骨無しの秋刀魚! ってイメージして造った秋刀魚だからだよ」


「そうなの。骨が無くてとっても食べやすいわ」


「うんうん、お魚は骨が邪魔だからね〜。まぁカリカリに焼いて食べても美味しいんだけど。あ、愛香、良い匂い袋屋さんない?」


「匂い袋屋さん? いつも私の匂い袋を作ってくれる処が良いと思うけれど、どうして?」


「私が料理習ってる先生にプレゼントしたいんだ。今度そこに連れてってくれない?」


「良いけれど、母様の匂い袋を作ってるお店じゃ駄目なの?」


「私の買ってる所は自然界にある匂いしか作らないんだよー。ほら、私の匂い袋は金木犀(きんもくせい)の匂いじゃない? 愛香は調合して匂いを作ってるじゃない。だから、愛香の買ってるお店で買いたいんだ」


「そうなの。良いわ、じゃあ今度案内するわね」


「ありがとう愛香!」


「母さん、僕新しい匂い袋が欲しいよ〜」


「あら、そうなの選? じゃあ一緒に行こうか!」


「うん〜」


「我も、我も一緒に行くのだぞ。良いか? 千尋、良いか?」


「良いですよー、晴明様。一緒に行きましょうね〜」


「良い良い」


「信治ー、信治も一緒に……って、信治!?」


「か、母さん……。父さん、助け……て……」


千尋が信治を見ると、男に草陰に引きずり込まれそうになっている姿があった。


「信治! 我、安倍晴明が命ずる。(よこしま)なる者を吹き飛ばせ! 急急如律令!」


晴明が呪文を唱えると、信治を引きずり込もうとしていた男に突風が吹き付け男を吹き飛ばす。男は数メートル後ろに生えていた木にぶつかり気絶した。


「と、父さんありがとう……」


「良いのだ信治、何もされておらぬか?」


「なんとかね……。俺も体術とか習った方が良いかな」


「信治は建築家になるという夢があるであろう? にゃんじろうがついておれば問題ないのではないか。それとも十二神将をつけるか?」


「いや、十二神将達は父さんに仕える方達でしょう? 俺はにゃんじろうで十分だよ」


「そうか……」


「信治にぃ、これあげるよ」


「ん? これって……霊符? なになに……『痺れさせる霊符』? これ、造ったの? 選」


「うん。僕も女の子と間違われてしつこく誘われる事が多いから、常にその霊符を持ってるんだ。沢山造ってあるから、あげるよ」


「ありがとう、選! 助かるよ」


「信治ー、戻ったぞ。何事もなかったか?」


「あ、藤次郎。いや……襲われかけたけど、父さんに助けてもらったよ」


「なんだと? 襲った奴は?」


「あそこで気絶してる」


「そうか。また俺が居ない間に襲われても面倒だ。サクトを呼ぶか」


「えっ、サクトを?」


「なんだ、呼んじゃマズイのか? 愛香」


「い、いえ……呼んでも良いわよ」


「そうか。……すぐ来るらしい。じゃあ俺ははらこ飯を食うぞ」


「あっうん。どうぞ〜」


こうしてハプニングはありつつも紅葉狩りは和やかに進んで終わった。






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